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[10分連載小説]CARD MASTER-秘密結社の始動とカード・ロワイヤル-

あらすじ

2030年──国際連合を、ベースとした、国家を、デジタルで、緩やかに繋ぐ、デジタル世界政府が、発足した。
2040年──それから10年後。デジタル世界政府を、自分たちの、望むままに、再構築しようとする者たちが、動き出そうとしてた。
2030年──公正取引委員会直轄の、女性の、カジノ・賭博分野審議官カードマスター、ウェヌスタは、同僚の、男性の、カジノ・賭博分野審議官カードマスター、ヒエムスと共に、観光都市、ルードゥスを、訪れていたが...

カバー写真

左から、『絵柄スート』の組織、カードの騎士カードエース、ムーヌス
カードの紳士カードジャック、パリドゥス
カードの女王カードクイーン、ヴァニタス
⁇?(謎の人物)

CARD MASTER-秘密結社の始動とカード・ロワイヤル-

2030年──とあるVRのプール。日差しが、眩しい。と言ってもVR空間の、デジタルの、日差しだが。サイドチェアに、1人の、男が、横になっている。男の、名前は、ヒエムス・インスラ・ウェルテックス。男の、横で、世界各国の、ニュース番組が見れる、global news®︎グローバルニュースで、ヒエムスたちの、暮らす、島国ソルの、国営放送が、流れている。
ニュースキャスターが、語り出す。
「本当の、21世紀の始まりです。本日、デジタル世界政府が発足しました。新しい人類史の、始まりです。」
デジタル世界政府。2020年代の、3度目の、世界大戦の末、各国は、国家を残したまま、デジタルで、緩やかに、繋がる、世界統治機構を、目指した。
今日が、その、発足の日だ。デジタル世界政府が、始まる。
デジタル世界政府は、国際連合を、ベースに、(i)総会、(ii)安全保障理事会、(iii)経済社会理事会、(iv)司法裁判所、(v)事務局、(vi)部門で、構成され、国家問題を、解決する。
(i)総会は、補助機関/軍縮委員会/人権理事会/国際法委員会/合同監査団/主要委員会/常設委員会及びアドホック組織と、
組織/計画と基金/開発計画/資本開発基金/ボランティア計画/環境計画/人口基金/人間居住計画/児童基金/食糧計画に、
調査及び研修所/軍縮研究所/訓練調査研究所/システムスタッフカレッジに加え、
その他機関/貿易センター/貿易開発会議/難民高等弁務官事務所/プロジェクトサービス機関/ジェンダー平等と女性のエンパワーメントのための機関を始め、
関連機関/包括的核実験禁止条約機関準備委員会/原子力機関/刑事裁判所/移住機関/海底機構/海洋法裁判所/化学兵器禁止機関/貿易機関
そして、平和構築委員会/持続可能な開発に関するハイレベル政治フォーラムで、構成される。

(ii)安全保障理事会は、補助機関/テロ対策委員会/刑事裁判所残余メカニズム/軍事参謀委員会/平和維持活動政治ミッション/制裁委員会/常設委員会及びアドホック組織で、構成される。
(iii)経済社会理事会は、機能委員会/犯罪防止刑事司法委員会/麻薬委員会/人口開発委員会/開発のための科学技術委員会/社会開発委員会/統計委員会/女性の地位委員会/森林フォーラムと、
地域委員会/その他の機関/開発政策委員会/行政専門家委員会/非政府組織委員会/先住民問題に関する常設フォーラム/地理学的名称に関する専門家グループ/グローバル地理空間情報管理に関する専門家委員会
調査及び研修所/地域犯罪司法研究所/社会開発研究所と共に、
専門機関/食糧農業機関/民間航空機関/農業開発基金/労働機関/通貨基金/海事機関/電気通信連合/教育科学文化機関/工業開発機関/観光機関/郵便連合/保健機関/知的所有権機関/気象機関/銀行グループ/復興開発銀行/開発協会/金融公社で、構成される。
(iv)司法裁判所は、最高裁判所/下級裁判所で、構成される。
(v)事務局は、各部局及び各事務所/開発調整室/経済社会局/総会会議管理局/グローバルコミュニケーション局/管理戦略政策コンプライアンス局/オペレーション支援局を始め、
平和活動局/政治平和構築局/安全保安局/人道問題調整事務所/テロ対策室/軍縮部/人権高等弁務官事務所/内部監査室/法務局/防災機関で、構成される。
(vi)部門は、世界各国/海外事務所で、構成される。
やや、興奮した雰囲気で、global news®︎グローバルニュースの、キャスターが、続ける。デジタル世界政府の、発足に、深く、感銘を受けている、様だった。
「3度の、世界大戦を超えて、今、人類は1つに...」
ペン型スマートフォンの、pen phone®︎ペンフォンで、着信が、入った。ヒエムスの、娘からだ。
「パパ。ママが、夕ご飯、出来たって。」

「教えてくれて、有難う。school®︎スクールの、宿題は、終わったのかな?」
school®︎は、2020年代に、登場した、デジタル交換日記や、グループ読み聞かせが出来る、オンライン授業アプリだ。
「終わったよ。放課後教師アフターティーチャーの、ヴァニタス先生が、smart paper®︎スマートペーパーで、飛ぶ鶴を、折ってくれたの。とても、楽しかったよ。」
「それは、良かった。今行くよ──マレ。」
2038年──フォンス郊外。
「危ない!ぶつかる!!」
無人運転車、smart track®︎スマートトラックの車載AIが、声を上げた。緊迫した、空気が、周囲を、包む。
14歳の、少女、マレが、車に、接触した。車載AIが、動揺した、面持ちで、答える。
「猫を、追いかけていたのか。大変だ。」
マレと、猫が、車道に、横たわってり、ぐったりしていた。ピクリとも、動かない。
車載AIが、救急車を呼ぶ。車載AIには、こうした、緊急時の、自動通報機能が、備わっていた。
交通事故だった。

