【🇫🇷🇷🇺🇬🇪クウェート大学留学#5】クウェートのコーラはまずい

🇰🇼カール・レーフラー

2023年9月22日 19:17

日本の友人と、来年度以降の留学生にむけて。

9月21日

日本で通っていた大学で行われるイベントに向け、朝7時からからzoomにて打ち合わせ。クウェート時間に合わせて時間を調整して下さっている。申し訳ない。

日本とクウェートの時差は6時間。
従って、例えば日本の正午はこちらの朝6時。

友達と通話するベストタイミングは、日本の夜11時だろうか。こちらは夕方5時となる。

今日はバスが定刻どおりに来なかった。
結局、いつものメンバーは授業に10分ほど遅刻してしまった。

バスの中ではフランスのイスマイールと話した。

このコマを見てすぐに、

「第1巻のコロネル・モーガンとの戦いだね」

と当てみせた。すごい。

彼らは歴史専攻のため、日本の歴史にも詳しかった。島津や伊達も知っていた。

将軍と天皇の違いも確認された。カリフとアミールで例えてみた。たぶん合っていると思う。

授業では、今後の授業予定の発表と、作文の朗読をした。今後このクラスは解散することになる。そういう意味では授業納めだ。

作文では、自分の出身国の紹介をした。

日本人がららぽーとの話をしたとき、マレーシアのサイードが笑った。マレーシアにもイオンやららぽーとがあるとのことだ。

スピーチで特に気になったのは、ロシア出身のイマーマのスピーチだ。ロシア南部、バシコルトスタンの自然の美しさを語っていた。私はバシコルトスタンという単語を聞いた時、非常に興奮した。というのも、寮で仲の良いムハンマドは、そこの出身だからだ。

「バシコルトスタン出身なの？」
.
授業後、私は彼女に聞いてみた。

「私のナショナリティはタタールだ。」

確かに、授業中に教授からロシア出身かを問われたところ、微妙なリアクションをしていた(ような気がする。実は私は会話内容をきちんと理解できていなかった)。

ロシアはロシア連邦を構成するいくつかの国家がある。そこにはアイデンティティを巡る繊細な問題があるのかもしれない。彼女はタタールスタン共和国出身だ。

ちなみに、彼女のジェスチャーはとても怖い。否定をするとき、人を追い払うような手の使い方をする。
このジェスチャーを見ているうちに、なんだか不安になってきた。睨みつけられているような気もする。
私は怖くなって話を切り上げた。もしかしたら、本当に追い払っていたのかもしれない。

ムハンマドはお母さんがバシコルトスタン共和国出身で、ロシア語とバシキール語を話せるようだ。
寮に帰った後、タタールスタン出身のクラスメイトが居ると伝えた。喜んでいた。

彼曰く、タタール語はバシキール語と似ていて、半分くらいは理解できると言っていた。

この二つの違いは、アンミーヤ同士の違いレベルの近さか、と聞いてみた。違うらしい。

アラビア語にはアンミーヤ（方言）が沢山ある。そして、1000年以上前から大切に守り続けられている、フスハー（正則語）もある。フスハーはテレビのニュースなどで話されている。

ムハンマドはフスハーと、エジプトやスーダン、湾算諸国などのアンミーヤを理解する。しかしそんな彼でも、マグリブ（モロッコ）とチュニジア、アルジェリアのアンミーヤはさっぱりわからないらしい。もしかしたら、タタール語とバシキール語以上に、マグリブのアンミーヤとフスハーが違う、なんてことはないだろうか？

さて、授業中に知り合ったウマルとラーティーはジョージア出身だ。

彼らはSIMカードとクウェート・ディナールをもっていなかった。
異国の地に、インターネット環境も通貨もない状況で放り込まれる状況がいかに恐ろしいかは、改めて言うまでもない。私は彼らがかわいそうになったので、一緒に買いに行ってあげることにした。
私たちがクウェートに来た初日、アルバニアのアナスとロシアのムハンマドが助けてくれたことへの、ある種の恩返しでもある。

