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【🇦🇫クウェート大学留学#9】お母さんへ


拝啓 


9月25日

母からLINEが来ていた。

「12月のノエル・ギャラガーのライブに行きたいけど、やめました😥」

「えー」とだけ返信した。


今日も朝から学校だ。

授業がますます簡単になった。
授業の説明に占める英語の割合がますます増えている。
授業内容は、会話・作文・朗読・活用表の暗記といったところだ。

何人かの学生は、レベルの高い午後の授業へと移って行った。

私は午前と午後の授業の両方に出ることにした。


帰り際、アフガニスタンのムハンマドと会話をした。

ムハンマドという名前は多すぎる。
だから「国名+ムハンマド」で私は呼ぶようにしている。

先日は寮でアフマド(ムハンマドと関連性がある名前!!!)とムハンマドについて話をしていたところ、「俺の話題をしている?」と言いながら別のムハンマドが来たことがあった。

みんな「アフガンのムハンマド」と呼んでいる。


彼は車が好きなようだが、免許を持っていない。

「車を買うのはわけがないが、問題は免許の方だ。」

クウェートでは免許を取るのが大変らしい。
それゆえ、タクシーの後部座席には免許証のコピーが貼ってある。
無免許ではないことを証明するためだ。


後部座席には、他にも市民IDカードが貼ってある。
タクシードライバーの大半はインドやパキスタンの人だ。不法滞在労働者でないと証明するため、彼らは市民IDも提示しているのだろう。

ちなみに私は、未だ市民IDを持っていない。
これはクウェート当局が発行してくれないからだ。
しかしそのため、不法滞在労働者に勘違いされかけたことがある。どうなっているんだ!


クウェートにはビドゥーンと呼ばれる人たちがいる。彼らには国籍がない。

クウェートは豊かな国だ。
しかしビドゥーンという、社会問題も抱えている。

私たち外国人留学生とビドゥーンの生活が交わることは決して無い。

アフガンのムハンマド曰く、ビドゥーンの住むセルビーといった地区は、大学寮から1時間半はかかる場所にあるそうだ。


私はビドゥーンのことをおもう。


アフガンのムハンマドは家族と一緒にクウェート市内に住んでいて、1時間以上かけて通学しているという。

「なぜ皆んな一人暮らしをしたがるんだ?家族と暮らしていれば助け合えるだろ。」

ムハンマドは語った。


イスラーム圏では家族の繋がりは非常に重要だ。
とりわけ両親は大切にしなければならない。

「主の喜びは両親の喜びの中にある。」

これは預言者ムハンマドのハディース(言行)である。日本で習った。

「楽園は母の足元にある。」

というハディースが示すように、とりわけ母親を大切にすることが重要らしい。

アルバニアのアナスは、イスラーム教徒として最も大切なことの一つとして、両親を敬うことを挙げていた。
そしてそれは、イスラーム教徒でなくても大切なことだと語った。
「孝」の概念を説明すると、強く賛同して貰えたことを覚えている。

クラスのイブラーヒーム教授は、母親の電話番号を暗唱していた。


寮に帰ると、フランスの友人が帰国することを告げた。
お母様の体調がすぐれないらしい。

そして、もうクウェートには帰ってこないとのことだ。
私たちは最後に、サッカーゲームをした。

フェイントが上手かった。この寮の中でも、相当な実力者だと思う。

私は、彼らから親孝行の精神を学んだ。母へのそっけないLINEを悔やんでいる。

人生は一度きりだ。行きたいライブがあれば、行った方がいいに決まっている。
だから、この場を借りて言わせて欲しい。

「ノエル・ギャラガーのライブに行って下さい!」

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