漫談:おかあちゃんとフットカバー
靴下にね、穴が開いたんですわ。
なんやら、今どきはフットカバーとか言うんでっしゃろか。
あの足の先っぽしか覆わんのがありますやん。
あれですわ。
すぐに脱げてしまうし、心もとないことありゃしませんけどワタシもね、今どきの暑さにはかないませんわ。
この暑い中、とてもやないけど靴下なんてよぉ履きませんのや。
かと言って裸足やあかんところも多いし。
そやから夏の間だけ、安い3足数百円とかのフットカバーを履くんですわ。
ところがね。
安いもんはやっぱりあきませんなあ。
すーぐに、穴が開いてしまいよるんですわ。
買いかえればええんかしらんけど、どうせ夏の間だけのもんでっしゃろ、何度も買うのもなんやらシャクやし、ちょっとつくろったろと思もぉたんですわ。
そんなわけで
おかあちゃん、針と糸貸したってー。
て言うたんですわ。
そしたらおかあちゃん
アンタはなんで自分の針と糸も持っとらんの。
って、説教はじまりましてな。
ワタシにだって言い分はありますねん。
ワタシ、先日引っ越しておかあちゃんと住むようになったんですけど、ワタシが出かけてる隙におかあちゃんがワタシの引越し荷物の段ボールを片付けはったんですわ。
そりゃあ、おかあちゃんにしたらホンマに世話がやけるってこっちゃとってことやと思うんやけど、ワタシの荷物をおかあちゃんが自分の好きなところにしまいはったんですよ。
そやから、ワタシは自分の持ちモンがみんなのぉなってしもぉたんですわ。
いえね。
たぶんうちのどこかにはあるんですよ。
半分くらいはおかあちゃんがゴミやとおもぉて捨てた、ってこっちゃらしいんやけど。
残りの半分はおかあちゃんが考える所定の位置にしまいはっただけらしいから。
ただね。
おかあちゃんの考える所定の位置は、ワタシにはサッパリ分かりませんのや。
うちは田舎の広い家でっしゃろ。正直ワタシが開けん戸袋も棚もなんぼでもあるんですわ。
しかもおかあちゃんはその所定の場所をしょっちゅう変えよりまんねん。しょっちゅう変えるおかあちゃんの所定の位置なんてもう想像もつきませんわ。
ほやからな。
なんぞいるもんがある時には聞いた方が早いんですわ。
おかあちゃん、アレはどこにしまったのー?と。
まあ大抵おかあちゃんも忘れてるんですわ。だから大体出てきやしませんのや。
そんなわけでな。
もうおかあちゃんのもんを借りた方が早い、ちゅうことになりますのんや。
それで
針と糸貸したってー、ですわ。
これがいわゆる、学習、ってやつなんですわ。
まあそしたらね。
大体、説教を聞く羽目になるんですわ。
そんなんも持たんのか、というね。
それでもね。
アレはどこにしまったんー?って探してもらうよりは早いからね、そっちの方がマシなんですわ。
まあそんなこんなで、今回も説教された後でおかあちゃん不意に
そういやおばあちゃんの裁縫道具があるから、アンタそれを自分でもっとき!
と言い出したんですわ。
そっからですわ。
二人で倉庫を行って、段ボールを下ろして…ばあちゃんの荷物は倉庫の段ボールにしまってあるんですわ。
言っときますけど、倉庫って小さな物置とちがいまっせ。
農業用のワンルームマンションよりうんと広い倉庫でっせ。
その中で段ボール開けて裁縫道具探しですわ。
ほんでゴミとホコリとカビまみれのばあちゃんの裁縫道具を見つけてな、今度はそれの掃除ですわ。
ゴミとホコリとカビまみれの裁縫道具なんて、よぉうちに持って入れやしませんやん。
そんなんやってたらクシャミは出るし目ぇは痛いし、服もホコリまみれのですわ。
そんでな、やっとこさ綺麗にした裁縫道具をうちに持って入った頃にはもうクタクタですわ。
そっからふと考えましたんや、ワタシ。
フットカバー、3足で三百円しませんのや。
こんなエライ目に合うんやったら、買い替えた方が安かったんと違うやろかー、と。
ホンマ、おかあちゃんっていうのはなんであないに無駄なことやるのが好きなんか分かりませんわ。
ワタシはおかげさんでゴミにまみれてひとつかしこぉなったんやと思います。
フットカバーは次からはすぐに買い替えに行きますわ。
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