日本の友人たちはそれぞれ用事があったので、一人で案内することにした。
念の為、両替に関する幾つかのアラビア語をムハンマドから教わった。

ひとつ、今後の留学生への情報提供をしたい。

寮があるシュエイフキャンパスから毎週木曜午後 5時に、スーク・ムバラキーヤへのバスがでる。大学のバスなので当然無料だ。ムバラキーヤのことを「ワタニーヤ」と呼ぶ人もいる。ワタニーヤの周辺には色々なお店がある。

私たちはムバラキーヤ行きのバスに乗り込んだ。

私はジョージアの2人と5時間くらい話した。

彼らの語学力は凄まじい。アラビア語・トルコ語・ペルシャ語の3言語を高いレベルで使える。私はこれらを「イスラーム研究スターターセット」と呼んでいるが、日本のイスラーム研究者たちの大半もこれら言語を多かれ少なかれ使うことができると思う。

彼らの能力があれば、様々なテキストが読み放題のはずだ。うらやましい。
私はトルコ語もペルシャ語も漫然と授業を受けていたので、ほとんど出来ない。私は「これはオレンジジュースです」とトルコ語で言ってみた。発音が悪すぎて (そして何より突然すぎる！)5 回言わないと通じなかった。ではアラビア語が出来るのかといえば、やはりできない。彼我の差は歴然だ。

その一方で、なぜか二人とも英語ができない。ラーティーは会話ができるが、ウマルは単語レベルでしか英語を知らず、文章を作れない。リスニングもできない。

私は当初、意思疎通がうまくいかず、絶望的な気分になった。

しかし、何時間も話しているうちに、相当度に意思疎通が可能になった。不思議なものだ。

ラーディーはイスラーム・キリスト教・ユダヤ教の宗教的比較に関心があるらしい。ジョージアには、2,500の教会・400のモスク・30のシナゴーグがある、と彼は言った。
ジョージアの宗教状況ゆえに出てくる関心かもしれない。

彼らの教授がクルアーンをジョージア語に「翻訳」したらしい。
翻訳にあたっては、実に 15年もの月日がかかったという。そのようなイスラーム研究の大家に師事しているからこそ、美しいアラビア語を使いこなせるのだろうか?

彼もまた、教授のもとでアラビア語のテキストを翻訳したり、様々な宗教の関係者たちと議論したりしたという。それは単にムスリムにとどまらず、正教会やネストリウス派も含むらしい。私も一度、ネストリウス派の知識人と話してみたい…。

ラーティーは正教会の信徒だ。十字架のペンダントを持っていた。
実は、私は小型のイコンを持ち歩いている。

デザインが好きなのと、正教会の信徒と出会った時に話すきっかけにするためだ。まさかクウェートで役に立つとは思わなかったが。

イコンを見せたところ、ラーティーは非常に驚いた様子だった。

「お前は正教徒なのか?」

モスクの近くを通った時、ラーティーはイスラームのシャハーダ（信仰告白）を口ずさんでた。

面白かったのが、そこにシーア派特有の文言である「アリーは神のワリーである」が入っていたことだ。
二人ともシーア派に詳しく、とくにウマルは専門にしているらしい。アラビア語に堪能であれば、ウマルと討論できたはずだ。残念で仕方ない。

そしてジョージアはワインで有名だ。ラーティーはムスリムではないのでワインをのめる。

家には家庭用ワインセラーがあり、そこでワインをつくるという。なんと200 リットルも容量があるらしい。そしてパーティーでは一人 2 リットルは飲むらしい。恐ろしい酒豪だ。

ワインセラーのことは「マラーニ」というらしい。他にもワイン用語を教わったが、すべて忘れた。

ジョージア語の発音は難しく、なかなか覚えられないのだ。
例えば、Qの音は喉を絞ったように聞こえる。

他にも、日本で有名なシュクメルリは、「チュクメルッリ」のように聞こえた。タマル大王のことは、「メぺェ・タマル」と言っていた。

水の話も面白かった。ジョージアは山に囲まれた国士であるため、川は2万以上あるとのことだ。
そこから得られる水は清浄で、ジョージアで作られたコカ・コーラは、クウェートのコカ・コーラより美味しいと言っていた。

