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学生時代、死にたかった。ギャンブル狂いの父親と新興宗教にのめり込む祖父母。犬小屋みたいに狭い狭い家で、受験勉強をしていた。家にいる時はずっとアイドルソングを聴いていた。でんぱ組.inc、ももクロ、乃木坂46、Perfume。大丈夫大丈夫、この世にはこんな眩しい音楽を歌う人たちがいるんだから、きっと立ち位置が変化すれば、きっと切り取り方を変えれば、きっとこの世界は素晴らしいんだ。だから大人になるまで絶対に死なない。 二十代前半、死にたかった。家族関係が不安定だった分、帰属意識

    • 愛欲よ

      大学四年生秋、急にセッ○スを経験してみたくなった。それには一応理由があって、私は就活時期から様子がおかしくなっており、藁をも掴む思いでセッ○スを掴もうとしていた。就活での「自分がないのに自分をアピールする」ということが心底辛くて、精神的に参っていた。なんとか就活を終わらせたものの、そのナーバスさに悪い意味で変化はなく、鬱屈とした気持ちで残り短い大学生活を過ごしていた。いつも通り虚な表情でTwitterを必要以上にチェックしていると、とある投稿が目に飛び込んだ。 「鬱の人もセッ

      • 虚栄心よ

        生まれてこの方、虚栄心が強い。 凡庸で人見知りで怠慢のくせに、「特別で、才能あふれる、イケてる存在」になりたいという欲求があった。そしてそれは、いつも鈍臭い形で外に晒されていた。 元を辿れば、幼稚園の頃から始まる。 私は一人っ子で、入園するまでは大人に囲まれて玉のような子として持ち上げられて育った。それが入園すると同世代の渦に飲まれ、早送りのように移り変わる彼らの言動に追いつけず、簡単にひとりぼっちになった。自由時間は地獄だった。そのため遊具の影に隠れて、その頃、大のお気に

        • 祖母よ

          3回目のコロナワクチン接種をした。 発熱と頭痛、腰痛がある。 激痛ではないが、元来痛みに弱いので、「シテ…コロシテ…ヤサシク…」と部屋で一人うわ言を言っている。 こういう時は寝るか、ひたすらぼんやりするに限る。先ほどまで昼寝をしていたので、今は目が覚めてしまった。なので頭の中で連想ゲームのごとく考え事をしていると、体調を崩した時に祖母が作ってくれていたお粥を思い出した。 祖母のお粥は、鰹節で丁寧に取っただしを使い、ふわふわの卵と、ほぐしてはあるが身が大きな鮭と、家で漬け込ん