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Cosme ~ニューヨークのオシャレメキシカンレストラン

 日本ではあまりメキシコ料理はそこまで日本のダイニングに浸透していないように思う。しかし、アメリカではピザと同じくらいメキシカンが浸透している。これはニューヨークに限らず、旅行で巡った地方都市(田舎町)でも同様の現象だ。(外食店が数軒しかないような街にある、地元民の通う店のメニューはたいがい、チキンウイング、タコス、サンドイッチ、バーガーだ。)トルティーヤチップスにアボカドペースト(ワカモレ)をディップして食べたり、トルティーヤに具材を載せたかぶりついて食べるタコスもファストフード的で、アメリカ人の軽い食事の感覚に合っているのだろう。…ただ、私は逆に、そのファストな感じと名前が覚えられないのとで、あまりメキシカンレストランを好んで選んでいく傾向はなかった。…しかし、Cosmeというレストランは私の価値観を変えてくれた。

 Cosmeを知ったきっかけは、日本のドラマ「グランメゾン東京」の中で出てきた ”世界のトップレストラン50” というフレーズだ。今までそのようなランキングがあることを知らなかったが、きっと実在するランキングなのだろうと思って探してみたらやはり「世界の ”ベスト” レストラン50」という名で実在し、ニューヨークにあるレストランというスクリーニングをしながら情報を追っていて、Cosme を見つけた。

 とりあえず、夜に行くと恐ろしい金額になるかもしれないと思い(ウェブ上のメニューに金額が載っていないのだ。。笑)ブランチの設定のある土日を選んで、昼間に行くことにした。予約の時点でクレジットカード情報を提供した。前日の21時以降にキャンセルすると1人36ドルチャージされる。…風邪をひいてしまわないか、ドキドキ。。
 無事に元気に当日を迎え、レストランに入った。まず感じたのは店員の感じの良さだ。(今までさほど頻繁に高級店に行った訳でもないが)いいお店は威圧感があったり、ホスピタリティは一般の店と変わりなかったり、という経験ばかりだったが、Cosme の店員はフレンドリーと礼儀も正しさを旨としていた。(わざわざ言及したくなるくらい、ニューヨークのレストランのサービスは最悪なのだ。。)料理は1品ずつ出してくれて、お皿を下げるたびにテーブルを拭いてくれたし、使っていないカトラリーも一度下げて出し直してくれた。そして、トイレに立った時も、スタンバイしつつ周囲を見まわしている店員さんは道を開けてくれるし、別のお客さんにサーブしていて通路が塞がっていても、私の動きに気づいて「Sorry」とすぐによけてくれた。(繰り返すが、ニューヨークのレストラン店員たちは、自分の仕事に目いっぱいで荒っぽく、周りを見る余裕、気づこうという意識もない。)
 そして肝心なお料理。ファストなメキシカンのイメージを覆す、目も楽しませてくれる、繊細な一皿一皿だった。どれも素晴らしかったので、皆さんのご想像を膨らませるべく、以下、ご紹介させていただく。

↑ メニューを見てもさっぱりわからないので、夫がお店の料理の写真を見せてオーダーした1品。Chilaquiles Divorciados というメニュー名。(自宅でレシートに乗っていた名前と照合しながら調べたら、「チラキレス」はトルティーヤチップスにソースをたっぷりかけて、そのチップスが柔らかくなるまで煮立て、鶏や目玉焼きを載せて頂く朝食メニューだそうだ。)緑色のソースは想像と違って辛くなく(後から口の中が熱くなるほんのりした辛さ)、茶色のソースはBBQソースのような感じだった。鶏ささ身はどうやって茹でたの?というくらい柔らかかった。フォークの勢いが止まらない美味しさだった。(お値段は26ドル)

↑ 2品目は私でも知っているセビーチェ(メニュー名は Ceviche a la Mexicana tostada)。釣り好きの夫が「ハマチだ」と言っていたが、白身魚とトマトがとても細かい「さいの目」に切ってあり(私には無理なレベル。横に並んだライムの大きさと比較して頂くと分かりやすい)、アボカドソースと、紫色のカリっとしたコーントルティーヤと合わせて頂く一品。洗練されていた。(23ドル)

↑最初、店員さんが「前菜の軽めのもの1品、重めのお皿1品で2人なら十分だと思う」と案内してくれたので、その方式に沿って注文し、実際に一皿目のトルティーヤチップスがお腹で膨らんできた感じはしたが、ちょっぴりだけ「もう少し食べてみたい」という興味が勝り、追加した一品。Duck enmoladas というメニュー。(エンモラーダは「モレ」という茶色のソースにトルティーヤを合わせた料理だそう。トルティーヤの中に鶏肉や豚肉を入れて巻く。)知識なしでオーダーしたので、一見しても、お料理はソースまみれで全く状況がつかめなかった。ダックがトルティーヤに巻かれ、3本のロールになって並べられ、その上にソースがかかったものだった。ちょっと様相は違うが北京ダックに似ている。「モレ」ソースは甜面醤ほどではないが甘みがあり、カレールーのようなスパイス感もあった。柔らかいダックはコーンビーフみたいな繊維状にされており、美味しい上にナイフでカットしやすく、こちらもファストフードから昇華されていた↓(30ドル)

↑ 最後にデザート。私は香木「パロサント」の香りが大好きなのだが、メニューの中に、「キュウリとパロサントのシャーベット」というのを見つけ、興味を持ってオーダーしてみたもの。パロサントは煮出してシロップにして加えているのだそう。パロサントの木は食用でもなく、また、酒屋等でシロップが入手できるのでもなく、レストラン自家製なのだとか。キュウリの爽やかさに、ほんのり「何かの香り」が含まれている位な、パロサント感はあまり強くない感じではあったが、重層的な趣を加えてくれていた。ちょっとだけ振りかけられたチリパウダーがその部分だけピリリと利いていて、味の変化も楽しめた。(8ドル)

 帰宅して、メキシコ料理を調べながら記事を書いているのだが、どれもメキシコ料理の定番のようだ。…私がもっとメキシコ料理に関心を持って触れていたらそれ以前に出会えた料理たちだっただろう。でも、Cosme の洗練された形で出会えたことがとても感動的で、嬉しかった。私が思い描いていた「ザ・ニューヨーク」なお店(=ローカルな料理をひとひねりされた、モダンレストラン)に出会えた。
 Cosme は絶対おすすめです!!!…お店の雰囲気と味、そして最高のサービスをしていただいたのに、金額はニューヨークの他のメキシカンレストランと大差ないという感じがしています。(最近のレストランの高騰を考えたら、バカ高くはないという感じ。)せっかくお金を使うなら「良かった♡」と思える使い方をしたいですしね。そういう点でも激推しです☆☆

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