2040年──海洋都市 臨海副都心オーケアヌス。審議院。此処に、公正取引委員会の、本部がある。公正取引委員会の、審判長と、審判員が、会議を、開いている。
「先日のenergy社の件、例の女が、確認されている。秘密結社、『絵柄スート』の、最重要人物の、1人だ。」
「執行官、ヴァニタスか。ついに、奴らが、再び、動き出したか。」
審判長が、神妙な、面持ちで、厳かに、答える。
「4人の、カジノ・賭博分野審議官カードマスターを、直ぐに、集結させろ。緊急会議を、開く。事態は、切迫している。10年の、月日を経て、奴らは、動き出そうとしている。」
同時刻──観光都市ルードゥス風の、VR空間で、1人の、男が、board game®︎のチェスを、見つめている。meeting®︎を、起動する。meeting®︎は、2020年代に、始まった、VR空間で、ミーティングを行うアプリだ。
男が、静かに、語り始める。
「時は、満ちた。我が、秘密結社、『絵柄スート』の者を、全員、集結させろ。目的は、只一つ。経済崩壊を、起こし、世界恐慌を、起こす事で、国民の不満を、政府に向け、4度目の、世界大戦の末、我らが、望む形に、世界政府の、再構築を、図る。」
ある者が、問いかける。
「殿下、消滅する国は?」
殿下、と呼ばれる男が、回答する。
「前回は、ベルルムで、計画が未遂に終わった。今回は、ターゲットを変える。消滅する国、グラウンドゼロは、我々が、10年前に、結成式を行った、島国ソルだ。」

2030年──島国ソルの、西側に、位置する、観光都市、ルードゥス。最大手ホスピタリティ企業、hotelホテル社の、レジャーホテル、casino hotel®︎カジノホテル
この国最大の、公営カジノ、public casino®︎と直結したラグジュアリーホテルの、一室。
「殿下、全員揃っております。そろそろ宜しいかと。」
casino hotel®︎カジノホテル最大の宴会場。地上50階の、ロイヤルルーム。殿下、と呼ばれる男が、会合の、始まりを、告げ、集まった、50人余りの、人々に、語りかける。
「『絵柄スート』スートナンバー♠︎の、1から10。西の、超大国、ベルルム地域、担当達。」
「『絵柄スート』スートナンバー❤︎の、1から10。東の、超大国、ドラコー地域、担当達。」
「『絵柄スート』スートナンバー♦︎の、1から10。北の、超大国、グラキエース地域、担当達。」
「『絵柄スート』スートナンバー♣︎の、1から10。我が、政治国家、レース・プブリカエ地域、担当達。」
カードの騎士カードエース。」
カードの紳士カードジャック。」
カードの女王カードクイーン。」
「よく、集まってくれた。我が秘密結社、『絵柄スート』の、結成式だ。」

公営カジノpublic casino®︎パブリックカジノエントランス。2人の、男女が、会話をしながら、歩いている。男が、しみじみと、答える。
「君の、休暇に、付き合うとはね。」
未だ、30代半ばの、女性の、公正取引委員会のカジノ・賭博分野審議官カードマスター、ウェヌスタは、ナチュラルストレートの、ロングヘアーを掻き上げながら、男に返答する。
「ヒエムス、私が掴んだ情報では、"勝負師"アウデンティア、"番人"クーストース等世界的ギャンブラーが、今夜、カジノに、来店している。奇妙だわ。」
「集まりすぎだね。風の噂では、休暇中の、ベルルム宰相、パリドゥスも、来ているらしい。君の直感は、正しい。」
男は、カジノ・賭博分野審議官カードマスター、ヒエムス。ウェヌスタの、同僚の、30代の、カードマスターだ。長髪を後ろに結んだ、凛とした男だ。ウェヌスタと、ヒエムスの、付き合いは、長い。マレだけで無く、ウェヌスタも、学生時代、バーで、働いて居た。未だ、大学生だった、ヒエムスは、ウェヌスタが、働く、バーに、かつての、彼女と、訪れた事があった。ウェヌスタは、当時から師事して居た、カジノ・賭博分野審議官カードマスターパッシオ、仕込みの、カードテクニックを、有しており、ヒエムスは、ウェヌスタから、カードテクニックを、学んだ。性別を超え、2人は、固い友情で、結ばれて居る。ウェヌスタが、ヒエムスに、依頼する。
「私は、casino hotel®︎カジノホテルの来客リストを、洗う。貴方は、public casino®︎パブリックカジノに"勝負師"や"番人"が居ないか、探して。」
地上50階、ロイヤルルーム。会合、終盤。殿下、と呼ばれる男に、部下が、伝達する。
「殿下、邪魔者の、ソルの、公正取引委員会の、カジノ・賭博分野審議官カードマスターが、到着したとの情報が、有ります。」
カードの女王カードクイーンと、呼ばれる女が、声を出し、席を立つ。
「私が、時間を稼ぎます。殿下、その間に、ご退却を。」
「私たちも、手を貸しましょう。目当ては、入国リストにあった、私たち、ギャンブラーの名前でしょう。」

"勝負師"アウデンティアと、"番人"クーストースが声を上げる。殿下と、呼ばれる男が、返答する。
「分かった。カードの女王と、♠︎5と、♠︎10を残し、他の者は、退却しろ。会合は、終了だ。」
殿下、と呼ばれる男が、席を、後にする。
casino hotel®︎カジノホテルの、受付で、ウェヌスタが、来客を、調べる。
「公正取引委員会の審議官、ウェヌスタ・レケンス・スプレンディドゥスです。滞在者リストを、見せて下さい。」
「デジタルパスポートは、有りますか?」
「手のひら静脈認証で。」
ウェヌスタが、滞在者リストを、見る。信じられないほどの、ビッグネームが、並んでいた。ウェヌスタが、息を、飲む。
「これは...」
public casino®︎パブリックカジノの、VIPルームを、歩いている、ヒエムスに、ウェヌスタからスマートウェアラブル、ear phone®︎イヤーフォンで、通信が入る。
「何か、分かったか?」
「各国の王族、貴族、政治家、大富豪や、大物達が、今日、このホテルに、一時滞在、している。私は、宴会場の、50階へ、向かうわ。」

