【🇦🇱🇷🇺クウェート大学留学#6】楽しみは...

2023年9月24日 04:28

自己紹介
クウェート大学に留学中。
好きな映画は「ブルース・ブラザーズ」。

ルームメイトが加筆と校正、ネタ集めを助けてくれた。どこがルームメイトが書いた部分か、当てられるだろうか？

9月21日　夜10時

私がジョージア人の2人と買い物をしている間、リーダーとルームメイトはフランスのティトアンとご飯を食べていたらしい。

リーダーは日本人学生の中でもっとも、アラビア語が上手い。
ルームメイトは日本人学生の中でもっとも、ミスチル桜井の声真似が上手い。
ティトアンはフランス人学生の中でもっとも、着こなしが上手い。

彼はよく花柄のTシャツを着ている。そして、文化人類学について教えてくれた大学院生でもある。また私が敬愛するジャンケレヴィッチと同じ学校の出身だ。さらに和食「オヤコ」をよく作って食べるらしい。親子丼のことだろうか。

こういう謎の情報を蓄積するのは、娯楽があまり無いクウェートでの楽しみの一つだ

三人でどんな話をしたのだろう。

いや、実のところティトアンについては今回はどうでも良い。(失礼な言い方だ！)

3人は(35℃は少なくともある)屋外で食べていたのだが、風でルームメイトのご飯は吹き飛ばされてしまったらしい。2日後に同じメニューが出た。彼のためだろうか。

吹き飛ばされたディナーを見て、ルームメイトはご飯を炊くことを決意したと云う。

私が部屋に戻ってくると、今から必ず米を炊く、と伝えてくれた。

私たちの寮にはキッチンがある。
蛇口が二つ、Ihコンロが2口、製氷器、ライスクッカー、包丁等々、設備はなかなかである。

ただ、問題は山積みだ。(ティトアン風に言うなら、「少しだけ、問題が山積みだ。」)
蛇口の水はお湯を出そうとすると黄色い液体が出てくる。Ihコンロには対応する鍋がない。製氷器は押しても反応がない。ライスクッカーには蓋がない。包丁は野晒しに置かれていてノコギリのようだ。

最大の問題はスルスールが出ることだ。

スルスールとは、ゴキブリのことだ。スルスル走る様を表しているようで愛らしい（？）

あまりにも出過ぎるので、私は初日からこの単語を覚えることになった。

日本語のできるムハンマドは彼らをよく「シネェッ！」と言って殺す。アニメでよく耳にする語彙のようだ。

アナス曰く、もともと綺麗にしていたが、3ヶ月の夏休みの間留守にしていたため、繁殖してしまったという。
別の機会では、昨年住んでいたフィリピンの学生が散らかした為だと言っていた。

なにが本当なのだろうか。

よくパン屑を落としながら朝食を食べるアナスを見ながら考える。

生ゴミ、紙、缶等々がごちゃ混ぜに捨てられたゴミ箱。各階に2個設置されていて、ゴキブリが喜んで食べている。彼ら彼女らへの挨拶は、毎朝の日課だ。クウェートは国民への福利厚生が充実した国だが、それはゴキブリに対しても同様のようだ。

ルームメイトが米を炊き、その間私がゴキブリを殺害する布陣を取ることになった。

ルームメイトはゴキブリとの共存の道を主張するが、私は生来のタカ派なので許容できない。

とは言え、ゴキブリを殺すたびに少し心が痛む。
さすがに、ゴキブリ退治は楽しみの一つとは言えない。

クウェートのゴキブリは小ぶりだ。見た中で一番大きいものでも、日本のカメムシサイズほど。(ルームメイト曰く、寮で出る体に悪いご飯の残飯を食べているからだ！)

もっとも、飛翔能力はあまりない。いちど頭の上に飛び乗ってきたことがあるが、ハム太郎みたいで可愛らしかった。

生き物を観察するするのは、意外と楽しい。

私が掃討作戦をしている間、ルームメイトは米を炊き続けた。

炊飯器など当然無いし、ライスクッカーは使用できない。もっと言えば、水や米を計量することもできない。

そんな中、彼は果敢にも米を炊き始めた。幸いにもルームメイトは、手で持つと食べ物の重さがなんとなく分かるらしい。(もしかしたら彼は「別班」かもしれない。)

私は作戦中に頭を壁にぶつけてしまい、不貞腐れて部屋に帰った。申し訳ない。

その間私は孤軍奮闘しながら米を彼らから守りつづけた（ルームメイトの私が、カール・レーフラーのスマホを借りて加筆している）

彼が語る米炊きの秘訣は以下の通り。来年度以降の留学生は参考にしてほしい。

・ゴキブリを鍋に侵入させない。（調理を始めたらあまり出てこないので、そこは安心してほしい。油断は禁物だが。）
・米と水の量を感覚的に理解すること。目安としては、鍋の大きさにもよるが、どちらも人差し指の第一関節くらいまで。
・米をしばらく水に浸す。できればで良い。少しでも硬い米にならないようにするためのコツだ。
・中火で一度沸騰させ、そこから2分。その後、弱火で5分。超弱火でおよそ10分。17分〜19分が目安だ。
・あまり好ましくは無いが、定期的に蓋を開けて食べながら硬さを確認すると大きな失敗は防げる。

