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「鬼滅の刃」の新しさ 1巻感想雑記

*ネタバレ注意*

1話

竈門家の長男炭治郎は、母と兄妹に見送られて町に炭を売りに行く。
「暮らしは楽じゃないけど幸せだな」と炭治郎は心のなかで呟く。

竈門家の家族はみんなとても仲が良いのが伝わってくる。

暮らしは楽じゃないけど幸せだな………しあわせ????

個人的にこの台詞はちょっと衝撃的だった。
炭治郎の年齢はググったらなんと13歳だそうで。
齢(よわい)13で既に幸せを悟っている炭治郎、めちゃくちゃ強くないですか????(精神的に)
13歳なんて「自分はなんで生きるのか?」って必死に探ってる最中じゃないですか、思春期真っ只中じゃないですか。はぁ?幸せってなんですか???

ぼくは炭治郎に謎の敗北感を覚えた。
完敗だ。

というか、こんなに家族愛に恵まれた、バトル漫画の主人公がいまだかつて存在しただろうか。
だいたい両親がいなかったり、悲しみを抱えて生きている主人公ばかりだ。
しかし炭治郎は「温かい家族との記憶」を基盤として心がものすごく安定していると感じる。「愛する家族」のために強くなろうとする。
これはちょっと斬新なのではないだろうか。(ぼくが知らないだけかもしれないが)

炭治郎が町から家に戻ると家族は殺されていた。

今まで少年ジャンプで「死」というものをここまではっきりと、鮮烈に描いたのは鬼滅の刃が初めてではないだろうか。(ぼくが知らないだけかもしれないが)

これまでの少年ジャンプの主人公たちは辛いことを過去の出来事として語ってきた。
しかし鬼滅の刃の「死」がここまで鮮烈に感じられるのは現在進行形で今まさに主人公が大切な人の死に直面しているからだ。
そして読んでいるぼくらも炭治郎と同じ瞬間に「死」を目撃し、同じ時間を共有している。
こんなに重い話を第1話にしてしまうのがすごい。

禰豆子をおんぶして町へ向かう炭治郎。寒さと雪が体力を奪っていく。
「凍てついた空気で肺が痛い 前に進め もっと早く足を動かせ」

いちいち比較ばかりしてしまうのだが、今までの少年ジャンプでは描かれてこなかった「生身の人間」という感覚を、鬼滅の刃では強く濃く描いている。
それまで肉体的に「痛み」や「持久力」のつらさ、はたまた「死」までもがフィクションとして極力省かれてきた感じがするのだが、鬼滅の刃ではぼくらと同じ生身の人間として痛みも感じるし、長く歩いていれば筋肉も辛くなってくるし、大切な人が突然死んでしまったことの絶望感などなどとても丁寧に表現されていて妙な現実味がある。
そういう、ぼくらと同じ感覚を炭治郎も持っている、同じ世界線で生きていると思わせてくれるところが鬼滅の刃の新しさだ。

途中、禰豆子が突然鬼として覚醒してしまう。炭治郎が「頑張れ 鬼なんかになるな」と禰豆子に言うと、禰豆子は大粒の涙を流す。

このシーンは涙が出てしまった。頑張れ、って言葉はあんまり好きではなかったんだけど、炭治郎が言うとなんだか良い言葉だなと思ってしまう。
涙を流したとき、禰豆子は鬼舞辻の「呪い」を解いたのではないかとぼくは思っている。

突然空から剣士がやってきて、禰豆子を抱えながら間一髪で斬撃をかわす炭治郎。

炭治郎の束ねていた髪を斬られてしまうシーンが好きだ。(好きというと語弊があるが…)ほかのアニメでもよく描かれる演出である。
身体の一部を失うとき、これからその人に起こり得る出来事によって精神的にも何かを失う、あるいはリミッターが外れる、ということを予感させる。
炭治郎はきっとこのあと大きく変化する。

「生殺与奪の権を他人に握らせるな」

「生殺与奪の権~」の一連の義勇の叱責は、鬼滅の刃において通奏低音のようにずっと鳴り響いている。鬼滅の刃のテーマそのものではないだろうか。
「善逸はなぜ箱を庇ったのか」でも書いているのでそちらを見ていただければと思う。

絶望する炭治郎に心のなかで義勇は話しかける。
「俺があと半日早く来ていればお前の家族は死んでいなかったかもしれない」

義勇は今すぐにでも禰豆子を殺すことができたはずだ。でも殺さなかった。
義勇は後悔しているのだ。もっと早く来ていれば炭治郎が絶望することもなかった、と。
炭治郎に対する同情ももちろんあっただろうが、多分罪滅ぼしの気持ちもあったのではないだろうか。だからこそ炭治郎を叱責したし、守る覚悟があるかを試そうとした。そして鱗滝を紹介してくれた。あと気を失った炭治郎が目を覚ますまで待っていてくれた。

義勇めちゃくちゃ良い人だ…………。

2巻で判明するのだが炭治郎の家族を殺したのは鬼舞辻だったので、たとえ義勇が半日早く来ていても炭治郎の家族を助けることはできなかっただろう…。

炭治郎が目を覚ますと禰豆子は竹を噛まされている。

義勇が着けさせたと思われるが、竹に関するやりとりは一切無い。

日本最古の物語、「かぐや姫」が生まれた時代、「竹取」にかかわる職業は身分がとても高かった。竹は神聖な植物とされ、帝などの高貴な身分の人間しか使うことを許されていなかった。(国語の授業で聞いたうろ覚えの情報です)
古来より竹は邪悪を払うと信じられてきた。
それに竹の油はよく燃えるそうなので、禰豆子の血鬼術が燃えるのもそういうことなのかもしれない。
2話では炭治郎が竹と籠を買って、竹で籠を編んで補強している。
炭治郎が竹取の翁に見えてくる。

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