エレベーターホールで、ウェヌスタが、エレベーターを、待つ。到着した、リニアエレベーター電磁式高速エレベーター、linear elevator®︎リニアエレベーターから出て来たのは、意外な、人物だった。
カールした癖毛を、目の上で切り揃え、ポニーテールにしている、20代半ばの、ベルルムの諜報部員エージェント、執行官、ヴァニタスだった。ウェヌスタが、驚き、声をかける。
「貴方は、ベルルムの、執行官、ヴァニタス。」
「あら、カジノ・賭博分野審議官カードマスター、ウェヌスタ、何用で?」
「各国の、大物が、このホテルに、短期滞在している件について、調べているの。」
「奇遇ね。私もよ。教えてあげても良いけど、一つ、条件が、あるの。」
「条件?」
「私が、この国の、カジノ・賭博分野審議官カードマスターに通用するか、知りたいの。私と、カードバトルしない?」
「ベルルムの、天才少女と、呼ばれた、貴方と?お引き受け、できないわ。」
ヴァニタスは、未だ、10代の頃に、ベルルムの名だたるカジノを壊滅させ、天才少女と、呼ばれていた。少女のような、大きな瞳をした、ヴァニタスが、挑発的な、問いかけを、する。
「逃げるの?カジノ・賭博分野審議官カードマスターの名が、廃るわよ。」
「逃げる」という言葉に、ウェヌスタは、引っかかった。ウェヌスタが、宣言する。

「私は、人生で、逃げたことはない。そんなに、白黒はっきりさせたいならば、相手になるわ。」
「なら、public casino®︎パブリックカジノに、行きましょう。」
ヴァニタスとウェヌスタは、public casino®︎パブリックカジノに入店する。監視カメラが、2人を見つける。
public casino®︎パブリックカジノの支配人が、ホログラフィック3D映像、holographic display®︎ホログラフィックディスプレイで、現れ、アナウンスをする。
「"元天才少女"、ベルルムの、執行官、ヴァニタスと、カジノ・賭博分野審議官カードマスター、ウェヌスタの、来場です。」
大量のオーディエンスが、集まり、holographic display®︎ホログラフィックディスプレイでも、沢山のホログラムの観客が、2人を囲む。ウェヌスタが、戸惑い気味に、口にする。
「派手ね。」
ヴァニタスが、楽しげに、話す。
「派手なのは、良いことよ。始めましょう。」
世界的にポーカーが、カードの代名詞と、なっていた。1 on 1の、カード対戦と言えば、超大国ベルルムでも、島国ソルでも、ポーカーだ。
支配人が、アナウンスを、続ける。public casino®︎パブリックカジノ、中央の、holographic screen®︎ホログラフィックスクリーンに、映像が、流れる。
「ゲームは、ギャンブルの王道、ポーカーです。テクニック、を使ったカードと言えば、ポーカー。ここで皆さんに、ルールを、説明しましょう。」

「使用カードは、ジョーカーを除く、52枚、チップ総額は、各1,000デジタルポイント。」
「この52枚から5枚を拾い、強い役を揃えた方が各ゲームの勝ち。先に相手のチップを0にした方が、最終的な勝者、となります。」
「役は強い順に、(i)から(ix)まで、9種類あります。同じ役ではA 、K 、Q、J、10、9、8、7、6、5、4、3、2の順に、強さが違います。」
「(i)ロイヤルフラッシュ。最強の役です。マークが同じで、数字が1番高い順位で揃えた役です。(例 ❤︎10❤︎J❤︎Q❤︎K❤︎A)」
「(ii)ストレートフラッシュ。2番目に強い役です。マークが同じで、数字が順番に並んでいる役です。(例 ❤︎6❤︎7❤︎8❤︎9❤︎10)」
「(iii)フォアカード。3番目に強い役です。マークが違う、同じ数字が4枚そろった役です。 (例 ♠︎Q❤︎Q♦︎Q♣︎Q❤︎2)」
「(iv)フルハウス。4番目に強い役です。マークが違う、同じ数字3枚と、マークが違う、同じ数字が2枚の役です。 (例 ♠︎K❤︎K♦︎K♠︎A♦︎A)」
「(v)フラッシュ。5番目に強い役です。同じマークが、5枚揃った役です。  (例 ♦︎6♦︎8♦︎J♦︎Q♦︎3)」
「(vi)ストレート。6番目に強い役です。マークに関係なく、5枚のカードの数字が続いている役です。  (例 ❤︎2♠︎3♦︎4♣︎5♠︎6)」
「(vii)スリーカード。7番目に強い役です。マークが違う、同じ数字3枚の役です。  (例 ♠︎J❤︎J♦︎J❤︎10♦︎4)」
「(viii)ツーペア。8番目に強い役です。マークが違う、2枚ずつの同じ数字が2組の役です。  (例 ♠︎2♦︎2♦︎8♣︎8♦︎6)」
「(ix)ワンペア。9番目に強い役です。マークが違う、同じ数字が2枚揃った役です。(例 ❤︎A♦︎A❤︎J♦︎9♣︎5)」

「各プレイヤーの行動は、(i)から(vi)まで、6種類あります。」
「(i)べット。最初に、チップを出すことです。」
「(ii)コール。先のプレイヤーと、同じ枚数のチップを出して、ゲームを続けることです。」
「(iii)レイズ。先のプレイヤーよりも、多いチップを出して、賭けを大きくすることです。1人1ゲームで、1回しかできません。」
「(iv)ドロップ。ゲームを、棄権することです。」
「(v)ドロー。場に捨てたカードの枚数だけ、カードを貰います。」
「(vi)チェック。2回目(ドローの後)に行う、パスの一種ですが、レイズはできません。」
「これらを纏めて1ゲームとし、何回もゲームを続け、何方かのチップ、最初は、各1,000デジタルポイントが、0になるまで、戦います。」
「ルールはシンプルです。相手より強い役を、揃えること、それだけです。しかし、心理戦や、テクニックが、ゲームの醍醐味です。また、一流の、プレイヤーたちは、各人、それぞれの、固有能力を、持っています。カジノ・賭博分野審議官カードマスター、ウェヌスタと、ベルルムの、"元天才少女"、ヴァニタスの、固有能力とは、一体、何なのでしょうか?」
支配人が、アナウンスを終える。
「ルールは、以上です。それでは、ゲームを、見守りましょう。」
ウェヌスタと、ヴァニタスの、ゲームが、始まる。