私は日本の川や水、そしてコーラに想いを馳せた。
涙が出そうになった。
もっとも、涙が出たとして、その水分はクウェート由来のものだろう。日本製の涙よりは美味しくない(？)かもしれない。

しかし、コーラに違いなどあるのだろうか？

国士を巡っては、古来より戦いが繰り広げられた。イランやオスマン朝との戦争の数々を彼らは語った。
また現在ではロシアが脅威だ。

「ロシアは好きじゃないんだ』

こっそりとウマルは語った。

ウマルもたくさんのことを教えてくれた。ただ、それらはアラビア語の日常表現や語集なので、今回は述べないでおこう。

役に立つ語彙をまとめた記事をつくるつもりだ。インシャーアッラー。

スーク・ムバラキーヤにつくと、まずは両替場所を探した。私は案内人を気取っていたが、実はここには一度しか来たことがない。当然、店の場所など知る由もない。

英語で「両替」と打ってもなかなか場所がヒットしない。そこでウマルの提案で"al-Muzain”と入力してみたところ、お店が見つかった。

まったく見知らぬ土地で、一度しか訪れたことのない市場を案内することの大変さはどう伝えたらいいのだろか？

しかも私は方向音痴である。
地図を読むのも苦手なので、この役回りは不適当と言わざるを得ない。

スマホをウマルにわたして (SIM カードがないので彼らはインターネットを使えないのだ！)、道案内させた。

もはや誰が誰のために何をしているのか、わからなくなってきた。

無事両替できたが、ビザの原本を持っていないので(大学に取られたからだ！)不法滞在の労働者と勘違いされかけた。
逮捕されなくて良かった。

そのあと、彼らのSIMカードを契約した。
一月当り6KD(だいたい1KDで470円くらい)で300GBの契約を提示された。
Zainという会社が一番良いらしく、それにしてもらった。

「となりの店では5KDで売ってるから、そっちにするね。」

私は言ってみた。1KD 割引してくれた。

SIMカードの値切りをするのは、アルバニアのアナスから学んだことだ。彼は私たちのために、7KDを5KDにしてくれた。

インターネットがつながるようになった途端、彼らは親や友達に電話をし始めた。ジョージア語なので何を言っているのかはわからなかったが、うれしそうだった。

お駄賃として、ラーティーはコカ・コーラを買ってくれた。ここでは夜でも 35度以上の気温がある。よく冷えたコーラが体中に染み渡る。

しかし、コーラの話を聞いたためか、日本のコーラに比べるとおいしくない気がしてきた。
やはり水の違いなのだろうか？

別れ際、「あなたに神の祝福がありますように」とお祈りしてくれた。

部屋に帰ると、ルームメイトが絢香の「おかえり」を流して歓迎してくれた。
愉快なルームメイトがいるのは幸いなことだ。

リーダーとルームメイトで私の分の洗濯までしてくれていたようだ。ありがたい。

今日の晩御飯にはコカ・コーラが出てきた。晩御飯には必ず炭酸飲料が入っているが、コーラであったり、ファンタであったり、スプライトであったりする。
ご飯は箱に入っていて、開けてみるまで中身は分からないのだ。
しかしどういうわけか、開ける前からコーラが入っている気がしてならなかった。

ご飯についてくるジュースはどれであれ、ぬるい。日によっては殆どお湯の日もある。
先ほど貰ったキンキンに冷えたコーラとは大違いだ。

部屋に着いた瞬間から、どっと疲れが押し寄せてきた。
40℃近い中、何時間も歩いていたため、喉はカラカラに乾いている。
ぬるかったとしても、きっと美味しいに違いない。

缶を開け、一気に飲み干した。そして確信した。

やはり、クウェートのコーラはまずい。

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