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キャリアコンサルタント試験の受験団体を選択する際の3つの鍵

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 第16回キャリアコンサルタント試験の受験申請の受付が以下の通り開始されています(以下よりキャリアコンサルティング協議会は「キャリ協」、日本キャリア開発協会は「JCDA」と略)。

【JCDA】第16回試験の申請の受付を開始しました(12/18)
 https://career-shiken.org/info/5911/
【キャリ協】第16回の受験申請について(12/3)
 https://jcda-careerex.org/news/331.html

 この時期、どちらの受験団体にすべきか迷われている受験生の方もいらっしゃると思いますので、今回のコラムが選択の際のご参考になれば幸いです。なお、以下の条件は除外して解説します。

・学科試験は両団体共通であること
・どちらの団体で合格しても同じ資格であること

 つまり実技試験が選択の鍵になりますので、これからそのポイントを3つご紹介します。

1.受験資格

【ポイント】実務経験の有無で受験団体を選択する

【根拠】合格率の差異

第15回キャリアコンサルタント試験結果(実技試験)

画像1

【出所】各受験団体の試験結果のデータを元に筆者作成

 上記の図表を見る限り、実務経験者(技能検定※片方合格者含め)はキャリ協で受験した方が合格しやすいということが分かります。この傾向は今回に限らず第1回試験から継続中です。参考までに技能検定はキャリ協が2009年から運営しています。※キャリアコンサルティング技能検定(以下より「技能士」と略)

【結論】合格率を見る限り、実務経験者はキャリ協で受験、実務経験がない方は次の2項目もふまえて受験団体を検討することが望ましい。


2.養成講習

【ポイント】現在、通学中あるいは終了した養成講習機関で選択する

【根拠】JCDA創立の背景

 JCDAの現理事長の大原 良夫氏と前理事長の立野 了嗣氏は日本マンパワーにて1998年よりキャリアカウンセラー養成講座を開発に従事していました。つまり日本マンパワーがJCDAを創設したいっても過言ではありません。参考までにリカレントという養成講習を運営している学校も以前は日本マンパワーのテキストを使用しており、JCDA寄りでしたが、国家資格化直後の第1回の試験結果をみて、JCDAの合格率がキャリ協より低かったため、その後、キャリ協へ乗り換えたという経緯があります(私の記憶では第3回試験以降は日本マンパワーのテキストを使用していないはずです)。つまり日本マンパワーによって生み出されたJCDAのキャリアコンサルタントに対する理念や思想は当時から変わらず受け継がれていると思います。

【結論】上記により、養成講習が日本マンパワーならJCDAが無難である。それ以外の場合は、次の項目を含めて検討することが望ましい。


3.論述試験問題

【ポイント】キャリ協、JCDAそれぞれの過去問を解いてみる

【根拠】実技試験は論述と面接に分かれているものの親和性は高い

 第15回からキャリ協、JCDAともに論述試験の問題が見直されていますが、未だに両団体で歩み寄りの姿勢は垣間見ることができません。つまり論述試験である程度、受験団体の理念や思想が見えてきます。

 キャリ協は今回から論述試験の問題を実務的でも使える面談記録のようなフォーマットへ大幅に改変しています。これは今後、より実務をベースとした試験制度へ移行していくこと方向性を示しています。一方、JCDAは相変わらずキャリコンの応答として相応しいか否かを考えさせる問題や受験団体が好むキャリコン用語を指定語句として記述させるなど、実務的な観点から離れた思想教育的な問題となっています。

【結論】両団体が公開している論述試験の過去問をどちらも解いてみて、自分が解きやすいと思う方の受験団体を選択することが望ましい。

 ちなみに、よくJCDAの面接試験は聴くだけでも合格できるが、キャリ協は成果を出さないと合格できないと言われていますが、それは半分ホントで半分ウソです。この話は少し長くなりますが、端的にいうとそれぞれの受験団体の出自が関係しています。JCDAは前述した通り、キャリアカウンセリングから派生していますので、カウンセリング=傾聴を重視しています。一方、キャリ協は元々技能士から派生しており、技能士は試験制度上、ロープレでクロージングを求められます(ここでいうクロージングとは目標設定から方策までの面談終盤のことです)。おそらくそのような背景が受験団体の差異(個性)となって噂が広がったと思われます。

 ただし、キャリアコンサルタント試験の前提条件はどちらの団体も「面談の冒頭部分」であるため、クロージングは必要ありません。むしろクロージングが出来たという場合は、相談者を強引な応答で誘導していたはずです。現に過去の面接試験でクロージングをしたという受験生のことは聞いたことがありませんし、私の知る限り合格者は誰ひとりとしてクロージングに至っておりません。「試験でジョブ・カードぐらい提案しないと合格できない」という人がたまにいますが、誰もが納得する根拠を教えて欲しいものです。ジョブ・カードも口頭試問で答えるなら方策のひとつとして有効かもしれませんが、面談の冒頭部分で相談者へ提案するなど試験制度を理解しているとは到底思えません(少なくとも「優秀な」試験官の皆さんがそのことに気づかないはずありません)。もしそのように言われた時は試しに質問してみてください。その時の回答は「合格した人がそう言っていた」か「そのやり方で自分は合格した」のどちらかで返ってくるはずです。残念ながら納得できる明確な回答は得られないと思います。

 と結局、書き始めたら長くなってしまい、失礼いたしました。私も人のことは偉そうにいえませんね。

まとめ

1.受験資格:実務経験者はキャリ協で受験
2.養成講習:養成講習が日本マンパワーならJCDAで受験
3.論述試験:自分が解きやすいと思う方の受験団体を選択

 あと最後に補足ですが、受験申請したあとに受験団体を勘違いしていたという受験生が割といます。周囲が全員JCDA受験なので自分も同じかと思ったら、受験票が届いてキャリ協で申請していたことに気づいた、というのは結構聞いています。受験予定の皆さんは受験申請時に希望している受験団体であるかの確認は必須です。(ジャン・一)

引用・参考文献

厚生労働省「第15回キャリアコンサルタント試験結果の概要」https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000704061.pdf (2020.12.20アクセス)

キャリアコンサルティング協議会「第15回 キャリアコンサルタント試験 試験結果」https://www.career-shiken.org/wordpress/wp-content/uploads/40_2020_CC_15_Results.pdf (2020.12.20アクセス)

日本キャリア開発協会「第15回 キャリアコンサルタント試験 試験結果」https://www.jcda-careerex.org/files/result/340summary.pdf (2020.12.20アクセス)

キャリアコンサルティング協議会「実技(論述試験)」https://www.career-shiken.org/wordpress/wp-content/uploads/15_jitsugi_mondai.pdf (2020.12.20アクセス)

日本キャリア開発協会「第15回キャリアコンサルタント試験 実技試験(論述)問題」https://www.jcda-careerex.org/files/past/328practical-q.pdf (2020.12.20アクセス)


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