Vol.01 HANAFUKUが離島に届けるもの(Episode.1)
梅雨入り2日目の6月11日。僕は歩いて黒壁の間の小径を抜けながら、前日の天気予報を裏切って雨を落とさない曇り空を眺めた。このまま帰港の便まで濡れずに済めば良いな、とスマートフォンのアプリで天気を確認した。どうやら大丈夫そうだ。
僕の耳には、雨音の代わりに鶯や鳶の鳴き声が途切れることなく届いている。この島に彩りを加える音だな、と耳を澄ませていると、牛乳配達員の元気の良い声が周囲に響いた。
「おはようございます、HANAFUKUです!」
配達準備、午前6:30 一色港発 佐久島行
僕が愛知県西尾市にあるHANAFUKUを訪れたのは、午前5:00。既に事務所の明かりは灯り、配達の準備が始まっていた。
オーナーの田中彰さんが、牛乳をはじめとした乳製品をテーブルに並べて、配達するご家庭ごとに小分けにする作業を粛々と進めている。
7年前に構えたという事務所には、大型の冷蔵庫がある。僕は中を覗いてみた。大人3人が入ってもソーシャルディスタンスを保てるくらいの広さがありそうだ。
庫内には、配達する曜日ごとに商品が整理され、保管されていた。田中さんは、そこを行き来しながら、これから佐久島のお客様に届ける商品を用意していた。
「この作業を先に済ませておくと、配達してすぐ保冷箱を掃除する時間が作れるんだよね」
お客様の中には、配達時に不在にしがちな人、手渡しでの配達を好まない人などもいるという。HANAFUKUの商品は、そうしたお客様の状況に応じて、専用の保冷箱に入れて届けられている。その際に、前回使用した保冷箱を引き上げて消毒・清掃を行っていることを、田中さんが教えてくれた。
保冷や消毒は、食品を扱う以上、お客様の安心・安全に配慮した当然の取り組みだと思う。ただ、新型コロナウイルスの感染拡大で、市民の間には手洗いや咳エチケットをはじめとした衛生意識が高まっている。お客様が安心して商品を受け取るうえで、消毒・清掃作業を徹底するHANAFUKUの姿勢に、僕は好感を持った。
午前6:00、仕分け作業が終わり、田中さんが商品を車に積み込み始める。
「行こうか」
田中さんに声をかけられた僕は車に同乗し、佐久島行きの船が待つ一色港へと向かった。
Episode.2 につづく
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