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キャリコン視点で読み解く岡田メソッド③

いいコーチとは

サッカーやスポーツに関わらず、人は人生においてさまざまな「コーチ」に出会います。

これまで育ててくれた家族もある意味でわたしの「コーチ」であり、小学校からこれまで出会った先生、友人、職場の先輩の中にも「コーチ」がいたと思います。

幼少期、わたしは正義感の強いおてんばでした。「おかしい」と思ったことは小学生の頃からはっきり物を言う子どもでした。それを見て「君は太陽みたいな子だね」と言ってくれた先生がいました。

一方で転校した中学1年の秋。進度の違いで理解できず、遅れていた教科を教わろうとしましたが、何のフォローもなかった先生がいました。苦手な科目を自分で何とかする術(すべ)を中学1年のわたしは思いつきませんでした。

肯定的な人からは「自分もこんな人になりたい」と思い、無関心な人からは「こんな大人にはなりたくないな」と子どもながらに感じていました。一言でいうなら「大人への信頼感、不信感」ですね。

岡田監督の著書の中にコーチとして大切なことが書かれていました。

コーチの役割は、選手を「モチベート」することだと私は思っています。選手たちの心に火をつけてあげることです。(中略)コーチが「サッカーを理解し」「結果を出し」「厳しく指導する」ことはどれも大切ですが最も大切なことは「信頼」されることです。つまり「人間力」をあげることです。1990年のイタリアW杯のとき、イタリアの名将アリゴ・サッキの講習を受けました。そのとき彼は「いいコーチになりたかったら本を読みなさい。音楽を聞きなさい。絵を見なさい」と言ったのです。そのときは「感受性をあげなさいということか」と理解しましたが、経験を積むにつれ、彼が言いたかったのは「人間として成長しなさい」ということではなかったかと私は考えるようになりました。(『岡田メソッド』岡田武史著2019年英治出版)

キャリアコンサルタントも「コーチ」の役割を担う場合があります。わたしが学生の就職支援で大事にするのは「自ら気づいて動き出せるまでの伴走者」という視点です。就活のスキルやマナーを一方的に教えても学生自ら「自分の未来に向かって動き出す」気持ちがなければ、のれんに腕押しだからです。

自分の心に火をつけることさえ難しいのに、他者の心に火をつけるのは容易ではありません。だからこそ、いいコーチは「気づく」「知る」を普段の生活の中に意識的に取り入れているのだと思いました。例えば映画や音楽を通して色んなシーンや登場人物、音に出会うことで想像力を磨き、気づき、自分ならどうするかを考える。その積み重ねこそ岡田監督の感じた「人間としての成長」なのではないでしょうか。

自分を磨き他者の意見に耳を傾けることから信頼は生まれるだと、岡田メソッドを読みながら改めて思いました。

(おしまい)

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