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「挑戦者インタビュー Vol.1」吉田 敦さん(Alleman Hall&Tuttle LLP Senior Counsel・元Microsoft米国本社 IPライセンス・ディレクター)


<登場人物>
吉田敦さん
Alleman Hall&Tuttle LLP Senior Counsel
元Microsoft米国本社 IPライセンス・ディレクター

橋本尚弥
CAREAR LLCの代表

古田将章
CAREAR LLCのインタビュアー



古田:
当時、唯一の日本人としてマイクロソフト本社法務・知的財産部に勤めることになった経緯について教えてください。


吉田さん:
日本生まれ、日本育ちなのですが、大学生ぐらいから漠然と日本を出て、海外で働くことを望んでいました。

その為、日本の大学時代に休学をし、カナダの大学へ2年間留学しました。そのまま北米で就職を希望しましたが良い機会が無く、日本へ帰国しました。

帰国後、理系分野の知識と留学経験を活かしたいと考え、ソニー株式会社(知的財産部)に入社し、特許の仕事に従事しました。

当時ソニーはパソコン事業、ゲーム事業をはじめ業績は絶好調だったのですが、3年目くらいからでしょうか、海外での仕事・チャレンジを求めて転職を考えるようになりました。

ソニーでもう少し我慢すれば、海外赴任等のチャンスはあったと思いますが、いつ来るかわからないチャンスを待つことができませんでした。

その当時、ソニーをやめる新人は珍しく、家族も「せっかく入社したのに」と否定的でした。

しかし、少し、浅はかな大手外資への憧れ、そしてマイクロソフトが日本でXboxゲーム事業をローンチするタイミングだったこともあり、マイクロソフトへ転職することを選択しました。

しかし、結果としては大失敗でした。

Xbox事業は日本でうまくいかず、当然知財の仕事もなく、転職1年後には再度、転職活動をするはめになったのです。

幸いにも(ソニーの経歴のおかげで!)、日本企業からそれなりの職位と年収でオファーをいただくことができた矢先に、仲良くなったマイクロソフト本社の弁護士から「米国本社へ来て私のアシスタントをやらないか?」との誘いをいただきました。

しかしながら、マイクロソフト本社での仕事の内容は、自分のそれまでの職位・経験に見合うものではなく(ゼロからやり直し)とても悩みました。

この時に、「どちらが先々、選択できない選択肢か」ということを考え、日本企業への転職は後でも選択でき、米国のトップ企業本社で働くチャンスは今しか選択できないと思いリスクをとって米国で移住・働くことにしました。


古田:
リスクをとってまで吉田さんを米国へ向かわせたものは何でしょうか?


吉田さん:
なぜでしょう。今振り返ると、心・体の中に、漠然と海外で働きたい!という抑えきれない感情があり、それを素直に行動に移しただけですね。

また、日本では何となく自分を守ってしまい、なぜか米国の方が自分らしくいられるように感じていました。

米国にいると自分は弱いと諦めて脱力・リラックスできるのですが、日本にいると、プライドもなかなか捨てられず、自分らしくなくなってしまい、窮屈さを感じていました。

これも後付けになってしまうかもしれませんが、本能的に、競い合う相手が少ないフィールド・分母を求めて行動したのかもしれません。


古田:
実際に米国で働きはじめていかがでしたか?


吉田さん:
本当に新卒時にやっていた初歩的な仕事からスタートしました(笑)。

そこから一つずつ結果を出し、信頼を積み重ね、同時にロースクールに通い弁護士資格も取得しました。マイクロソフト米国本社で働く数少ない日本人として、知財を通じて日本企業と米国法人の間に立って橋渡しをしたいという思いの下、知財・特許ライセンスの業務に励みました。

米国企業は成果を厳しく求められ、1年1年勝負のような感覚があり、ひたすらインプットとアウトプットを繰り返していたら、あっという間に17年が経過していました。


古田:
特に印象に残っているお仕事を教えてください。


吉田さん:
『マイクロソフトを変革した知財戦略』の書籍でも触れて頂いていますが、マイクロソフトがはじめて日本の大手IT企業との知財分野での提携を結んだ交渉ですね。

米国チームと日本企業チームの間に入って1つ1つ両者の溝を埋めていき、信頼関係を構築し提携に至ったときは感無量でした。

この交渉で、自分の強み・役割を理解し、米国企業の知財部でやっていく自信を得ることができました。


古田:
マイクロソフト知財部で活躍なされていましたが、なぜ現職(Alleman Hall Creasman&Tuttle LLP)へ転職をされたのですか?


