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『聴けずのワカバ』(番外編)RPケース105「上野 徹也」さん

読了目安:約11分(全文4,422文字)※400文字/分で換算

 *キャリコン・技能士の学科・論述・面接試験対策を希望される方は

先日開催したライブ配信の相談者役ケース105「上野 徹也」さんの設定について、時系列と背景(ロープレ小説)をご紹介したいと思います。

以下にて、今回の設定をCCtとCLの逐語風にまとめております。実技試験対策にも有効だと思いますので、受験生の皆様ぜひご覧ください!

CL情報


対象のRP動画

時系列

【22歳】4年制大学卒業後、現在のカー用品の販売会社に就職(配属先はカー用品の店舗勤務)
30歳】地方にあるカー用品の別店舗に異動
32歳】店舗のリーダー職へ昇進(係長相当)
45歳】都内の店舗に異動し、店長職(課長職相当)へ昇格
50歳】本社の総務へ異動
54歳】先日、人事から役職定年制度の話を受ける

背景(ロープレ小説風)

「本日はどのようなご相談でいらっしゃいましたか?」

「私、今の会社に勤めて30年以上になるんですが、つい先日人事からある発表があって、その後ずっとモヤモヤしているんです。
その発表というのが「役職定年制度」の導入なんですけど、人事の話だと来年度から順次適応されるということで今回対象者が集められて、説明会があったんです。
詳細は個別に呼ばれて説明があるようなのですが、その時に聞いたことがどうも納得いかなくて・・・。
今回の役職定年がどうやら対象者の条件がふたつあるらしくて。ひとつが課長職以上の役者職者であること。もうひとつは対象年齢が55歳以上であること。
それを考えるとどうしてもモヤモヤしてしまいます。ひとりで考えていても結局答えが出ないので、いろいろ考えた結果、今日こちらに相談に来ました」

「はい、たくさんお話しいただきありがとうございます。それではこれからいくつか気になることを質問させていただこうと思いますが、宜しいでしょうか」

「はい、お願いします」

「ありがとうございます。それではまずは、モヤモヤしているというのはどのようなところでしょうか」

「はい、自分でもいろいろ考えてみたんですけど、やはり年齢のことなんででしょうね」

「年齢ですか・・・年齢というのは」

「はい、今回の制度導入が来年度からで対象者が55歳以上でしょう。それがどうにも納得いかないんですよね」

「納得いかない、冒頭でもおっしゃっていましたが、どのあたりが納得いかないのでしょうか」

「だって、私いま54歳ですよ。来年度って4月からになるんですけど、私ちょうど来年度から55歳になってしまいますからね」

「ちょうどなってしまう、そのことについてはどのようなお気持ちでしょうか」

「なんか、理不尽というか、ツイてないというか・・・」

「理不尽、ツイてない、というのは」

「何だかズルいじゃないですか。だって本年度定年を迎える役職者は逃げ切りですよ。私は55歳になった時にまるまる今回の制度のあおりを受けるわけですからね」

「あおりを受ける」

「なんでしょうね。私なりにこの会社には貢献してきたつもりですし、こんな目に遭うためにこれまで頑張ってきたわけじゃないって思ってしまいますね」

「これまで会社に貢献されてきて、頑張ってらっしゃったんですね」

「はい、今の総務の仕事だって、別にやりたくてやってきたわけじゃない。前職の人間が辞めた時に誰もやりたくないっていうから、私が引き受けたわけで・・・」

「そうなんですね。もし宜しければ当時のお話を伺っても宜しいでしょうか」

内省シーン(回想シーンみたいな感じです)

上野「え!?山本が急に辞めたって」

同期「ああ、何でも前から辞めたがってはいたみたいだな」

「・・・そうか確か山本、総務部だったな」

「ああ、あそこの課長職のポジションはさぞかしキツかっただろう」

「俺も山本から聞いてはいたけどな。あそこ部長がアレだもんな」

「ああ、あのパワハラを絵に描いたような部長だろ」

「そうだ。モラハラって言葉はあの部長から生まれたんじゃないかって言われてたもんな」

「ははは、今になってみれば笑い話だが、当人の山本にとってはキツかっただろうな」

「俺も異動した最初の頃はよく飲みに誘って、愚痴を聞いていたが、そのうち『忙しい』って断られるようになった」

「俺も同じだ。辞める時も何も話してくれなかったな」

「今考えたら、何か出来ることあったんじゃないかって申し訳なく思うよ」

「俺も同じ気持ちだが、それよりのっぴきならない事情があるらしいぜ」

「なんだよ、それは」

「実は、山本の後任が全然決まらないらしい。そりゃそうだ、あの部長の下で働くんだから。課長職はみんな断っているらしい」

「そうなのか、俺のところにはまだ話は来ていないが、時間の問題だな」

「何でも人事が切羽詰まっているらしく、係長のやつらにも昇進させてやるから異動するよう交渉しているらしい」

「必死だな。でもそれでも無理だろ。手を挙げるやつなんているのかよ」

「そうなんだよな。実は俺も一度打診はあったんだが、さすがに断ったぐらいだからな」

「俺のところに話が来たら・・・いやいや、100%即答で断るだろう」

現在の面談場面に戻る

「そうだったんですね。その後のこともお聞きしてよろしいでしょうか」

「それで後日人事から私の方に打診があって、いろいろ考えてみたんですけど、結局異動を引き受けることにしました」

「結果的に引き受けられたんですね。もしよければお引き受けになったことについて伺っても宜しいですか」

「はい、最初は断ろうと思ったんですけど、でもその時に部長の態度が問題で近いうちに異動するという話を聞いたんです」

「異動ですか、それを聞いた時はどのように思われましたか」

「もうこれは天啓だと思いましたね」

「天啓」

「これは山本の最後の仕事だったというか、山本が辞めたことで部長がその責任を問われることになったんですよ。これは山本が最後に我々同期に伝えたかったメッセージじゃないかと思って」

