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支援する人を、支援したい|わたしのケース

わたしが初めてカウンセリングを行ったのは、東日本大震災から3〜4年後のことでした。
相談者は病院の職員の方で、津波で崩壊した病院の事務をされていたMさんす。業務に忙殺され、身体に不調も現れ、精神的にも追い込まれていて、”ワラにもすがる思い”で相談に来られた方でした。

60分の間、ずっと多忙を極める業務と、要請しても応援が来ない現状と、自分の身体に現れる不調について話てくれました。わたしは、ただただその方の置かれた状況に圧倒されて、お話を聞いていました。ひととおり話し終えてMさんは、
「あのう、カウンセリングって、何かアドバイスをもらえるんじゃないんですか?」
と聞いてきました。
「わたしにはとてもアドバイスはできません。お話を聞かせてもらい、ああ、Mさんはワラにもすがる思いなんだなと、理解しようとするだけです。」
すると、
「カウンセリングって、そういうもんなんですね… 初めてなんで、なにもわからないで来ました… 」「 でもそうか、自分は誰かに助けを求めていたのか…」
とつぶやいてMさんは帰っていかれました。

わたしたちが出来るのは、傾聴して寄り添うだけ、と教わって臨んだ初めてのカウンセリングです。60分話したMさんに、「そういうもんなんですね」と言われて、自分は何しにきたんだと、言いようのない無力感に襲われたのを覚えています。

あれから数年たって、今ならわたしはMさんになんて言えるだろうかと考えてみます。でも、やっぱり「ワラにもすがる思いなんですね」としか言えない自分です。いや、こうひと言、付け加えるかも。
「こんなMさんの頑張りがあるから、みんな安心して病院に来ることができるんですね」

産業カウンセラー協会には、3.11のあと、消防、専門的な業務で復旧に当たる公務員、病院の看護師など、被災した方々と直接向き合って仕事をされている方の巡回相談の依頼が増えました。

このように、直接被災者などの要支援者と向き合って仕事をされる方を、エッセンシャルワーカーと呼んだりするそうです。このエッセンシャルワーカーの支援の必要性についてさかんに言われるようになったのは、東日本大震災以降のことです。

新型コロナウィルスという未知の脅威と世界が戦っているいます。医療関係者へ感謝とエールの気持ちを込めて拍手をおくる、「フライデー・オベーション」が話題になり、共感が世界中に広がりました。

今、行政機関で各種給付金や支援制度の相談窓口で働いている人たちの負担が激増していると、 NHKがニュースで報じていました。こういった、窓口で相談を担っている人たちの苦労は、医療関係者の方々と比べてあまり取り上げられることがないようです。煩雑な手続きのせいで苦情をもらうことが多く、その割には表立った感謝は少ない。

こんなところにも、わたしたちの世界を支えて戦ってくれている戦士がいるんですね。

わたしのカウンセラーとしての支援の第一歩が、「支援する人を支援する」だったので、これからも、わたしは支援する人の支援を続けていきたい、と思うのでした。

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