自作シンセ:ユーロラックケースを自作
まず一刻も早く僕の素晴らしいユーロラックケース(厳密にはサイドパネル)をみなさんに自慢したいので画像を貼ります。最初に結果を見せる、これは手塚治虫先生の「マンガの描き方」第二章 ”アイデアを考えるためのふたつの方法” にも記されている帰納法というテクニックですかね、違うような気もしますね。それでは、はい、チーズ!
どどーん! どうじゃ? かっこいいじゃろう!?
というわけで始めます。ユーロラックのモジュラーシンセを楽しむにはまず電源とケースが必要です。なんですけど、これがけっこう高いんです。どれくらい高いのかというとちょっとした電源+ケースのセットだとだいたい5万円くらい、ケースのみでもちょっと気の利いたものだと3万円くらいするんじゃないかしら。どう? けっこう高いでしょう?
そこで自作です。ユーロラックのケース規格はドイツのdoepfer社 (未だに発音よくわからない) が提唱したもので、これは元々あった業務用ラックケースと互換性のあるものです。業務用ラックケースのレールは日本のメーカーからも販売されていますので、それを流用してケースを自作することができます。具体的には
・ユーロラック規格の詳細
・タカチが販売している業務用ラックのレール
などを参考にしてくだされ。タカチのレールはいろんなところで買えます。みんな大好き秋月では売ってませんがみんな大好きモノタロウにはあります。また、レールにパネルを固定するためのナットが必要になるのですが、これもサイズぴったりのバーナットというものが売ってますので、それを買ってしまうのが手っ取り早いでしょう。
んで、レールを固定するためにケースが必要になってくるのですが、そもそもタカチのレールにけっこうな奥行きがあってモジュールを取り付けるだけで安定感がありますので、ぶっちゃけ段ボール2枚でもなんとかなります。なんならレールだけあればそれだけでなんとかならないこともないんですが、要は
こんな感じで4mm経の穴が4つ開いた板を左右二枚用意してあげればレールを固定できるんですね、段ボールでもMDFでも。ホームセンターなんかでは素材のカットサービスもやってるのでそれを利用してもいいでしょう。それだとほぼレール代だけでユーロラック沼に足を踏み入れることができるので(電源は別途必要ですが)、あまり予算をかけられないビーアンビシャスなキッズたちにはオススメであります。ちなみに84HP幅タカチレールを買うと1セットで4238円(2020.07.25モノタロウ調べ)です。84HPというのは約43.2cmで、大体10~12個くらいのモジュールを入れることができます。ユーロラックのはじめの一歩には十分なような……ちょっと足りないかな? できれば2セット欲しいところですね。まぁとにかく安く済まそうと思ったら、以上のようなプアーズDIYコースもありますよ、ということです。
しかし! ちょっとまってちょっとまってお兄さん! やはりカッコイイケースに憧れるのが我々ピテカントロプス・エレクトスの本能なのであります! ヒサコ先輩! だもんで、ちょっと今回
・PCでデザイン
・レーザーカッターで木材切り出し
・塗装もろもろ表面処理
という工程を経て、オリジナルの超絶カッチョイイユーロラックケースを自作したんですわ、というのが今日の本題ね。長かったねここまで。それでは行ってみよ~!