互いに、ゲーム参加料の、100デジタルポイント(最低賭け金)を出す。
ヴァニタスと、ウェヌスタの、smart bracelet®︎スマートブレスレットが、ホログラムを出す。ホログラムのカードが、5枚ずつ2人を覆う。
ウェヌスタの最初に引いたカードは、❤︎5♦︎5♣︎10♠︎J❤︎3。ワンペア(9番目に強い手札)だ。
「良いカードが、来ないわ。」
ヴァニタスが、溜息を付き、即座にベット(チップを賭ける)する。
バリュー・ベット(強気の賭け)200デジタルポイント。
バリュー・ベットは、自分の役が勝っていると思う時に、より多くのチップを集める賭け方だ。最終的に、ショーダウン(手札をオープン)して、勝つことが前提だ。
言葉と行動が、一致していない。読めない...とウェヌスタは、考える。
コール(賭けに応じる)200デジタルポイント。
ウェヌスタは、同額を賭けた。ドロータイム(カード交換)が、来る。
ウェヌスタは♣︎10と❤︎3を捨て、2枚引く。
ヴァニタスは3枚捨て、3枚引く。大きな勝負に、出た。

ウェヌスタが引いたカードは、❤︎Q♦︎10。これでウェヌスタの手札は、❤︎5♦︎5♣︎10♦︎10❤︎Q。ツーペア(8番目に強い手札)だ。
レイズ(賭け金を大きくする)300デジタルポイント。
また動いたのは、ヴァニタスだ。レイズで、賭け金を大きくする。
「乗ってあげるわ。」
ウェヌスタは、迎え撃つ。
コール(賭けに応じる)300デジタルポイント。
これで賭け金は、合計1,200デジタルポイント。
ショーダウン(手札をオープンにする)。
──ツーペア。
ウェヌスタのカードは、❤︎5♦︎5♣︎10♦︎10❤︎Qのツーペア(8番目に強い手札)。
──スリーカード。
ヴァニタスのカードは、♠︎4♦︎4❤︎4♦︎2♠︎Qのスリーカード(7番目に強い手札)。ヴァニタスの、勝ちだ。

第1ゲームが終わったお互いのチップはウェヌスタが、400デジタルポイント、ヴァニタスが、1,600デジタルポイント。
ウェヌスタが、問い掛ける。彼等、一流の、ギャンブラーたちは、それぞれ、固有の、能力を、有している。単なる、偶然、ではない。
「貴方...能力を、使っているわね。引きが、良すぎる。」
ヴァニタスが、即答する。
「察しが、早いわね。」
やはり...と、ウェヌスタは、考える。この引きの強さは、単なる、幸運、ではない。
互いに、ゲーム参加料の100デジタルポイント(最低賭け金)を出し、第2ゲームが始まる。
獲得した、600デジタルポイントのチップを撫でながら、ヴァニタスが囁く。
カジノ・賭博分野審議官カードマスターも、能力を持っていると聞く。見せて、ご覧なさい。」
ウェヌスタが、返す。
「体感させて、あげるわ。」
2人に、ホログラムで、5枚ずつカードが、配られる。

ウェヌスタが、引いたカードは、♣︎A♦︎7❤︎10♣︎Q♠︎4。ノーペアだ。
バリュー・ベット(強気の賭け)200デジタルポイント。
ヴァニタスが、先程と同じ、強気のベットで、賭ける。
此処だ...ウェヌスタが、動く。
《分析眼》
カジノ・賭博分野審議官カードマスターの、能力の、1つだ。相手の、心理を、見抜く。
──この女は、嘘を、付いてない。僅かな汗も、緊張感も、感じられない。
ウェヌスタは、意識を、分散させる。
《360°認識》
カジノ・賭博分野審議官カードマスターの、能力の、2つ目だ。確率演算で、相手の手札を計算し、カードを見抜く。
──手持ちは、ノーペアに見える。ドローが、強い。汗も、緊張感もないが、バリュー・ベットはブラフ(ふかし)だ。ウェヌスタが、答える。
コール(賭けに応じる)200デジタルポイント。

ドロータイム(カード交換)。
《スマートドロー》
カジノ・賭博分野審議官カードマスターの、能力の、3つ目だ。確率演算で、運を、手繰り寄せる。
ウェヌスタは、♦︎7❤︎10♣︎Q♠︎4を捨て、4枚引く。
ヴァニタスは、2枚捨て、2枚引く。
ウェヌスタが引いたカードは、♦︎A♣︎4❤︎A♦︎3 。これでウェヌスタの手札は、♣︎A❤︎A♦︎A♦︎3♣︎4。スリーカード(7番目に強い手札)だ。
強い役を知られたくない...ウェヌスタは、精神を、解放した。
《フリーマインド》
カジノ・賭博分野審議官カードマスターの、能力の、4つ目だ。心理を、相手に、読み取らせない。
レイズ(賭け金を大きくする)100デジタルポイント。
ウェヌスタは、残りの賭け金を、全て賭ける。
オールイン(全てのチップを賭ける)100デジタルポイント。

