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『聴けずのワカバ』(番外編)RPケース106「野口美帆」さん

読了目安:約10分(全文3,961文字)※400文字/分で換算

 *キャリコン・技能士の学科・論述・面接試験対策を希望される方は

先日開催したライブ配信の相談者役ケース106「野口美帆」さんの設定について、時系列と背景(ロープレ小説)をご紹介したいと思います。

以下にて、今回の設定をCCtとCLの逐語風にまとめております。実技試験対策にも有効だと思いますので、受験生の皆様ぜひご覧ください!

CL情報


対象のRP動画関連

時系列

【22歳】4年制大学卒業後、現在の複合機メーカーに就職(現在の経営企画部に配属)
29歳】同じ会社に勤めていた夫と結婚
31歳】第一子の出産を機に育児休暇を取得
32歳】1年後に復職し、現在に至る

背景(ロープレ小説風)

「本日はどのようなご相談でいらっしゃいましたか?」

「私、現在、複合機メーカーの経営企画部に勤めているんですが、ちょっと理不尽なことがあるんです。実は、私先月から育児休暇明けで職場に戻ってきたんですけど、当初聞いていた話と違うことがありまして。
上司からは復職後もこれまでと同じ仕事をお願いするので、安心して休んでくれれば良いと聞いていたのに、いざ戻ってみると私の仕事は別の人が担当していて、私は全然違う仕事をさせられています。
これからどうしたらよいのか分からず相談に来ました」

「はい、たくさんお話しいただきありがとうございます。それではこれからいくつか気になることを質問させていただこうと思いますが、宜しいでしょうか」

「はい、お願いします」

「ありがとうございます。それではまず、どうしたよいのか分からないということについて、お聞かせいただけますか」

「うーん、このまま今の仕事を続けててもやる気が起きないなあと思って・・・」

「やる気が起きないんですね。それはどのようなことでしょうか」

「はい、今自分がやっている仕事も大事だというのは分かっているのですが、どうにも納得がいかなくて」

「冒頭でも理不尽なこととおっしゃっていましたが、どのあたりがそう感じるのでしょうか」

「だって、約束と違うじゃないですか。何だか上司に騙された気分です」

「約束と違う、騙されたと思われてるんですね。そのあたりのことを伺っても宜しいでしょうか」

「上司とは事前に綿密に打ち合わせも重ねて、引き継ぎもしっかりやったうえで育休を取得したんですけど、それが逆にいけなかったんですかね」

「逆にいけなかった」

内省シーン(回想シーンみたいな感じです)

野口「課長、ちょっと相談があるんですけど、宜しいでしょうか」

上司「ああ、例の件か、会議室も取ってあるから話そうか」

「ありがとうございます。それではお願いします」

会議室にて

「野口いつから取得する予定なんだ」

「はい、早ければ8月からにも」

「そうか。今日まで本当に頑張ってくれたからな。こっちはいつでもいいけど、引き継ぎとかどうする?」

「その件なんですが、以前課長に相談したあと、山根さんにはお願いしていて、今月中には何とか引き継ぎは終わりそうです」

「さすがだな。こちらも助かるよ。じゃあ、引き継ぎは問題ないとして、復職後はどうする?」

「どうする?いや、その件なら先日ご相談した通り、これまでの仕事に戻りたいと思ってますけど・・・」

「アレっ、そうだっけ。まあ、大丈夫。その点については俺が何とかするから。野口は安心して1年間しっかり休んでくれ」

「は、はい、お願いします」

現在の面談に戻る

「あの時、上司にちゃんと確認するべきだったとは思っていますけど、まさかこんなことになっているなんて」

「貴重なお話をありがとうございます。こんなことになっているとは」

「はい、引き継ぎをした山根さんが私が休みに入ったあと、しばらくして仕事を手放したくないと上司に相談したらしくて」

「そうでしたか。そのお話を聞いた時はどう思われましたか」

「はい、それで先ほどの話とつながるんですが、私が引き継ぎをしっかりし過ぎたのかなって」

「し過ぎた」

「山根さんは入社して3年目の若手社員だったんですが、それまでは自分の仕事に対してあまり乗り気ではなく、手を持て余しているようだったんです」

「持て余しているようだと」

「はい、それまでは与えられた仕事を淡々とこなしている感じで、自分が暇な時にも積極的に周囲の仕事を手伝うようなこともなかったんです」

「そういう山根さんをご覧になっていかがでしたか」

「はい、それでも私の後輩だし、これまでずっと気にかけていたので、今回のお休みの時に『せっかくだから、この機会に山根さんが違う仕事をすることで視点を変えてみては』と上司に相談したんです」