吉田さん:
キャリアの最後は色んな日本企業を知財面でサポートしたいという思いもありました。

また、米国ではローファームで経験を積んだ後、弁護士として活躍することが一般的である中で、私はローファームでの経験がなく、いつかローファームで修行したいという思いもありました。

そんなときに、2019年に前職の会社の知財戦略の転換もあり、現在のIP専門の法律事務所である現職(Alleman Hall&Tuttle LLP)に転職しました。

今の事務所は、多くの日本の会社およびマイクロソフトの特許出願を代理しており、とてもしっくりきています。


古田:
これまでの転職において、弊社の橋本はお役に立てていないのですね(笑)


吉田さん:
私がマイクロソフト本社に勤めている時に、橋本さんとは東京駅のホテルのラウンジで初めてお会いして以来のお付き合いですが、結果として、転職において橋本さんにお世話になることはなかったです。

ですが、非常に魅力的な複数のポジションを私のために様々な日本の企業から引き出してくれました。

橋本さんの立場に立つと、裏で色々とご尽力もされたでしょうから、成約させたいと考えて行動して然るべきですが、橋本さんは全くプッシュをしませんでした。

いつも魅力的なご提案を頂き、私の話をじっくりと聞いてくれ、選択は私に委ね、その選択を心から尊重してくれました。

ですが、橋本さん、全く成果に結びつかず、ごめんなさい(笑)。


古田:
人財紹介というビジネスモデルが成功報酬型であることを鑑みると、プッシュしたくなるのがエージェントの性(さが)ですが、橋本は当時どのような考えの下、吉田さんの支援をされていたのですか?

橋本:
まず、知的財産領域にて転職・採用支援をさせていただいて10年弱になりますが、吉田さんのようなご経歴の方は未だお会いしたことがありません。

先ほど吉田さんから話があった通り、日本企業と米国企業の橋渡し役を担える唯一無二の存在です。

大袈裟に聞こえるかもしれませんが、日本の宝だと思いました。

そのような方を自分の私利私欲の為にプッシュをするなんて、それこそ非国民です(笑)。

吉田さんのキャリアにおける選択の基準は、わかりやすいメリット、例えば「年収が高い」、「職位が高い」、「将来の転職時に有利になる」等ではなく、「〇〇をやりたい」、「〇〇をしたい」という、いわばワクワクするかどうかです。

このような基準に従って選択することは簡単に見えて難しい。日本社会においては尚更です。

だからこそ、自分の気持ちに素直に向き合っている吉田さんを目の当たりにして、その思いを実現してほしい、その結果、一事例ではあるものの、脱平均社会に向けた一助になるのではないかと考え支援をしていました。

吉田さん:
自分の気持ちに素直に向き合っている、本当そうですね。

橋本さんは私以上に私のことを理解し、キャリアのことを考えてくれています。

ですから、日本に帰国する際には私の知る知財の友人・知り合いと引き合わせたくて、橋本さんには飲み会にも何度も来ていただいています。

古田:
私も人材紹介業に携わる者としてお聞きしたいのですが、なぜ橋本をそんなに紹介したいと思われるのでしょうか?


吉田さん:
人柄、知財ネットワーク、そして傾聴力です。

これまで複数名のエージェントの方とお話をしましたが、橋本さんほど知財に詳しく、知財ネットワークをお持ちの方はおられませんでした。

また転職/採用に限らず、ステークホルダーの利益や問題解決を考え、行動されています。

例えば私は現職にて日本企業の法的支援をしているのですが、米国にて法的課題を抱えている企業の決裁者の方を善意でお繋ぎいただいています。

傾聴力につきましては、先ほどお話したことと重複しますが、自分のビジネスがあるにも関わらず、私たちのキャリアを一番に考えて、提案してくれる。そこが私の仲間からも好評で、橋本ファンがいっぱいいます。


古田:
今後の橋本との関係性やお付き合いについて期待することはありますか?


吉田さん:
将来は橋本さんの会社を通じて、知財で将来活躍する若い人たちのチャレンジを後押しするお手伝いができればと思っています。

これからの知財を担う若い方々にもっともっと挑戦してほしいという思いが根底にあり、近い将来、橋本さんの会社を通して何等かの形で応援できればと考えています。


古田:
橋本は今後吉田さんとのお付き合いで理想や期待することはありますか?


橋本:
ふたつあります。

吉田さんが掲げている「日本と海外を繋ぐ架け橋になる」というミッションを知財業界で実現できる人財は、極めて希少です。

一方、内弁慶な日本企業はまだまだ多いので、吉田さんとのご縁を紡ぐことで、日本の産業発展に貢献したいというのがひとつ。

もうひとつは、先ほど吉田さんから知財業界における若手の支援/応援といったお話がありましたが、お互いの「〇〇したい」を掛け合わせることで新たなテーマが見つかり、一緒にお仕事ができたら嬉しいです。


古田:
吉田さん、最後にこの記事を見ている挑戦者へのメッセージをお願いします。

吉田さん:
「これをやりたいかも」と思われたら、今は色々な考え方、やり方があるので、既成概念に囚われず、周りを気にせず、迷わず挑戦してほしいですね。

最悪のケース含めて色々なリスクなどを考えがちだと思いますが、飛び込んだ後に試行錯誤しながら変化に対応して、さらなる成長ができると思いますので、ぜひ挑戦してほしいです。

また、チャンスを待たず、チャンスを自ら創り、つかみ取りにいってほしいです!

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