ショーダウン(手札をオープンにする)。
──ツーペア。
ヴァニタスのカードは、♦︎8♠︎8♣︎4❤︎4♠︎Aのツーペア(8番目に強い手札)。
──スリーカード。
ウェヌスタのカードは、♣︎A❤︎A♦︎A♦︎3♣︎4のスリーカード(7番目に強い手札)。ウェヌスタの、勝ちだ。
様々な、修羅場を、乗り越えて来た、カジノ・賭博分野審議官カードマスターとしての、ウェヌスタの、圧巻の、能力だった。
ヴァニタスが、自分の、敗北を、さして、気にもしていない様に、称えた。
「これが、カジノ・賭博分野審議官カードマスターの、能力。素晴らしい。」
第2ゲームが終わったお互いのチップは、ウェヌスタが900デジタルポイント、ヴァニタスが1,100デジタルポイント。
互いに、ゲーム参加料の100デジタルポイント(最低賭け金)を出し、第3ゲームが始まる。
ウェヌスタが、宣言する。
「私を、本気にさせるべきではらなかったわ。」

ヴァニタスは、不敵に、笑う。
「どうかしら?」
2人に、ホログラムで、5枚ずつ、カードが配られる。
ウェヌスタが引いたカードは、♠︎8❤︎6❤︎ Q♦︎5♣︎A。ノーペア(何も揃ってない手札)だ。
「これなら、どう?」
ヴァニタスが、精神を、解放する。
《フリーマインド》
「これで、心理を読み取らせない。」
「これは...カジノ・賭博分野審議官カードマスターの、能力!!」
《360°認識》
ヴァニタスが、囁く。
「貴方は、ノーペア(何も揃ってない手札)ね。」

《分析眼》
「貴方は、動揺している...何故、私が、カジノ・賭博分野審議官カードマスターの、能力を、使えるのか。」
ウェヌスタは、息を呑んだ。カジノ・賭博分野審議官カードマスターの、能力を、ヴァニタスが使っている。ウェヌスタが、感嘆する。
「短時間で、凄まじい慧眼と、資質だわ。流石、"元天才少女"。」
「そして...貴方を、置き去りにする。」
《フルスロットル》
ヴァニタスは、五感を、全開にした。自らの、ギアを、最大限に、引き上げ、究極の、集中状態、ゾーンに、入る。
コンテニュエーション・ベット(継続賭け)400デジタルポイント。
一つ前のゲームで、自分が最も高い金額でベット(レイズ)した際に、次のゲームでも最初にベットして、主導権を握り続けようとする、継続賭けだ。
ヴァニタスが、一気に、ゲームの主導権を、握ろうとする。
コール(賭けに応じる)400デジタルポイント。
ウェヌスタは、唇を、噛み締めながら、立ち向かう。

その頃、ヒエムスは、public casino®︎パブリックカジノで戦いを見守る客の中に、ターゲットを見つけた。近づき、声をかける。
「初めまして。"勝負師"アウデンティアと、"番人"クーストース、だね。」
アウデンティアは、ベルルムの、ポーカーチャンピオンだ。獲得賞金は、歴代トップ10に。入る、ベルルムでは、知らぬ者は居ない、ポーカープレイヤー、である。クーストースは、世界4大カジノで、ディーラーを、転任し、現在は、世界4大カジノの、審査委員長も務める、カジノの世界の、守り人だ。退けて来た、ギャンブラーは、5,000人を超える。一方で、2人は、『絵柄スート』の組織の、構成員、という、別の顔を、持って居た。ヒエムスは、2人を発見したが、これが、どの様な出来事に、繋がるのだろうか?アウデンティアが、ヒエムスに、問いかける。
「あんたは、誰だ?お兄ちゃん。」
クーストースが、返答する。
「この男は、カジノ・賭博分野審議官カードマスターの、ヒエムスだ。無礼は、よせ。アウデンティア。」
ヒエムスが、わざとらしく、クエスチョンポーズを、取り、問いかける。
「ベルルムの勝負師と、審査委員長とは、随分と、不思議な、組み合わせだ。」
アウデンティアが、ヒエムスを、挑発する。
「俺たちは、遊びに来た。あんたで、遊んでやっても良い。」
クーストースが、割って入る。
「辞めておけアウデンティア。お前では、この男には、勝てない。」

アウデンティアが、気分を、損ね、声を上げる。
「俺は、ベルルムの、カードチャンピオンだ。俺が、負けるだと!?」
ヒエムスが、アウデンティアに、回答する。
「彼、クーストースの、いう通りだ。君では、俺には、勝てない。」
アウデンティアが、激昂する。
「なら、俺と、戦ってみろ。」
ヒエムスが、渋々、返答する。
「話が、通じないようだな。お望みならば。」
互いに、ゲーム参加料の100デジタルポイント(最低賭け金)を、出す。
ヒエムスのsmart necklace®︎と、アウデンティアのsmart belt®︎が、ホログラムを出す。ホログラムのカードが、5枚ずつ、2人を覆う。
ヒエムスが、宣言する。
「時間の、無駄だよ。」

アウデンティアが、啖呵を切る。
「舐めるなよ。お兄ちゃん。」
ベット(チップを賭ける)100デジタルポイント。
コール(賭けに応じる)100デジタルポイント。
ドロータイム(カード交換)。
アウデンティアが、5枚のカードを、全て、捨てて、5枚引く。
ヒエムスは、感心する。
「思い切りが良い。流石、"勝負師"だ。」
ヒエムスは、2枚のカードを捨てて、2枚引く。
レイズ(賭け金を大きくする)100デジタルポイント。
アウデンティアが、賭け金を、大きくする。
アウデンティアが、挑発する。
カジノ・賭博分野審議官カードマスター、なんだろう?乗ってこいよ。審議官さん。」

安い挑発だが、カードを、5枚も、交換している...ヒエムスは、考える。少し、間をおいて、ヒエムスが、返答する。
「望むなら、その勝負に、乗ろう。」
コール(賭けに応じる)100デジタルポイント。
ショーダウン。
──ツーペア。
ヒエムスのカードは、♣︎J❤︎J♣︎A♠︎A♦︎9のツーペア(8番目に強い手札)。
──フラッシュ。
アウデンティアのカードは、♦︎A♦︎4♦︎8♦︎2♦︎5のフラッシュ(5番目に強い手札)。アウデンティアの、勝ちだ。
「速攻で、終わらせてやる。」
アウデンティアが、勝ち誇る。「俺こそが、カードチャンピオンだ」と、言いたげだった。
ヒエムスが、熟考し、問いかける。
「これは...能力を、使っているな?」

