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追記・更新版『聴けずのワカバ』(キャリコン資格取得編)-75

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真打ち登場

 「ああ、ふ、二木(ふたつぎ)先生、ご無沙汰しております。か、会場までご足労いただきありがとうございます」
 サオトメが先ほど受験生の話を聴いていた白髪のご老人を慌てて出迎える。

 「サオトメさん、こちらこそ随分ご無沙汰してまして、あれから変わりはありませんかね」
 二木が会場を見渡す。
 
 「二木先生、大丈夫です。何もありません。本当に大丈夫です」

 「何も『ありません』?」

 「は、はい、あ、変わりはないということです。本当に本当に大丈夫ですから」
 慌てるサオトメを静止するかのように代表がかけよる。

 「二木先生、ご無沙汰しております。このような遅い時間にしかも駅から遠い場所、事前に仰っていただければ向かいに行かせましたのに」

 「六車(むぐるま)さん、ご無沙汰しております。前は、ああ、ヤシロさんの勉強会にお邪魔した時だったかな。お元気そうで何よりです。しかし、本日私が来ることを知らなかったご様子ですが・・・」
 六車(代表)がサオトメに耳打ちして確認する。
 
 「代表、お伝えできず申し訳ありません。私の方にご連絡があったのですが、お伝えするタイミングがなくて」

 「今更そんなことはどうでもいい。どうして二木先生が本日いらっしゃるのですか?確か今、出版の準備で大変お忙しいと聞いておりましたが」

 「いや、私も急な連絡だったもので、正直驚いたんです。お越しいただいた理由までは分かりませんでした」
 六車とサオトメがやや揉めているところ、イチジョウが二木に声をかけた。

 「二木さん、お久しぶりです。会場、分かりにくかったでしょ」
 親しげに話すイチジョウに驚く二人。

 「いや、でもイチジョウくんの補足情報があったから、迷わず来ることができたよ。ありがとう」
 イチジョウと二木の関係性を知らないワカバも不思議に思った。

 (あれっ、あのいかにもどこかの偉い先生っぽい人とおっさん知り合いなのかな)

 「イチジョウくんがこの勉強会に参加すると聞いたから、私も久しぶりに会いたくなってね。仕事が終わったあとに急遽来てみたんだよ」
 イチジョウに会いたいという話を聞いて、気になった六車が確認する。

 「二木先生、この男と知り合いなのですか?」

 「この『男』?」
 
 「いえいえ、イチジョウ、さ、さんと初めてではなさそうですよね」

 「まあ、昔から付き合いでね。少し前にイチジョウくんから連絡もらって、私もここの勉強会に最近、来られてなかったから、いい機会だと思ってね」

 「そ、そうでしたか、そういうことなら安心しました」

 「『安心』というのは?」

 「いえいえ、特に何もありません。私も二木先生にお会いするのも久しぶりですし、勉強会のご報告もできて良かったと思っています」
 先ほどの威圧的な態度とは裏腹に借りてきた猫のようになっている六車(代表)をみて、ワカバがまた本音をもらす。

 「さっきと全然、違うじゃん。あっ!」
 余計なことを言ってしまったと思ったワカバに二木が応答する。

 「『全然』というのは?」

 「いやあ、何ていうんですかね。あれですよ、全然っていうのは全然ていうか、全然じゃないというか・・・」
 端的な鋭い質問にしどろもどろになるワカバ。

 (この人、めちゃめちゃ雰囲気は優しそうなのに、質問が鋭利な刃物みたいに鋭いんだよなー。ばさーっといかれるというか・・・)

 「『ばさー』っていうのは?」

 (うわあ、危ない、心の声システムも出来るのこの人?ホント一体、何者なのー、まいった。おっさんヘルプ)
 とワカバはイチジョウに助けを求めた。

 「別に親方が焦る必要はないだろう。確かに二木さんの質問は・・・まあ、その辺はいいとして」

 「イチジョウくん、質問はのあとの『・・・』(妙な間)は何だね」
 二木のおちゃめな一面が垣間見れたところで、今度は六車に質問する。

 「六車くん、ひとつ確認してもいいかな」

次回の更新は2023/5/8予定です(明日は今週分の総集編を更新します)。

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