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すべての人に、生きがいを。carewillの法人パートナー、株式会社ハレが描く未来

救急外来の看護師、訪問看護の現場でのご経験を経て、「かなえるナース」などの事業を展開されている株式会社ハレ 代表取締役の前田さん。かなえるナースは、いつまでも生きがいのある人生を誰もが送れるよう、24時間365日、いつでもどこでも対応してくださるプライベート看護サービスです。代表の前田さんが、ICUの看護師時代に感じていた、もっと患者さんとコミュニケーションしたい、向き合いたいという想いや、その人らしい最期を迎えるために、患者さんと在宅看護で関わった経験、そして義理のお母様の末期がんがきっかけで自身がフォトウェディングを行った経験から、「生きる」だけでなく「生きがい」が持てる世の中をつくることに邁進されています。carewillの法人パートナーでもある同社、そして前田さんに、お話しを伺いました。今回の記事は後編です。前編はこちら


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株式会社ハレ 代表取締役
看護師/保健師
前田 和哉氏
1986年、大阪府生まれ。
2009年3月、京都大学 医学部保健学科 看護学専攻 卒業。
大学卒業後、聖隷福祉事業団 聖隷浜松病院 救急科集中治療室にて5年間の臨床経験を積む。
2014年よりケアプロ株式会社 ケアプロ訪問看護ステーション東京にて4年間勤務。訪問看護師、事業所長、在宅医療事業部責任者を歴任。
2016年より日本看護連盟役員 青年部担当幹事。同年より都内専門学校にて非常勤講師も勤める。
2015年に末期がんの義母にフォトウェディングをプレゼントし、大きな感動を経験。一方で訪問看護事業の経験を通じ、ニーズに合った外出向けサービスが、業界に普及していないことを痛感する。
2018年、株式会社ハレを設立し、本事業を開始する。


前田さんご自身の、服の不自由を感じた経験

ー前編では、法人パートナーとしてのcarewiillとの関わりや気づきについてお話しを伺いました。前田さんご自身が、これまでに服の不自由を経験されたことはありますか。なさそうな気がしますがお伺いしてみます。

ありますよ!以前、訪問看護の現場(2021年2月にcarewillがクラウドファンディングの売上の一部で現場応援企画を実施した際にご協力いただいた、株式会社ケアプロさん!)で仕事をしていた時のことです。訪問先への移動には自転車を使っていたのですが、1日に何軒も回る中で、膝を骨折しました。そのときは、膝を固定しないといけないので、固定した足が入るズボンの選択肢がほとんどなくなってしまいましたし、着る動作についても不自由を感じていました。


ー後半はいきなり驚きのエピソード!ちなみに、そのとき訪問予定だった現場はどうされたのですか?

そのまま足をひきずって行きました(笑)。痛い痛いと言いながら、どっちがケアされているんだという状況で、看護をさせていただきました。入浴介助をしていて、おそらくその時は骨が折れていたんですけど、痛みに強いタイプで、そのまま悪化させちゃいましたね。膝の皿が割れていたんです。


ーすごい責任感ですね。そして前田さん、痛みにお強いですね。トラブルの際の対応力がすごいと思いました。膝を固定されている間は自転車こげないですよね?どうやって訪問看護の現場を回られていたのですか?

自転車がないとどこにも移動ができないので、本当は乗ってはいけないのですが、骨折していない方の足をペダルに固定して、自転車で移動していました。ですので、怪我をされて服の不自由を感じていらっしゃる皆さんの気持ちがよくわかります。

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ーお話しを聞いているだけで身がすくみます。その時、足の部分に服の不自由を感じておられたかと思いますが、その状況に対応するために何か服をリメイクされたりですとか、新しく服を買われたのでしょうか。

骨折は時期がくれば治るものなので、新たに何かを買ったり、リメイクということはしなかったですね。ただ、手持ちの服の中でなんとか、着られるものを探してはいました。とても不便でした。


ー確かに、短期間であれば手持ちのものか、どうしてもの場合には簡単なリメイクでなんとかする、という考えになる方が多そうですね。ちなみに、他にも服の不自由を感じられたご経験はおありでしょうか。

大昔、子どもの頃に、ローラースケートで遊んでいて、鎖骨を骨折したことがあります。手をバンドで固定していたので、おそらく不自由を感じていたんじゃないかと思います。腕は動かすと痛いので、つっていたんです。腕をあげられないので、シャツを着るときにも不自由を感じていました。小学生くらいの頃だったので、患側を先に通して、痛い痛いといいながら健側を通していたように思います。