アウデンティアが、「教えるかよ」という、風に、返す。
「さあな。」
第1ゲームが終わったお互いのチップは、ヒエムスが、800デジタルポイント、アウデンティアが、1,200デジタルポイント。
互いに、ゲーム参加料の100デジタルポイントを出し、第2ゲームが始まる。
2人に、ホログラムで、5枚ずつカードが配られる。
《360°認識》
ヒエムスが、動いた。
カジノ・賭博分野審議官、としての、能力だ。
──最初の手持ちカードは、強くない。
アウデンティアの最初のカードは、ノーペアに、見える。
ベット(チップを賭ける)100デジタルポイント。
コール(賭けに応じる)100デジタルポイント。
ドロータイム(カード交換)。

アウデンティアが、カードを、4枚捨て、4枚引く。
ヒエムスは、カードを、2枚捨てて、2枚引く。
アウデンティアが、微笑んだ。
「一気に、行くぜ。」
《スピードスター》
アウデンティアの判断と、選択の、速さを、ヒエムスは、見逃さなかった。この男の能力は、加速する事だ。ゲームを、重ねる毎に、独特の嗅覚と、経験知で、自分自身を、加速させ、自分の、ペースを作り出し、ゲームの、主導権を、握っている。
ヒエムスは、呟いた。
「スピードタイプ、か...」
アウデンティアが、賭け金を大きくする。
レイズ(賭け金を大きくする)200デジタルポイント。
コール(賭けに応じる)200デジタルポイント。
ショーダウン(手札をオープンにする)。

──スリーカード。
アウデンティアのカードは、♠︎5♣︎5❤︎5❤︎7♣︎2のスリーカードだ(7番目に強い手札)。
──フラッシュ。
ヒエムスのカードは、♣︎8♣︎J♣︎4♣︎A♣︎3のフラッシュだ(5番目に強い手札)。ヒエムスの、勝ち。
アウデンティアが、驚く。
「何だと!?馬鹿な。」
ヒエムスが、勝負は着いた、と言う風に、落ち着き払って、答える。
「君の、能力は、分かった。」
「抜かすな。」
第2ゲームが終わったお互いのチップは、ヒエムスが、1,400デジタルポイント、アウデンティアが、600デジタルポイント。
互いに、ゲーム参加料の100デジタルポイントを出し、第3ゲームが、始まる。
2人に、ホログラムで、5枚ずつ、カードが配られる。

ベット(チップを賭ける)200デジタルポイント。
コール(賭けに応じる)200デジタルポイント。
《分析眼》
《360°認識》
《フリーマインド》
《フルスロットル》
ヒエムスが、畳み掛ける。
ドロータイム(カード交換)。
《スピードスター》
《スマートドロー》
「真っ向勝負だ。」
「はっきりさせよう。」

「第2ゲームで、まぐれで、俺に勝てたのが、運の尽きだ。俺は、加速している。ゲームの、経過と、共に、強くなる。」

アウデンティアは、宣言する。
オールイン(全てのチップを賭ける)300デジタルポイント。
アウデンティアは、チップを、全て、賭ける。
此処だ...ヒエムスが、動いた。
コール(賭けに応じる)300デジタルポイント。
合計1,200デジタルポイントが、賭けられる。
ショーダウン。
──ストレート。
アウデンティアのカードは、❤︎4♣︎5♣︎6❤︎7♦︎8のストレート(6番目に強い手札)。
ヒエムスが、「スロープレイ」と、囁く
アウデンティアが、目を、見開く。
「何!?」

スロープレイとは、強い手役が完成しても、相手に主導権を渡し、弱そうに振る舞い、大量のチップを獲得する、テクニックだ。
「君を、騙していたよ。」
ヒエムスが、説明する。
「君と、スピードで、勝負する気は、なかった。さっき、一回勝ったのも、カジノ・賭博分野審議官カードマスターの、能力を見せたのも、全てフェイク(騙し)だ。君の得意な、スピードで勝つことで、感情的になって、大勝負するのを待っていた。」
アウデンティアが、唸る、
「最初から、自分のペースで、勝負していたな!?」
「俺は、結構、嘘つきでね。」
──フルハウス。
ヒエムスのカードは、♣︎10♠︎10❤︎10❤︎5♦︎5のフルハウス(4番目に強い手札)。ヒエムスの、勝ち。
「固有の能力も、見せずに...!!」
ヒエムスが、言い放つ。
「君程度に、固有の能力を、見せる必要は、ない。」

アウデンティアが、悔しさを、滲ませる。
カジノ・賭博分野審議官カードマスター、ヒエムス...!!」
クーストースが、割って入る。
「言っただろう、アウデンティア、お前では、勝てないと。次は、俺が、相手だ。」
ヒエムスが、返答する。
「いや、そろそろ、向こうも終わっている頃だ。」
クーストースが、ほくそ笑む。
「どうかな。カードマスターでも、カードの女王カードクイーンには敵わない。」
ヒエムスが、戸惑う。
「執行官、ヴァニタスとは知り合いだ。うちの娘の、放課後先生アフターティーチャーを、してくれている。だが、カードの女王カードクイーン、彼女の、その通り名は、聞いたことがない。クーストース、君は、世界4大カジノの審査委員長も務める、"番人"だったな。」
「知って貰えているとは、光栄な事だ。貴様を、叩き潰す。」
互いに、ゲーム参加料の100デジタルポイント(最低賭け金)を、出す。

