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(23)カプセル販売器の仕事は、いくらで始められるのか?

今は落ち着いたようだが一時期、ガチャポンのビジネスが雑誌やテレビに、稼げるように見える取り上げ方をされてしまい、参入してくる人が相次いだ。

ローリスク・ローリターン?

とくに資格もなく勝手に『ガチャポンの事業をやる!』と決めた日から、あなたはガチャポンの事業者である。

とりあえずカプセル販売機の本体と商品を手に入れる必要がある。最初から新品のカプセル販売機を買うのは、あまりオススメしないが、新品は新品でのメリットもある。(後述する)

新品をオススメしない理由は単純で、本体分のお金を回収するのが、難しくなるからだ。計算すれば見えてくる。

初めてとある場所にガチャポンが置ける事になったとする。

置けたのは2台、4面分販売できる。

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(※画像はイメージ)

4種類、商品を仕入なければ、ならない。

だいたいメーカーの商品は

100円販売なら100個入

200円販売なら50個入だ。あとは100円ずつ上がるにつれて10個ずつ入数が減って行く(300円なら40個)

とりあえず4面全て200円商品にした。問屋は普通に『サンプレックス(三和電子)』や『あミューズ』などで検索すれば出てくる。

ほとんど7掛けだ。(200円の50個入なら販売価格は10000円、これに0.7掛けたものが卸値となる。なお税別なのに注意)

仕入にかかったお金

10000円✕0.7✕4=28000円

(消費税)28000✕10%=30800円となる。

※これに送料が加算されるが一旦計算しない。計算しなくても、なんとなく、この時点で薄利なのが分かるだろう。

これで、4商品が全て売切れた場合

(売上)40000−(仕入)30800円=(利益)9200円の利益だ。

※販管費など諸経費は一旦計算しない

電気、人件費などのランニングコストが、かからないから置いておくだけで9200円も入るなら御の字・・・だろうか?そう甘くない。

お店に置く以上、お店にマージンを払う必要が出る。これは業者によって利率や計算方法はバラバラなので、ここでは売上からのマージン10%としておく。

(売上)40000円✕(マージン)10%=4000円

9200円の儲けから4000円を払わなければならない。残るは5200円となった。これが定期的に上がるならいいが、初期投資にかかった機械代を相殺して行かなければならない。

新品のカプセルステーションだと一台が約50000円する。

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2台なら約10万円だ。毎月、残った5200円で初期投資を取り返すとしても約19ヶ月間(一年半以上)はプラスにならない。

厳密に言えば、これには仕入時の送料、お店に行く交通費を無視して計算している。これらも含めて考えると初期投資回収には二年はかかるかもしれない。しかも毎月コンスタントに全部キレイに売切れたらの話だ。まず、そんな事は起きない。売れ残った場合は単純に赤字かつ不良在庫がどんどん増えていく悲惨な状況になる。

では、上と同じ条件で中古にした場合は、どうなるか?機種や程度にもよるが、ボロボロの機械なら約1万程度で手に入る。2台用意しても、たった2万だ。

20000円÷5200円=約4ヶ月

4ヶ月で初期投資を回収できてしまう。

とは言え、上と同様に毎月コンスタントに全て売切れる程だったらの話で、あり得ない。

なので、ざっくり8ヶ月程度は初期投資の回収にかかるだろう。

こう計算して見ると、いかに利益が少ないかが分かる。

結局、いくらで始められるか?と言う問には

上の計算根拠同様に200円商品、本体2台の4面分でやるならば

新品なら約130800円、かなり古い中古で約50800円くらいだ。

設置費用無料でやってるうちみたいな業者は、このように、かかるお金を設置するお店に代わって、先出ししている訳だ。

売れ残りリスク

上にあるように毎月コンスタントに全商品が売り切れる事は、ほとんどない。よっぽどメンテナンスへ行かないならあるかもしれないけど。

また残りが数個になると、なかなか買おうとする人が減る。

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買ってもコンプリートできないと分かるからだ。もったいないけれど、薄利多売なビジネスでは、売れない商品を持ち続けても意味がない。赤字でも早くキャッシュ化(現金化)させて運転資金に戻さなければならない。損益を最小限に抑える為だ。株で言うなら損切りって言うものに近い。