ー車輪があるものでお怪我をされることが多いみたいですね・・・

よく考えたら車輪と相性悪いですね。乗らないほうがいいんじゃないか。でも好きなんですよね。片想いなんですね。


ーきっとそれは好きすぎて、スピードが速くて、車輪がついてこられないんでしょうね。鎖骨を骨折されたときも、特に新しい服を買ったですとか、リメイクをされたことはないですよね。

そうですね、買い揃える感じではなかったですね。痛い痛いと言いながらなんとか手持ちの服で乗り切りました。


これまでの仕事での、ケア衣料との関わり

ー次はこれまでの仕事の中で、ケア衣料についてどんなことを考えてこられたかを教えてください。また、どんなケア衣料と接してこられましたでしょうか。

過去の仕事では、ICUでの看護、そして在宅介護の方の看護に携わっていました。この仕事で接する患者さんたちは、寝たきりの方が多いんですね。寝たきりの方って、寝たままお着替えをされます。壁やベッドにくっついている状態ですから、服を着せづらい、脱がせづらいんです。特に首と背中の部分が大変で、大人2人がかりでやっと、というところ。1人でそれを全てやるのは本当に大変です。拘縮がおありの方は、袖を通すことにも不自由を感じられますよね。また、寝たきりの方は、服や寝具のちょっとしたしわなどでも褥瘡(じょくそう。「床ずれ」とも呼ばれる)ができてしまいます。高齢の方は特にそうですね。また、現場で頻繁に介護士さんが位置を変えられない現場だと、5〜6時間同じ姿勢で寝ていることになりますので、褥瘡になりやすくなります。着用している衣類の素材の硬さであったり、縫い目やゴムバンドの接触、シーツのシワなど、褥瘡の要因はさまざまです。だから、患者さんの着替えをした後は、着用している衣類のヨレをまず伸ばし、シーツも伸ばして、なるべく皮膚の刺激になるもの、出っ張りになるものを排除していました。ですので、最初に質問のあった、carewillの服づくりのお手伝いにも、この観点からボタンの位置などについてもアドバイスをしました。最近はシームレス(縫い目のない)ケア衣料をすごくほしいと思っています。

それから、先日笈沼さんにもお伝えしたのですが、寝たきりの方って、前びらきの服であっても着脱介助がとても大変です。片方の肩と腕を通して、一度体を転がして、また反対側に向いてもらって、服を引っ張り出して、という、赤ちゃんの着替えが、身体が大きくなって重たくなっているイメージですから、本当に大変です。さらに、拘縮されている方は、片方の袖を完全に通してしまうと、もう一方の袖に腕が届かなくなってしまいます。そのため先に両手に軽く袖を通してから、二人がかりで身体を持ち上げて、よいしょ、と服を首元まで通す作業が必要なので、本当に大変です。


ープロが対応されてそんなに大変ということは、在宅で介護されていらっしゃる方、ご家族はもっと大変でしょうね。

とても大変だと思います。最後にぐっと体を持ち上げる動作が入りますので、腰にも負担がかかります。今回のケア衣料があれば、持ち上げる必要性がなくなるので、現場の方の負担が減ると思います。介護の現場的にはとても助かると考えています。


ーそう言っていただけると大変励みになります。引き続きアドバイスをいただけたら嬉しいです。かなえるナースとして、前田さんご自身として、carewillに期待すること、法人パートナーとして一緒に実現したい未来を教えてください。

他の会社に真似できないことをどんどんやっていってほしいとcarewillには期待しています。社名に「will」が入っているから、強い意思を持って、突き抜けていってほしいですね。これは、自分に対して期待していることでもありますが、他の人に対しても、特に笈沼さんはイノベーティブな方という印象なので、楽しみにしています。

ケア衣料によって現場が便利になっていくことも一つの成果ではあるものの、お互いの会社が目指していることはそこではなくて「よろこびが生まれること」だと考えています。よろこびを生み出すプロダクトを生み出していただいたら、当社でも使っていきたいですし、現場から、こんなプロダクトがほしいというリクエストやフィードバックをお伝えできる機会があれば積極的に伝えていきたいと思っています。その結果、また新しいプロダクトが生まれる、という相乗効果を生み出していきたいですね。お客様の言葉で最近印象に残っているのが「長生きしているとこんなにいいことがあるのね」だったんです。服に関して、こんなにおしゃれに装えるんだ、という価値観が日本中、世界中で生まれていくといいなと。かなえるナースからもcarewillに情報を提供させていただきたいと思っています。