ウェヌスタが、質問する。
「固有の、能力も、使っているでしょう?」
ヴァニタスが、「さぁね」と、答えた後で、宣言する。
「予告するわ。私は、次に、ストレートで勝つ。カードが、囁くのよ。」
《カードトーク》
ヴァニタスが、固有の、能力を解放する。幼少期から、カードと触れ合ってきた、ヴァニタスは、カードと『会話』出来るのだ。「こんにちは。カードの皆、準備は良い?」と、ヴァニタスは、まるで、カードが、生きているかの様に、カードに、語りかける。ウェヌスタが、警戒する。
「ベルルムの、"天才少女"は、カードと『対話』できると、聞いたことがある。」
ドロータイム(カード交換)。
《スマートドロー》
ウェヌスタは、♠︎8♦︎5♣︎Aを捨て、3枚引く。
ヴァニタスは、3枚捨て3枚、引く。
ウェヌスタが引いたカードは、❤︎J❤︎8❤︎2 。これでウェヌスタの手札は、❤︎6❤︎Q ❤︎2❤︎J❤︎8 。フラッシュだ(5番目に強い手札)。

ショーダウン(手札をオープンにする)。
──ストレート。
ヴァニタスのカードは、♣︎6❤︎7♠︎8♦︎9♠︎10のストレート(6番目に強い手札)。
──フラッシュ。
ウェヌスタのカードは、❤︎6❤︎Q ❤︎2❤︎J❤︎8のフラッシュ(5番目に強い手札)。ウェヌスタの、勝ちだ。
ヴァニタスが、驚嘆する。
「何故、カードの声が、正しくない!?」
《フレグランス》
ウェヌスタが、微笑む。
「これが、私の、固有能力。身に着けた香水、smart perfume®︎スマートパフュームが、相手の五感を奪う。だから、貴方は、カードと上手く会話が、できない。」
ウェヌスタの周りに、甘ったるい、独特の香りが、充満していた。
ヴァニタスが、苦しそうにしている。意識を保つのも、やっとだ。ヴァニタスが、薄れゆく、意識の中、言葉を、紡ぎ出す。

「これは...ナノマシン!?」
ヴァニタスが、動揺する。意識が、朦朧とする。
ウェヌスタが、説明する。
「よく分かったわね。そうよ。この香水の正体は、極小のナノマシン。このナノマシンは、呼吸から、体内に、吸入されて、幻覚剤と、同様の、効果を、及ぼす。貴方は、カードと、『会話』、出来る様な、体と、精神状態では、ない。」
ナノマシンとは、0.1-100nmナノメートルの極小の、機械装置だ。ヴァニタスが、問いかける。
「嘘よ。そんな劇薬を、身に付けていれば、貴方自身、倒れるわ。ブラフ(はったり)ね。」
ウェヌスタが、やれやれと言う風に、返答する。
「私は、少女の頃から、この、smart perfume®︎スマートパフュームを、体に、慣らしていたの。長時間をかけて、私は、幻覚剤や、興奮剤などの、化学物質が、効かない体に、なった。場数の差、よ。」 
ヴァニタスが、大笑いする。
「ふふふ...ははははは!!」
ウェヌスタが、戸惑う。
「何が、可笑しい!?」

ヴァニタスが、鬼の形相で、微笑む。
「認めるわ...カジノ・賭博分野審議官カードマスター、ウェヌスタ。これを、見せるのは...世界4大カジノの、一つを、壊滅させた時、以来よ...」
ウェヌスタが、驚く。
「貴方が、世界有数のディーラー、"番人"クーストースを引退させ、たった1人で、ベルルムのカジノを、半壊させた時の...」
ヴァニタスが、答える。
「私の、本気を、見せてあげる。貴方は...壊滅した、カジノの、ディーラーたち、彼等と、同じ事になる...」
第3ゲームが終わったお互いのチップは、ウェヌスタが、1,300デジタルポイント、ヴァニタスが、700デジタルポイント。
互いに、ゲーム参加料の100デジタルポイント(最低賭け金)を出し、第4ゲームが始まる。
コンテニュエーション・ベット(継続賭け)100デジタルポイント。
ウェヌスタは、主導権を離さない。
コール(賭けに応じる)100デジタルポイント。
ヴァニタスが、応じる。

ドロータイム(カード交換)。
《分析眼》
《360°認識》
《フリーマインド》
《スマートドロー》
《フルスロットル》
ウェヌスタは、♦︎2と♠︎K❤︎6を捨て、3枚引く。勝負に出る。
ヴァニタスは...カードを交換すら、しなかった。
レイズ(賭け金を大きくする)100デジタルポイント。
ウェヌスタが、畳み掛ける。
コール(賭けに応じる)100デジタルポイント。
holographic display®︎ホログラフィックディスプレイで、見ていた、ヒエムスが、ふいに、声を出す。

「ウェヌスタ...罠だ!!」
ヴァニタスの周りを、カードの、死神の様な、のオーラが、包む。
《カードコントロール》
ショーダウン(手札をオープンにする)。
──フルハウス。
ウェヌスタのカードは、♣︎7♣︎7♣︎7❤︎9❤︎9のフルハウス(4番目に強い手札)。
──フォアカード。
ヴァニタスのカードは、♠︎Q❤︎Q♦︎Q♣︎Q❤︎3のフォアカード(3番目に強い手札)。ヴァニタスの、勝ちだ。
ヴァニタスが、宣告する。
「フルハウス、4番目に強いカードが出た時、70%の確率で、勝てると、思ったでしょう?貴方に、フルハウスを揃えさせたのは、私。私に、フォアカードを集めたのも、私。私なのよ。何もかも、仕組んだのは。」
ウェヌスタは、動揺する。
「ありえない。貴方は、ディーラー(カードの配り手)では、ない。」

ヴァニタスは、続ける。
「全てを、コントロールしたいと、思わない?私は、男も、金も、地位も、全て、コントロールして、手に入れて来た。フォールド(降参)なさい。貴方は、私には勝てない。私は、今まで、常に、勝って来た。だから、カードの女王カードクイーンと、呼ばれているの。」
ウェヌスタは、答える。
「私は、諦めない。」
ヴァニタスが返す。
「根性論ね。でもね、意地や、根性では、如何にもならない事が、あるのよ。」
第4ゲームが終わったお互いのチップは、ウェヌスタが、1,000デジタルポイント、ヴァニタスが、1,000デジタルポイント。
互いに、ゲーム参加料の100デジタルポイントを出し、第5ゲームが始まる。
フォールド・エクイティ(消極的な賭け)50デジタルポイント
ウェヌスタは、消極的に賭ける。
コール(賭けに応じる)50デジタルポイント。
「怖気付いた?」