「上司の方はなんとおっしゃっていましたか」

「それが上司も気にはなっていたらしくて、私の提案に乗ってくれました」

「その時はどう思いましたか」

「あ、意外と周囲のことを見ているなとは思いました。それでそのあと早速、山根さんに打診してみたら、割とすぐに快諾してくれました」

「そうだったんですね。その後、引き継ぎをされたと」

「ええ、でもそれが今となっては間違いだったんじゃないかと思って」

「それが先ほどの『し過ぎた』につながるのでしょうか」

「はい、私もせっかくだからと自分のこれまでの知識と経験をフル動員して、真剣に仕事のことを話したんです。私も好きな仕事なんで、つい」

「お好きなお仕事なんですね。ところで今更で恐縮ですが、現在経営企画部ではどのようなお仕事をされているんですか」

「はい、主に業績関連の仕事ですね」

「業績関連というと」

「うちは複合機メーカーなんですけど、会社の経営方針を役員が決めるときの材料を集めて提案するって感じですかね」

「先ほどお仕事が好きとおっしゃっていましたが、どのようなところがお好きなんでしょうか」

「はい、判断材料を集める時にいろんな部署と連携するんですけど、その時の交渉、駆け引きというんですかね。意外と楽しいんですよ」

「交渉、駆け引きが楽しい」

「たとえば経理から財務諸表をもらう時に結構忙しい部署なので、タイミングをみたり、事前に根回ししたり、そういうことを考えている時は結構楽しいんですよね」

「お仕事については、好きや楽しいという思いがあるんですね」

「そうなんです。だから、つい熱を込めて山根さんに伝えていたら、山根さんに火が着いちゃったって感じなんですよ」

「そのことについては改めてどう思いますか」

「結果的に山根さんにとっても部にとっても良かったのかもしれません。でも自分のことを考えたら、何だか複雑な気持ちですね」

「複雑な思いなんですね。そのあたりをもう少し聞いても宜しいでしょうか」

「はい、結局私が今やっている仕事は前に山根さんがやっていた雑用みたいな仕事なんですけど、今思うと山根さんもこんな気持ちだったのかなって」

「こんな気持ち・・・ところで現在のお仕事についてもお聞きして宜しいでしょうか」

「今は、単なる雑用ですよ」

「雑用、差し支えなければ雑用というのは」

「うーん、何ていうんですかね。誰にでも出来る仕事というか、やる気が起きない仕事というか」

「そうなんですね。言える範囲で構わないのですが、誰にでも出来る、やる気が起きないお仕事というのは」

「・・・今私がやっているのはただの数字とデータの集計作業なんですよ」

「集計作業」

「以前は私が交渉して獲得した情報を山根さんに渡して、それを彼女が集計して、また私に戻してくれていた。つまりつなぎみたいな仕事です」

「つなぎみたいですか。重複するかもしれませんが、そのお仕事についてはどのように思われていますか」

「うーん、これまで仕事をつまらないと思ったことはないんですけど、正直・・・」

「正直」

「はい、何だかこの仕事が今度も続くなら、もう辞めちゃおうかなって」

「辞めちゃおう」

「元々会社、いや業界全体ですかね。先がないですからね」

「先がないというのは」

「今、世の中的にもペーパレス化とか、リモートワーク等で印刷する機会が減っているじゃないですか。クラウドサービスも充実してきて、改正電子帳簿保存法とかの影響もあって、どんどん需要が減っていますからね」

「そうなんですね。先がないということもありましたが、そのことについては改めてどのように思われますか」

「今は、産業・商業向けの印刷にシフトして、ITサービスの導入で何とか事業を維持しようと考えていると思いますが、それも限界はあると思います」

「そのように思われているんですね。貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございます」

「いえいえ、あくまでも私の一意見です。ご参考になるかは分かりませんけど」

「ところでこれまでお話しいただいたことは、どなたかにお話されていますか」

「うーん、誰かに話ししたかな。上司にも言えていないですしね」

「言えていない。それはどうしてでしょうか」

「だって、裏切られた気分です、なんて本人に言えないでしょう。だから今は1人で抱え込んでいますね」

「抱え込まれているんですね。今も裏切られたというお気持ちもありましたが、上司の方に対しては、どのように思われますか」

「まあ、いい人ではあるんですけどね」

「いい人、というのは」

「いつも話だけは聞いてくれて、何とかしようという気持ちも伝わってくるんですけど・・・」

「ですけど」

「詰めが甘いというか、ケアレスミスが多い方なので」

「そのことについてはどのように思われますか」

「まあ、忙しい人ですから、仕方はないと思いますが、今は私自身が自分のことで精一杯なのでそれどころではありません」

「それどころではないと思われいるんですね。他の方にお話はされておりますか」

「他に・・・あ、夫にはこの前少しだけ愚痴を言ったかな」

「どのようなことをお話されたんでしょうか」

おわり

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