ーcarewillのメンバーが服作りの打ち合わせで話していても、気づかなかったな、当初の仮説には含まれていなかったかもしれないな、というエピソードが先ほども出てきました。やはり現場の方からのフィードバックがとても重要です。引き続き今後もアドバイスをいただければと思っています。7月からクラウドファンディングで販売する予定の服も、外に出かけていただくには楽しんでいただけるデザインになっていますので、かなえるナースさんのサービスを利用されるお客様にもぜひ着ていただきたいと思っています。

僕も日頃からcarewillの服をきて「この服すごくない?!」と紹介していきたいですね。


ーぜひ前田さんにも普段着として着ていただきたいですね。服の不自由が解消したあとにも着られることがコンセプトなので。carewillメンバーも着ていけたらいいですね。

皆さんがcarewillを着用されるのはいいですね。そういえば、かなえるナースの現場からのリクエストをひとつ。結婚式、礼服を着たままのおむつ交換ってすごく難しいんですよね。ジップが横についていて、ぱっとパッドだけでも交換できたら、ハレの場でも素早く対応できますし、お客様がその場を長時間離れずにすみますよね。そういったプロダクトもあったらいいなと思います。僕自身は、既存のそういったレンタル衣装などに満足をしていなくて。生地の素材とかも含めて、そこそこで満足するだろうという意図が見えるので、仕方がないにせよ、事情があるにせよ、本当にいい、と思えるものに向き合っていきたいと思っています。

前田さんが一生をかけて取り組みたいこと

ーかなえるナースさんの「教育事業」も気になっています。

これからの取り組みではあるのですが、僕は「人生会議」を広めるようなことがしたくて東京に出てきたようなところがあります。ICUで看護師として働いていたときに、患者さんが、ご家族と会話ができない状況になってしまうことに挫折感を感じたのが原体験です。これはみんな人生会議をしなきゃ、広めなきゃ、と思って、訪問看護の現場に行ったんですね。在宅で患者さんとじっくり向き合えた、やりたいことをできた、という実感をえながらも、あまりスケールしない、自分の目の前にいる人たちにだけ伝えても広がっていかないから、終活教育をやりたいと思っています。carewillさんの旧社名の「みんなで人生会議」にも通じるものがあると信じています。
 
創業当初に3つ考えた事業の柱の1つ目がこの「人生会議」、そして2つめが「シニア向けのタレント・スキルマネジメント」でした。もう1つが「かなえるナース」で現在の事業の柱になっています。どれも生きがいに関わる部分なのですよね。僕の祖父母をみていて、すごく知識や経験のある人たちだったにもかかわらず、引退後はテレビを見て、少し散歩したり出かけたりする生活なんです。彼らをこんな過ごし方をさせていいのだろうか、僕は彼らのいいところもたくさん知っているので、何かできないかと。例えばオンラインで必要なひとにつなげば、彼らのスキルや経験、人柄を生かして、お役にたてたと思います。そういう意味でも挫折感があります。ですので、人生の終わりを淡々と迎えるお年寄りをひとりでも減らすプロデュースを、つまり、お年寄りがもっと活躍して、生きがいを感じる活動を継続してもらえるように、当社が関わっていけたらいいのかなと思っています。まずは「かなえるナース」に取り組んではいますが、僕の熱意は「人生会議」と「お年寄りの生きがいを感じる活動プロデュース」にもありますので、取り組んでいきたいですね。


ーお年寄りにとって、生きがいを感じていただく活動をしていただくのはとてもいいことですし、きっと、そのスキルあふれるあたたかいお年寄りが接する先、例えば子育て世帯とかも助かりますよね。ファミリーサポートに登録をしているお年寄りは全体のごくわずかで、貴重な社会資産を無駄遣いしているなと私自身も感じています。ぜひ、前田さんがこの事業を推進していただきたいなと思いますし、carewillとしてお手伝いできることや一緒にできることがあればご一緒したいです。

実は、60代の優秀な看護師の方が、アーリーリタイヤしていらっしゃるのですね。彼らにオンラインで講義をしていただいたり、研修をしてくださったらいいなと思っていまして、ヒアリングをするなどして、準備をしています。

ー素晴らしいので、ぜひ取り組みが進んでいくことを祈っています。carewillも、高齢の縫製者をパートナーに迎えたいと考えていますので、その点でも御社との共通点も感じました。ぜひ、今後とも継続的に意見交換をさせていただきながら、法人パートナーとして協働し、すべての方が「生きがい」「よろこび」を感じて生きていける世の中を一緒に作っていきたいです。ありがとうございました。


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