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09/22 禁書の囁き2

アストレアは瞬いて消え、代わりに巨大な岩壁が洞の中央に出現した。
削り取られた岩壁は森乙女スクーグスローの洞を内側から押しつぶし、庭園の景観を破壊する。
洞から脱出したアストレアは削れた壁の穴から顔を覗かせると、禁書ノートーリアを通してリリスの視界を感じ取る。

「…な、何!?転移系の術なん…」リリスはぎょっとした。
獲物に観られたのは始めてで、驚きと怒りで顔を歪ませた。
(意外とやる。気に入ったわ)
リリスの内側でアストレアの声が響く。
「いかん、権限パーミッションを変更しろ!乗っ取」
マケイヌの声は最後まで届かず、リリスは意識を失った。


「気がついたか、どこまで覚えている?」
リリスは声を掛けられ、はっと覚醒した。上半身を起こし周囲を見回す。
操作台もそこにあるし、今は警報も出ていない。深く息をする。
「…森乙女スクーグスローの洞で潰そうと思ったのに…転移魔術?で入れ替えられて…視界から逆ハックされて…」
「なんだ、全部覚えているな。正直なヤツだ、アストレア」

マケイヌはリリスに起こったことをかいつまんで説明してくれた。
コントロールを強制切断で分捕られ気絶したこと。
固定地形を根こそぎ破壊されスコアを稼がれたこと。
先程までこの階に転移で降りて来ており、マークして去っていったこと。

「ありゃ無理だ。しかしあんなのもいるんだな、とても参考になる。記憶保持のために記憶を肉体から切り離し、遺物アーティファクトに食わせたタイプだ」
「食わせ…?」リリスはこめかみを抑えながら呟く。
「実際に見たのは私も始めてだ。強力な遺物アーティファクトの中には自分を形作る情報を移してポータルのRelogから逃れる手があるという。しかしもう駄目かもしれんな、記憶しか保持されておらん」
オタク特有の饒舌なしゃべりでマケイヌはまくし立てた。
「肉体の方からは順調に記憶が抜かれていてな。下手すると日常生活もままならん。そして魔術書の中の記憶だけの彼女アストレアには意欲や情熱、愛など心の動きがない。あれでは早晩肉体のほうが持つまい。彼女も自覚はしているようだったが…」

「それで、なんで私を殺さなかったの、あの女」
「気に入ったので殺さんそうだ。大したスコアにもならんということだし。よろしくと言っていたぞ」
70階あたりが定宿なんだそうだから、いつか礼でも言いに行け。マケイヌにそう煽られてカッとした。怒りだか恥ずかしさだかわからない。
「まあここにはいろんなのがいる。俺もついぞ会わなかったタイプの破滅的な研究者だな。しかし遺物アーティファクトに丸ごと記憶を保持させても所詮は模倣だと思うがな…いや…段階的に…」
ぶつぶつと呟くマケイヌに一種の嫌悪を感じながら、リリスは屈辱感に苛まれていた。

ホロウィッチのライブとホロスサントスを外から同時視聴するこの体験こそがホロアースであれと願う

お天道様が見ている下で犯罪が起きないのは日本人としては至極真っ当に思える。不特定多数が他プレイヤーを監視できるシステムというと語弊があるが、インフラやネット周りの技術がやっと追いついたことで成立できる等になった感はある。プレイを見るだけの観客が存在し、下手するとプレイヤーより多数になる時代。
プレイヤーであり観客でもあるような、またそれを投稿やライブで共有するようなプレイスタイルであれば、RPをもっとやりやすくなるのではないか。
それを補助するようなシステムが価値を増すのでは。

問題がないわけではない。時間を区切ってシーズンに分けることでRPは価値を増すし、しかし代わりに即興演劇としての確立をしすぎてしまう。全ての場面が楽しいわけではないし、入れ込みすぎてしまうのも出てきかねない。プロの演者だからこそ成り立っているのだ。プレイヤーはお客さんではなくて参加者だ。なんかコミケみたいなこと言い出しましたが。厳密に言えば警察とマフィアはごっこ遊びをしているに過ぎないと言えるが、もともとRPGはごっこ遊びであったろう。いや全てのゲームがそうか。ドロケイをGTAに置き換えて、リアルでは知らない同士でごっこ遊びをやるためにはまだ足りないことも多い。しかしGTAのRPにMMOの2.0を垣間見た気がした。もしかしたらそれがゲーム発のメタバースなのかもと。

ゲームを配信される前提、他人が鑑賞することをシステム上前提とした例は他にも沢山みつけられるようになった。スト6もその一つだ。通信対戦そのものがラグの影響を最小限に抑えて成立させられるようになった技術的な側面もさることながら、バトルハブもまたメタバースの側面を見つけることができる。他人の対戦を精密に観られるし、メタ的なゲームセンター概念はシームレスにワールドツアーモードとも接続している。

ゲームでないメタバースとしてVRchatなどもあるし、ゲームに寄せているのはRobloxがあるが、ちょっと稚拙に過ぎる。DecentralandやThe Sandbox、clasterなどとは粒度が段違いで、おそらくゲームとしてのプレイ精度が出せないうちはコンテンツとしては認められにくいのではないかと考えている。それがビジネス利用だったとしても、だ。その意味ではもう1~2段は登る必要があろう・・・話ズレたな。兎も角。

ゲームベースのMMOは再々評価されうる時が近づいていると思う。少なくともインフラは整いつつある。ブループロトコルがそれなのかと思った時期があったがどうやら違ったようだ。
AIアバターを複数駆使し、相互にRPし相互に視聴し、様々な世界に連結し、それぞれの世界が精度の高い別なゲームになっていて、プレイとビューとコミュニティがシームレスにつながる何かは、システム主導でなくゲームから、コンテンツから繁茂すると思う。

進捗は・・・別件ありまして結局動画撮れていません。だめだなぁ。約束守れないようじゃ。動くようになってくるとこれおもろいのか?と懐疑的になるよね。多少無理してやっていきたいと思います。それではまた明日。

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