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上の図のように不良在庫になった時に動かせる仕組みがないなら最悪な結果しか生まない。最初は商品の枠の方が不良在庫より枠が大きいが、いずれこれが逆転してしまうと、現金や商品よりも、動かせない不良在庫だけが残ってしまい手詰まりになる。

そうならないように

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不良在庫からも僅かながら、赤字でもいいので売上としてキャッシュを吸い戻す仕組みを作る必要がある。

売れ残りの捌き方

よくやってる方法としては不良在庫商品は別に取って置き、ある程度貯まれば、アラカルト品としてヤフオクなどに格安で出す。赤字でもいいので格安で出して、とにかくキャッシュを戻して損益を抑えるのだ。赤字にならないのがベストだが小売業では、見込みがハズれる事もある。そんな時は不良在庫でなんとか利益を・・・と考えるより損益を抑えるのが当たり前の事だ。だから、”不良”在庫なのだ。

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この何が入ってるか分からないようなアラカルト品でも、買ってる人はいるようだ。子供会などのお祭りやイベントごとの景品として使えるからだ。

ちなみに、うちは、この手法はやってない。じゃあ、どうしているか?と言われれば、ここに書くことはできないが、ヒントは過去のNote記事に既にある。

新品のメリット

ガチャポンの機械は一度買うと、何十年といった長いスパンで使う。電気仕掛けじゃないので、ちゃんと手入れしていれば、ほとんど物理的に壊れる事が少ないからだ。

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そのため、値崩れしにくいメリットがある。

例えば車なんか、普通の車を数年保有すると人気も下がり型落ちと言う扱いになり価格は下がる。走行距離や修復歴があれば、さらに下がる。

その点、ガチャポンの本体は、あまりに使い古されボロボロだったり、あまりに古い本体だと、そんなに値段はつかないが、本体を新品で買って、事業に失敗したとしても、中古相場がそんなに下がらないため、早目に売ってしまえば、キャッシュがそこそこ戻ってくる。売れ残った商品はほとんど戻って来ないが・・・

メディアにやられた

この雑誌やテレビによって拡められ、自分もやろう!とした人は多かった。うちにも、何人もの人が『ガチャガチャの事業を始めたいと思いますので何か分からない事を支援して欲しい』と問い合わせを受けた。

別に支援は、してもいいのだが、どこまで本気か分からないし、やっても最初は上のように儲からず、辞めていく人が多い。

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薄利多売だと何度も言っているが多売できるように場所を持っておかないと、成り立つ訳がない・・・

みんなメディアに騙されたのか分からないが、その当時、機械と商品を買い取って欲しいと言う問い合わせが激増した。一部は機械を買い叩いた。

薄利多売のDAISOが仮に今も日本に一箇所だけだとして今のような売上や世界規模の進出ができただろうか?できる訳がない。多売する店を持ってるからできるのだ。ガチャガチャのビジネスも同じである。

目立たない産業だが、他社ライバルが実はたくさんいる。大手からうちのような小さな所など、たくさんある。また最初に書いたように誰でも、参入できるので、いつの間にか現れ、いつの間にか消えてる所もある。

うちも参入した時は大手ライバルがいる事を全く知らなかったし、知ってからはライバルに資本力で勝てる気はしなかったので、スタートは、ライバルが手を出さない飲食店への設置に力を入れていた訳だ。そのおかげで上に書いたような初期費用はかかっておらず、もっと少ない費用で参入できていた。そこから拡大して行くと、うちも初期にかかる費用面で苦しんだのであった。

今は調達したくてもカプセルステーション(ガチャガチャの本体)が、あまり流通していない事に苦しんでいる・・・

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