久しぶりに白米を食べた。

こちらでもお米はたくさん出てくるが、大概はサフランライスだ。鮭フレークに醤油かけていただく。

「海鮮丼のようで美味しい！」

日記用の誇張ではなく、本当にそう思ったのだ。

芳醇な鮭の味わいが、ジャポニカ米(ジャスミンアロマ付き、そんなことはしないでくれて良いのだが)の旨みを引き立てる。

私にとって鮭フレークとは、「お弁当に乗っているハズレ枠」でしかなかった。しかし今この瞬間は、紛れもなく豊穣の海の恵みそのものだったのだ。

鮭フレークという概念が成立して以来、最も有り難がられた瞬間だったのではないだろうか？

アサヒドライゼロ。1KD、つまり470円ほど。ムバラキーヤスーク近くのマーケットで買った。あんまり美味しく無い。

今日は華の木曜日。
イスラーム圏では金土が休日だ。

京都木屋町に繰り出さずとも、楽しく美味しく「華金」、もとい「華木」を過ごすことは出来るのだ。
友達たちとご飯を美味しく食べることも、クウェートでの楽しみの一つだ。

9月22日

午前中は、日本の大学関係のイベントにオンライン出席。大学のみんなが留学を応援してくれた。

日本の友人や先生方、大学の事務の皆様には、感謝しかない。

午後はアベニューモールに行くことにした。
湾岸諸国で最も大きいモールである。

ムハンマドも一緒に来てくれるとのことだ。

寮に来た初日、私はお土産を配り歩いた。返礼としてムハンマドがくれたロシアのおみやげ。

カリームというアプリでタクシーを呼ぶ。

クウェートは交通手段が貧弱で、車以外に移動する術はない。40℃以上の砂漠では、歩くことはできない。
タクシーは贅沢でもなんでもなく、日常のありふれた一コマだ。

広すぎて、モールの中を歩くだけで時間がほとんど過ぎ去ってしまった。

基本的に高級な店舗が多い。

ただ、庶民向けのスーパーもある。
スーパーには、家電や服、食べ物など、あらゆるものがそろっていた。
ショッピングは重要な楽しみである。

ニューバランス風インチキサンダル。日本語を勉強しているムハンマドには「インチキ」という言葉を教えてあげた。

モールには色々な区画があり、区画ごとに色々な趣向のデザインが施されている。

まるで、テーマパークみたいだ。見ているだけで、とても楽しい。

ショッピングを終えて帰る。

タクシーの値切り交渉をムハンマドがしてくれた。提示された額3KDに対して、2KDを要求し、落とし所として2.5KDに決める。
これはちょうど相場の額だ。

私もクウェートに来てから値切り交渉をするようになった。アナスとムハンマドから学んだことだ。

店員に対し、「ちょっと高いねぇ！」と言うことなど、日本では中々考えられない。

交渉はとても楽しい。間違いなく、クウェートでの楽しみの一つだと思う。

夜9時ごろ帰宅。

ルームメイトとリーダー、ムハンマドと私に加え、留守番していたアナスの5人で食べる。

まず、イスラーム法について教えてくれた。
とても有益だった。この話は後日まとめる。

イランの政治をめぐる議論や、神道について、バレーボールの話などをした。

バレー選手でもあるアナスは、日本代表のファンで(戦略的な戦い方が素敵らしいとのこと！)、選手全員の身長を暗記していた。

「髙橋藍は188cmであってるよな？」

日本人の全てが髙橋選手の身長を知っているわけではない。私は彼の知識を賞賛するだけだった。

また、日本にはユダヤ教徒が殆どいないことを伝えると驚いていた。

それから、いわゆる「日ユ同祖論」が一定の支持を受けていることについて解説した。
2人とも不思議がっていた。

明治以降の「文明開化」に伴って、自らが西洋文明の一員であることを正当化するために産まれたプロパガンダの一種ではないか、という自説を伝えてみた。
しかし最後まで賛同は得られなかった。

「そんなこと言ったって、ユダヤ人も日本人も、それぞれ独自の顔立ちをしているじゃないか？」

気づけば時刻は12時を過ぎていた。
なんと3時間も話し込んでいたようだ。

アナスは最後に問うた。

「日本で異教徒として生きることに、問題はあるのか？」

「社会的な迫害は基本的に無い」

私はそうとだけ答えた。

「仏教や神道に対する宗教的な少数派たる自己」を主張することの、なんとも言えない空気感。
そして、その空気感が共同体の中でもつ意味。

これらを上手く伝えられるほど、私の語学力は高くはないからだ。

日本国外では、宗教に対する自己意識の表明は、極めて重要なコミュニケーションの要素である。
私は発信能力を向上させねばならない。

そしてそれでも、私は宗教や思想について話しあうことが好きだ。

また、このように色々な話し合いをすることこそ、クウェートでの最高の楽しみではないだろうか？

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