「メッセージ」

「よく山本と飲みに行っていた時に部長の愚痴が多かったですが、それでも山本は『部長も根は悪い人じゃない。きっと環境が変わればあの人も昔の頼れる先輩に戻るはずだ』って言っていましたね」

「そのお話を聞いた時はどう思われましたか」

「最初は部長に対するおべんちゃらだ、と思っていましたが、実は山本が新入社員のときの最初の上司が部長だったらしくて。
『その時に受けた恩は忘れない』って、いつも言っていましたからね」

「そうだったんですね。ところで上野さんが異動されたあと部長はどうされたんでしょうか」

「それが・・・人事の話と全然違って、今でもずっと私の上司ですよ」

「今でも」

「はい、現在私が課長職で部長はそのまま異動せずに残っていました」

「そうでしたか。そのことについてはどのように思われますか」

「いやあ、最初は正直、騙された!って思って、人事のことをうらんでいましたが、山本が辞めたあと部長がすっかり変わってしまって」

「当時は騙されたと思われたんですね。部長がすっかり変わったというのは」

「はい、部長も山本が急に辞めたのがよほどショックだったようで、人が変わったように頼れる上司になりましたよ」

「山本さんの一件で頼れる上司に、そのことについてはいかがでしょうか?」

「まあ、個人的には助かりましたね。だって、部長が居座るならパワハラ、モラハラは当たり前で次は私の番かと思っていましたからね」

「そのようなお気持ちだったんですね」

「自分でも今の環境に驚いていますが、今となっては総務の仕事も初めてだったんですけど、部長が懇切丁寧に教えてくれて助かりました」

「そうでしたか。ところで今更で恐縮ですが、今の総務のお仕事はどのようなことをされているのでしょうか」

「まあ、一言でいえば社内の何でも屋なんですけどね」

「何でも屋というのは」

「はい、例えば会議室の蛍光灯が切れたと言われれば交換にいくし、社内のイベントの企画とか、他の間接部門のヘルプとか、いろいろやってますね」

「様々なお仕事をされているんですね」

「まあ、メインは会社に関する雑務全般って感じなんですけど、うちはカー用品の会社だから自動車関係の市場調査したり、各店舗からの問い合わせに対応したり、幅広くやっていますね」

「幅広いお仕事をこなされているんですね。そのお仕事はされていていかがですか」

「いかが?そうですね。あまり考えたことないけど、やりがいはある仕事なんじゃないかな」

「やりがい。どんなところにやりがいを感じるのでしょうか」

「そうだなあ。本当にいろんな部署から問い合わせやお願いがあるし、仕事の領域も広いけど、何だか頼られるっていうのも悪くないなあって」

「頼られるのも悪くないというのは」

「私、今の総務部に来る前は店舗で店長やってたんですよ。その時は頼りっぱなしでしたからね」

「そうでしたか。店長のときはいかがでしたか」

「そうですね。店長も楽しかったけど、今となっては総務の仕事の方がいいね」

「店長のお仕事は楽しかったんですね。でも総務の方がいいと」

「うーん、店長の時は接客でいろんなお客さんのニーズを聞いて、商品紹介したり、店舗のマネジメントも割りと楽しかったんですけど、今の仕事の方が会社に貢献しているって感じが強いですからね」

「先ほども貢献というお言葉がありましたが、上野さんにとって貢献とはどのようなものでしょうか」

「うーん、なんだろうな。自分にとっては当たり前という感覚だけど、それぞれ従業員には役割ってものがあるじゃないですか。私はその会社から与えられた役割をこなしているだけで、それが貢献するということなのかと」

「役割ですか・・・。すみません。ここで少し冒頭に戻らせていただきますが、貢献してきた会社から今回役職定年の話を受けたことについては、改めていかがでしょうか」

「・・・そのことを考えるとやはり納得いかないってことになってしまいますね」

「繰り返しになるかもしれませんが、納得いかないということについて、改めてお聞かせいただけますか」

「なんでしょうね。この持って行き場のない気持ち、うまく伝えられませんが、納得いかないとモヤモヤしているのは事実ですね」

「今のやはり納得いかず、モヤモヤされていると。ところでそのお気持ちについては、どなたかにお話されていますか」

「そうですね。お話か・・・家族にもまだ言ってないからな・・・そういえば前に一度部長には話したかな」

「その時はどのようなお話をされたのでしょうか」

「確か立ち話で『部長は今回の話は知ってたんですか』って」

「その時に部長はなんとおっしゃっていましたか」

「知っていたと。ただ、誰にも言うなという指示だったので、お前にも伝えられずにすまなかったと」

「それを聞いた時はどのように思われましたか」

「部長の立場も分かりますから、逆に気遣ってくれていたことにありがたいと思いましたね」

おわり

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