ウェヌスタは、無視した。たった一つの事を、考えていた。
ヴァニタスの周りを、再び、死神の、幻影が、包む。
《カードコントロール》
ウェヌスタは、動いた。
「ここだ...!!」
ドロータイム(カード交換)。
《分析眼》
《360°認識》
《フリーマインド》
《スマートドロー》
《フルスロットル》
ヴァニタスが、「これで、終わりよ」と、言いたげに、宣言する。

「貴方の限界よ...カジノ・賭博分野審議官カードマスター、ウェヌスタ。」
ウェヌスタは、♠︎J♠︎A❤︎9♣︎A♣︎7を捨て、5枚引く。
オールイン(全てのチップを賭ける)850デジタルポイント。
ウェヌスタは、覚悟する。全ての、デジタルポイントを、賭けた。
ヴァニタスが、毒を、吐く。
「全ての、チップを、賭けるとは、最後は、やけくその、ハッタリか...私が、1番、嫌いなものよ。」
オールイン(全てのチップを賭ける)850デジタルポイント。
ヴァニタスは、迎え撃つ。
ショーダウン(手札をオープンにする)。
──フォアカード。
ヴァニタスのカードは、♠︎Q❤︎Q♦︎Q♣︎Q❤︎Jのフォアカード(3番目に強い手札)。
ヴァニタスが宣告する。

「貴方のカードは、フルハウス、私のカードは、フォアカード。お別れよ...」
──ストレートフラッシュ。
ウェヌスタのカードは、♠︎2♠︎3♠︎4♠︎5♠︎6のストレートフラッシュ(2番目に強い手札)。
ヴァニタスが、衝撃を、受ける。
「...ありえない!!」
《カードコントロールリバース》
ウェヌスタが、長く、閉ざしていた、口を開く。
「貴方が、教えてくれた。コントロール出来ない、カードが、ある事を。」
ヴァニタスが、「嘘よ」と、動揺しながら、返答する。
「カードを、コントロールして居るのは、私よ。」
ウェヌスタが、返す。
「貴方にも、コントロール出来ない、カードが、ある。だからこそ、貴方は、フォアカード(3番目に強い手札)迄しか、集められなかった。」

ヴァニタスが、苦虫を、踏み潰した、顔をして、唸る。
「この、短時間で...その事を...!!」
ウェヌスタは、説明する。
「コントロール出来ない、カードの、存在が、私に、ある、仮説を、もたらした。つまり、ヴァニタス、貴方が、コントロール出来ない、カードは、他の人に、コントロール出来る、可能性がある。そこで、私は、考えた。貴方が、コントロール、不可能の、残りのカードで、貴方よりも、強い役を、揃えれば良い。簡単な事では、なかった。針の穴を、通す様な、作業だったわ。でも、私は...貴方の、コントロール、出来ない、カードを、コントロールする事に、集中した。そして、貴方の、コントロール外の、カードから、揃えたのよ。」
holographic display®︎ホログラフィックディスプレイで、見ていた、ヒエムスが、安堵して、答える。
「良くやったウェヌスタ...後は、此方だ。」
クーストースが、口を、挟む。
「貴様が、勝てなければ...結果は、同じだ。」
厳しい勝負になる...と、ヒエムスは思った。しかし、ここが、母国、ソルの、カジノである事に、勝機は、ある。アウェーの、異国ではない。極端な、イカサマや、不正を、される、心配は、ない。
クーストースの、背後から、現れた、老紳士が、口を、開く。
「地の利に、劣るな...クーストース。」

アウデンティアが、驚く。

カードの紳士カードジャック様...!!」
クーストースが、答える。
「パリドゥス宰相...」
ベルルムの宰相、パリドゥスが、立っていた。パリドゥスは、ベルルム史上、5番目の、速さで、ベルルム上院議員に、当選した、エリートでありながら、議員中に、妻と、娘を、交通事故で、失った、苦労人だ。齢、80歳を、超えながら、現役で、ベルルムの、宰相を、務め上げる。人生の、喜びも、悲しみも、知って居る、その眼差しは、慈愛と、厳しさが、混ざったオーラを、放つ。しかし、もう一つの顔は、カードの紳士カードジャック、『絵柄スート』の組織の、No.3だった。ベルルム宰相すら、取り込んで居る、『絵柄スート』の組織の、巨大さと、深淵さが、窺える。パリドゥスは、何を、しようとして居るのだろうか?パリドゥスが、ヒエムスに話しかける。
「ソルのカジノ・賭博分野審議官カードマスター、ヒエムス君だね...我が国の、ギャンブラーが、無礼を、働いた。ここは一つ、我が国への矛を、収めてくれないかね...」
ヒエムスが、問いかける。
「パリドゥス宰相...何故、貴方が、此処に?」
パリドゥスが、返答する。
「外交機密だ...君に、話す必要は、ない。」
ヒエムスが、返す。
「島国ソルは、中立です。貴国と、戦争する気は、ありません...しかし、来るものは、迎撃する。それが、私の、務めです。」
パリドゥスが、沈黙の後、回答する。

「イーブンゲーム(引き分け試合)と、しようじゃないか。」
ヒエムスが、少し考えて、答える。
「...分かりました。」
ヒエムスと、パリドゥス宰相が、別れた後、ヒエムスは、ウェヌスタと、合流する。ヒエムスが、問い掛ける。
カードの女王カードクイーン、ヴァニタスは、どうなった?」
ウェヌスタが、返答する。
「追いかけようとしたら...消えたわ。」
ヒエムスが、驚く。
「消えた...!?」
ウェヌスタが、ヒエムスに、問う。
「其方は、どうだったの?」
「パリドゥス宰相が、いた。何かが、起こっている──」

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