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人生初のゲイバーに行った話。

先日、デザイナーの先輩と飲みに行ってきた。
先輩は学生時代にお互いが組んでいたバンドを通じて知り合った人で、独特の雰囲気を持った楽しい女性だ。

お腹も膨れてお酒もちょうど良くまわってきた頃、飲みのお誘いLINEをした日の先輩の言葉を思い出す。

先輩「最近ゲイバーにハマってるから時間あったら行こう。」

当初、なんと魅力的なお誘いだと快諾したものの、いざ今から行くとなると不安も湧いてきた。
まず女性が行って良い場所なのか、マナーやルールは存在するのか等。
それらに関してはお店によるとのことで、先輩が連れて行ってくれるお店は問題ないようだった。グラスに半分残っていたジントニックを流し込んで伝える。

いわ「行きましょう…そろそろ…ゲイバーへ。」

先輩が事前にママに連絡をしてくれており、席は空いているからおいでと。
歓楽街の細い路地を歩いてそのバーが入っている雑居ビルにたどり着く。

緊張しながら先輩の後ろをついて行く形で店に入った。

犬がいた。

正確には犬を抱えたお姉様がカウンターに座っていた。めちゃくちゃ吠えられた。ドアが開いたことにビックリしたのか機嫌が悪かったのかしらんけど死ぬ程吠えられた。

入店時にブスと言われることは挨拶だと、そんな事を脳内で繰り返しながら身構えて入った先で予想外な事が起こり緊張は解けた。
「あらごめんなさいねぇ〜!!」
犬を抱えたお姉様はホホホと笑い、それにつられて私達もウフフと笑った。どういう状況。

「いらっしゃ〜〜い、また来たわねアンタ〜」

カウンターの奥のキャップを被った方が先輩に話しかける。この人がママだった。
ママは非常に明るくて口が悪くて想像通りのゲイバーのママといった感じ。非常に好印象だった。
自己紹介を済ませて雑談をする。

店内には3つのモニターが設置されており、それぞれ同じMVが流れている。ママが好きなアーティストなのかと尋ねると別に適当らしい。
そこからママがハロプロオタクという話になった。

推しはいるのかと尋ねると、満面の笑みで

「この中にねぇ!すっっごいブスがいんのよ!」

と答えるママ。ハロプロにブスがいる訳はないのだが、話を聞いてみる。

「この子なんだけど!!!」

バーカン奥の見やすい壁に貼ってあった写真らしきものを剥がし、パァンッと私たちの前に叩きつける。ショートカットでクールビューティな女性の写真だ。写真というかグッズ。何でこれ持ってるんだよ。実は好きだろ。

「なんとこのブスがセンターになったMVがあんのよ!!!!!」

ママはいそいそと店内のモニターにハロプロの映像を流しだす。

「ほらここ!!!この女よ!!!」

他のメンバーの影に隠れながら、ほとんど後ろの方で踊るその子をしきりに指差しながら叫ぶママ。
好きじゃん。
全然センターじゃなくない?と疑問を投げかける私たちにキレるママ。

「まだ今じゃないのよ!!黙ってなさいよ!!」

曲の中で色んなメンバーが代わる代わるセンターになってゆき、終盤が近づくにつれてママのでかい声がさらにでかくなる。

「ほら!!今から!!これ!!!見なさい!!」

ママがしきりにブスだと言っていたそのメンバーがセンターのポジションに着き、華やかに踊りだした。

「きゃぁぁぁぁあああ!!!」

ママの興奮ボルテージもMAXだ。
なぜか私もその頃にはめちゃくちゃテンションが上がっていた。
MVが終了し、息を切らしながらママが言った

「あたしここ初めて見た時、泣いたわ。」

いやめちゃくちゃ推しじゃん。


人生初のゲイバーでハロプロにほんの少しだけ詳しくなった。

いわもんでした。

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