見出し画像

【詩】遠 雷

遠雷が夜明けを呼んでいた
予感めいたものは
まだ彼方にあって
私の頬を冷たく撫でるだけ

雨上がりのアスファルトが
青く昇っていく陽の光に
ほのあかるく濡れていた

湿った砂埃を踏む
誰かの足音の
なまめいた響きは
機材を積むトラックの轍に
ひしゃげてしまった

そのとき鳥が
鋭く鳴いた

プレーンな食パン一枚で
朝食はすませて
残り時間は惰眠を貪る
おもに糖分の足りていない
私のあたま

疲れたままの私のからだ
ひとつ
コンビニへ投げこんで
菓子パンをひとつ買った

もっと足りないのは

空っぽのはずのあたまが
重い

作業着に着替えて
ロッカールームの
床へ座りこんだら

乾いた埃のうえで
甘ったるいパン
ひとつ
体に染みこませている

私は
きこえるはずもない鳥の
鳴き声をきく
夜明けを引き裂く
私は
遠雷をきく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?