Vol.01 HANAFUKUが離島に届けるもの(Episode.3)
前回の Episode.2 はこちら↓
配達中、島民との交流と突然の電話
佐久島は三河湾に浮かぶ離島の中で最大の面積を誇り、標高30メートル台で連なる丘陵地帯にも民家は点在している。そんな島内の配達は西側の集落から始まり、東側の集落・民宿エリアまで続く。
集落の間を通る道はとても狭い。ワゴン車を駐車できる路側帯もない。集落の中を配達するためには、わずかな駐車スペースに車を停めて、徒歩で届けるしかない。田中さんは限られた時間の中で、高低差のある島内を1軒ずつ歩いて配達していく。
「おはようございます、HANAFUKUです!」
田中さんが玄関先で声を上げた。黒壁の集落で古くから暮らすおばあさんの声が、民家の中から聞こえてきた。HANAFUKUの配達は、保冷箱でのお届けだけでなく、お客様に直接声をかけて手渡しすることを大切にしている。
田中さんとおばあさん、2人の会話が始まった。僕はふと、以前読んだネット記事を思い出した。長崎県の壱岐島で牛乳配達をしながら高齢者の見守りサービスを提供する、田中さんの同業者を取り上げた記事だった。
HANAFUKUは、見守りサービスを謳っていない。けれど高齢化・過疎化の進んだ佐久島への配達を続け、島内ではお年寄りと交流している。それだけで見守りサービスと同等の意義があるのではないか、と僕は思った。
田中さんは行く先々で、お客様から声をかけられていた。時には採れすぎた野菜をいただく光景も目にした。HANAFUKUと島民との間に出来上がっている人間関係は、とても良好のようだ。
田中さんは効率の良い配達ルートを選び、手際よく保冷箱の消毒・清掃作業を行い、お客様との交流を続けていった。
西集落の配達が終盤に差し掛かった頃、田中さんのスマートフォンの着信音が鳴った。島の東側の集落に住むお客様からの電話だった。
「あと20分くらいだと思います」
電話でそう答えた田中さんは、西集落での配達のペースを上げていった。交換用の保冷箱を脇に抱え、両手に商品を持ちながら、高低差のある集落を駆け足で回る。
僕は思わず「すげぇ…」と唸っていた。
Episode.4につづく
HANAFUKUのご紹介(ホームページはこちら ↓ )
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