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私の相談相手T③

私たちの連絡のやり取りはどこかいつも喧嘩越し。

T「最近どうよ?
 まーたお前のことだから、
 くだらないことで凹んでんだろ?」

私「ううん、とっても平和!」

T「は?ウザ」

本当にこんな感じ。
でも久々に連絡してきたTは、
出だしもいつもとは少し違っていた。

T「俺さ、地元帰るわ」

彼の地元は、
杜の都・仙台だ。
どうしてまた急に??

いくら問いただしても、
もう決めたからの一点張りで、
詳細を一切教えてくれなかった。
色々励ましてもらったし、
私は再度、
口約束で終わっていた提案をしてみることにした。

私「ご飯いこっか?」

なんとあっさりOK。
3日後に錦糸町でランチすることになった。

その時が5年ぶりの再会。
会った時お互いわかるかな〜と思っていたが、
全く心配要らなかった。
お互い全く変わっていなかった。

待ち合わせ場所だけ決めていたので、
ノープランでふらふらと歩き、
私たちは目についたエスニック料理の店に入った。

彼は5年前と変わらず、
いつもの連絡の感じとも変わらず、
相変わらず私に対しては口調荒めに話をし出した。
でも…
これは本心からの表情ではないな〜と、
あからさまにわかる笑顔で笑うので、
エスニック料理の店では、
あえて私は彼の近況を聞くことをやめた。

店主の女の人が他愛のない会話をする私たちに、
「コレ、サービスヨー!」
と言って、ピータンを出してきた。

2人とも絶句。

T「せっかく出してもらったんだから、 
 お前ちゃんと食えよな。笑」

私「私こう言うの苦手だって知ってるじゃん…笑」

申し訳なかったが、
ごめんなさいと心に強く感じながら、
ピータンに箸をつけずに私達は退店した。

その後、
私達は上野へ行くことにした。

T「上野に関東物産のアンテナショップが
 あるんだけどさ、
 千葉県産のひじきごはんの素が美味いんだよ。
 娘が好きでさー!」

私「へー、欲しいかも。」

そんなこんなで上野に到着。
アンテナショップで目的を早々に果たし、
私達はアメ横通り入り口のマクドナルドでお茶をした。

流石にそろそろ良かろう。

私「で、仙台には家族で帰るの?」

T「いいや、俺離婚するわ〜」

予想はなんとなくしていたが、
やはり当たってしまったか…。
何があったの?と私が聞く前に、
いつにもなく落ち着いた口調で彼は話し出した。

数ヶ月前から奥さんは他に好きな人がいて、
所謂不倫をしていること。

家族で出掛けはするものの、
半日持たずに空気が悪くなること。

娘には既に好きな人に会わせていて、
母子で外泊してくることもあること。 

一つ一つを語りだすTに、
私が怒り出してしまい、
私はその場で大泣きしてしまった。

娘連れて行きなよ!
保育園の迎えだってTが行っていることが多いだろうし、
奥さんは仕事と言いつつ、
よその男のところに行ってることもあるんでしょ?
戦いなよ!!!!

私は爆発してしまった。

でも、Tはこう言った。
T「奥さんがそうなった原因は
 少なかれど俺にもあるんだと思ってんだ。
 ここでゴタゴタ揉めてさ、
 ひまりに嫌な思いさせたくないんだよなー。」

私は流れる涙を堪えきれず下を向いた。
その時、自然と彼のふくらはぎの向日葵のタトゥーを
見つめてしまっていた。

T「一応お前離婚経験者じゃん?
 俺は何しといたらいいと思う?」

私はチャラついた彼も知っていたが、
不器用なだけで芯は優しいし、
本当は愛情深い人なのだと感じていた。
そして、
そんな彼から初めて私に相談事をしてきたのだ。
少し冷静にならねばと、
目元をハンカチで拭き、
私は大きく深呼吸をした。

これ以上戦え!と伝えたとて、
彼はこれから先も
娘さんから父と思ってもらいたいんだと。
嫌な終わらせ方にしたくないと強く願っているのだと。
…そう感じたから、
親権のことは触れずに話をした。

私「養育費については話した方が良いよね。 
 額とか支払い方法とか、いつまでかとか。
 あと…面会についても。
 自分がどうしたいのかちゃんと伝えて…。」

同情の気持ちが込み上げすぎて、
嗚咽しながらの説明になってしまった。
日にちがあるなら公正証書はあった方が良いことも、
伝えたかどうか、
今となっては覚えていない。

T「お前ってさ、俺が今まで出会った人の中で
 一番素直な訳。
 だから、俺がうまく感情出せない分、
 お前が代わりに出してくれるからさ。  
 だから、お前に一番に言ってスッキリしたわ。」

その彼の言葉を聞いてから、
私の中でTは本当に私の味方かもしれないと思った。
そして、私も、
いざという時はTの味方であろうと思った。

「そういう友達」から始まり、
実は当時お互いに気持ちがあったこと。
でもタイミングが合わなくなって、
調整しようとした矢先に私が結婚したこと。

彼の中でのモヤモヤも、
その時初めて聞かされた。

聞いたところで、
私達の気持ちが当時に戻ることは決してない。

恋愛ではなく、
お互いに表現し難い存在だと感じている。

私は何かあると、
今でもLINEや電話でTに話を聞いてもらっている。

T「お前さ、そろそろ相談料取るぞ?笑」

私「関東来たらご飯くらいは奢ろうかねー笑」

T「や、ホテルで!笑」

私「頭おかしいんじゃない?」

毎回恒例の話の流れ。
私達は当時以来、
一切体の関係は持っていない。

言ってるだけで、
望んでもいない。

そんなやり取りをしつつも、
相談事にはしっかり意見をくれる。
とてもとても辛口の意見を。

これからお互いがお互いの場所で、
幸せになることを願いながら。
これからもきっとこの関係は、
続いていくのだと思う。



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