まずPC上でデザインします。使用ソフトはADOBEのイラストレーターです。いわゆるひとつのイラレ。前述のネジ穴の位置関係さえ守っておけばなんとかなるかな、という感じであまり考えずにデザインしたのですがなんとかなりました。AppleIIというレトロコンピュータのデザインに影響をうけています。あ、僕、昔デザイナーやってたこともあるんでイラレ使えるんですよ。
で、このデータをレーザーカット業者に送ると木材をカットして送ってくれます。業者はネット検索すればいくつかでてくると思います。カットする素材は業者によっていくつか選べると思うのですが、今回はシナベニヤにしました。ベニヤであれば一応木目があります。木目があれば後の工程でそれを目立たせることができます。MDFなどは木目がないので素材そのままの質感を活かしたいのであればオススメしません、便利な素材なんですけどね。
ジャン! こんな感じでカットされたパーツが届きました。レーザーカットの特徴として、切り口が焦げて真っ黒になります。これはヤスリがけで落としてもよいのですが、色付けの過程で濃い色を付けようと思っているのであればあまり気にしなくてよいかと思います。今回は4mm厚のベニヤ2枚の張り合わせ設計にしましたので、それぞれパーツを木工用ボンドで貼り付けていきます。
ジャジャジャン! これが仮組みの状態ですね。もうこの時点で相当カッコイイでしょう。一段目と二段目、それぞれ別ユニットになっていて、どんどん上にスタックしていける構造になっています。この構造、もしかしてだけどノーベルシンセ賞もんなんじゃないの? と思ってドキドキしてたんですけど、ローランドのケースとかが普通に同じような構造でした。残念!(侍姿でギターを持って)
そしていよいよ色を塗っていきます。ここでペンキやニスを買ってきてしまう人も多いと思います。いや、むしろDIYの知識がない人は積極的にペンキやニスを買ってしまうことでしょう。そこが間違いです。ペンキでは思ったような木目は出ませんし、ニス塗りは初心者はまず100%失敗します、100%です。ニス塗りはめちゃくちゃ難しいです!! ……よく聞くのです、あなたが買うべきものは、ワトコオイル、そしてブライワックスです。
まずワトコオイルで表面に色を付けます。これはオイルステインというジャンルの塗料で、たくさんの色が選べて、なんか自然素材で作られています。サラサラしていて非常に塗りやすく、100%失敗することはありません、100%です。「いや~、ハケがなくてさ、指で塗ったんだよね~」はい、それでも上手く塗れます。指で塗るくらいならいらない靴下でも使ったほうが楽ですが。ちなみに表面をマットな感じに仕上げたいのであれば、このワトコオイルをちゃんと塗るだけでOKです。逆にこのあとワックスで仕上げるのであれば、もっと安いよくわからないメーカーのオイルステインや、100円ショップでも売ってそうな水性ステインを使ってもOKです。ただワトコオイルはやはり質がいいし、色もいいし、仕上がりもいいです。ちなみに今回はマホガニーという赤みがかった茶色を使いました。色に迷ったら「家具ならウォルナット、楽器であればマホガニー」という言葉を思い出してください。僕の言葉ですが。
ワトコオイルが乾いたらブライワックスで表面に膜を作ってツヤを出します。塗り込んで乾かし磨く、を3セットくらい繰り返すとどんどんツヤッツヤになっていきます。ちなみに今回はクリア(無色)のワックスを使いました。
どうや!? ピッカピカやろ~?
ワトコオイルもブライワックスも塗り方に多少のコツがあります。どちらも超適当に塗ってもなんとかなるのですが、ちゃんと手順を踏めばよりキレイになるよ、という感じです。これはそれぞれのホームページに載ってるので、ちゃんと読むといいよね。
・ワトコオイルの塗り方
・ブライワックスの塗り方
ブライワックスは色付きのものもあるので、ワトコオイルはを使わずにブライワックスだけで仕上げてもいいですが、塗りムラが出やすいというか、今回のようにピタっと全面色がついた感じにはなかなかなりません、木目を強調して手作り感を全面に押し出したい場合にはどうぞ。まぁ、どちらも買ってみて塗ってみれば「あぁ、こういうもんか!」と瞬時に納得すると思います。
そんなこんなであとは組み立てれば完成です。PCでデザインしてそのままwebで業者にカッティング発注。その他必要なものはすべてネットショッピングで、ここまですべてデスクの前で完結しました。すごい時代だよね。じゃぁ最初の写真に戻ってこの記事はおしまいだよ、はい、チーズ!!
どどーん! どうじゃ? かっこいいじゃろう!?
……大事なことを書き忘れていました。今回の制作費ですが、木材+カット費で13500円、レールが1セット3000円くらい(今回使ったのは42HPという小さいサイズなのでやや安いのですが……どうやらメーカー販売終了してしまったようです)✕3段、ワックスは一度買えばいろいろな用途に使えるのでアレですが、なんのかんのトータルで25000円~30000円くらいかかってるんじゃないでしょうかね……いやぁ、市販のケースが高い理由もわかった気がします。
それにしても微妙な数字を叩き出してしまいました。市販のものよりは安いと言えば安いですが、作る手間などを考えるとスパっと市販品を買っちゃったほうがいいような気もします、届いたら即使えるし。
しかしまぁ、世界にひとつだけの自分デザインというのはまさにプライスレスですし、DIYなんて趣味は作る過程を楽しんでいるようなもんですからね。逆に25000円でこれだけ楽しめた! と考えるのがいいんじゃないでしょうか。おしまい!
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