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バレエ感想㉓「眠れる森の美女」ロイヤルバレエinシネマ

ロイヤルシネマは今シーズン最後の作品となってしまいましたが、日本ではこれから眠れる森の美女ラッシュが始まります。とても素敵だと評判のロイヤルバレエの眠れる森の美女をやっと見に行くことができました!

次回は毎度おなじみダーシー•バッセルとペトロック•トレローニーです。眠れる森の美女は戦後にロイヤルオペラハウスが再会した時の記念すべき演目であり、ロイヤル・バレエ団が世界的な評価を得る重要な演目でもあったとのことです。ちなみに指揮者の方はアジア系で、珍しいです。

プロローグは妖精たちの踊りに目が入ってしまいますが、私はキャラクターダンサー達に釘付け。カラボスの招待を忘れて罰を受けることになる家来はシネマお馴染みのベネット・ガートサイド。最初はカツラを被っていてわからなかったのですが、コミカルな動きや表情はさすがです。彼の場合は髪がない方が自然・・・。
そして王妃は今冬に牧阿佐美バレヱ団へのゲスト出演が決定しているエリザベス•マグゴリアン。正直言って子どもを産む年齢には見えませんでしたが、そんな考えが吹き飛ぶくらい威厳に満ちており、凄みのある王妃でした。立ってる姿、優雅な佇まいや暖かな表情は王家の人間そのもので、とても厳かです。
カメラに映る場所だけでなく、映らない場面でも細かく演技しており、例えばカラボスが去った後もクリストファー・サウンダーズ演じる王様はベネット演じる家来に対してメチャクチャ怒っており、目を合わせようとせず、ベネットがオドオドしながら様子を伺うなど、出演者全員でストーリーを伝えているのが印象的でした。ベネットのオドオド具合がまた上手。

妖精たちの衣装はロイヤル独特の色合いで、例えばカナリアの精は黄色ではなく、チョコレート色の衣装です。他の衣装も独特の色合いながらも全ての衣装がゴージャスで、カメラ越しでもゴージャスさが伝わってくるのがさすがロイヤルだなと思います。どの衣装も派手なわけではないのに、とにかく豪華で素敵なのです。

カラボスのクリステン・マクナリーも迫真の演技で周りのバレリーナ達の存在感が霞むほどの強さでした。キャラクテールの存在感が凄いです。そしてカラボスはマイムだけでなく、衣装もメイクも濃くて素敵でした。シネマは顔のアップが多いので、髪型や衣装がよく見えるのですが、カラボスの衣装は色合いこそドギツイですが、レースやスパンコールの繊細な刺繍が素敵で、惚れ惚れするドレスです。
カラボスの従者はカラスっぽい衣装を着ていることが多い気がしますが、ロイヤル版はネズミで、頭にネズミの被り物をしています。凄いなと思ったのが、夏の夜の夢のロバ頭のボトム見たく、すっぽり被る被り物なのに、動きも早く、アクロバティックな動きもあり、練習量も凄まじいだろうなと思いました。

プロローグは妖精達含め、バレリーナ達もとても美しく、妖精のお付きの男性陣もベンジャミン・エラやジョセフ・シセンズなど超豪華メンバーでした。が、とにかくキャラクター達が強すぎて、キャラクター達しか印象に残っておらず・・・(汗妖精達は可愛いし、ジョセフ・シセンズは足のライン綺麗すぎだし、みんな素敵だったのですが、歴史を背負っているキャラクターダンサー達の存在感が凄すぎました。

眠れる森の美女はオーロラが赤ちゃんのシーンはプロローグで、16歳の誕生日が第一幕なんですね。主役のヤスミン・ナグディは顔こそ好き嫌いが別れますが、ロイヤル随一のテクニシャン。ヒヤヒヤせずに見れる安心感があります。ヤスミンの若々しさや華のある様子が16歳の元気一杯のオーロラ姫の若さをよく表していると思いました。
そして眠りの第一幕といえば、ローズ・アダージオですが、ここで王子を見てびっくり仰天!通常は若手のダンサーが出てくることが多いのですが、なんと大人気キャラクターアーティストのギャリー・エイヴィスが英国王子を演じており、リフト以外のサポートを全て担当するという健闘っぷり!何が驚きかというと、もちろん年齢がいっており若さこそありませんが、サポートは安定していて、動きにスキがなく、とても舞台に馴染んでいたことです。ロシアのバレエ団だとサポートは全員で分担して行っている気がしますが、ロイヤルバージョンはメインサポート担当とリフト担当の2人がメインで行います。エイヴィスの軽やかさと、サポートの安定感はベテランならではのこなれ感がありましたし、先輩からレッスンで技を受け継ぐだけでなく、舞台上でも沢山のことを学べるロイヤルの環境はやはり充実していると思いました。ちなみに金子ふみさんの回も、マリアネラ・ヌニェスの回もエイヴィスがメインサポートを担当しているので、本当にバレリーナ達にとっても一緒に踊りやすいんだろうなと思います。
そして今思えば、英国王子にサポートをメインで担当させるって英国のバレエ団ならではだな・・・と。日本のバレエ団も日本のプリンスを4人の王子の中に混ぜてしまえばいいのにw

個人的には第1幕の振り付けや構成はとても好きで、例えば糸車の針を刺してしまったオーロラは通常仰向けに倒れますが、ロイヤルバージョンだと英国王子のサポートを受けながら、横たわるように倒れるのでとても自然です。また、マリインスキーなどでは、オーロラが眠りについた後、登場人物が動きを止めることで城全体の眠りを表現していますが、ロイヤルバージョンだと階段に向かっていく登場人物達にリラの精が1ペアずつ魔法をかけて眠らせるなど、構成がとても分かりやすくて、綺麗なのが印象的でした。

幕間のインタビューは指揮者のジョナサン・ロー。英語が超ブリティッシュでインテリ感がすごくて、きっとすごくいい教育受けてるんだろうな・・・。いつもはインタビュアーなのに喋りまくるダーシ・バッセルが口を挟む隙もないくらいよく喋っているのが印象的でした。調べてみると香港出身のイギリス人だそうです。アジア系の指揮者は珍しいので、もっと活躍してほしいです。

2幕は王子がオーロラ姫の幻影と出会うのですが、ヤスミンの生気の無さがすごい!普段明るくてハツラツとしているヤスミンは本当に幻影みたいでした。ヤスミン自身も「2幕は幻影なのだから残り香を残すように」演技していると話していましたが、まさにその通りでした。
そしてリラの精とフロリモンド王子がオーロラ姫の眠るお城に移動する際の舞台セットがとても素敵でした。スモークと共に船を動かすのはどこのバレエ団でもあると思うのですが、木の形を形どったカーテンが船とは逆方向に動くので、船のスピードがとてもダイナミックに見え、退屈しません。また景色を形どったカーテンも何枚かあり、おとぎ話の中に迷い込んだようで本当に素敵でした。

お城に着いた王子はカラボスに邪魔はされますが、リラの精の援護もあり、特に戦うことなくオーロラの元に着きます。そしてキスシーンでは雷が鳴り、カラボスが消えます。

3幕もさすがロイヤル、豪華絢爛で飽きさせません。衣装は色合いこそ地味ですが、とにかく豪華なのです。おとぎ話のキャラクターも青い鳥や赤ずきんだけでなく、踊らないけれど美女と野獣なども出てきていました。フロリナ王女はファースト・ソリストへの昇格が発表されたイザベラ・ガスパリーニ。出てきた瞬間から足の甲がすごかったです。そしてジョセフ・シセンズは足のラインが綺麗でジャンプも高く、1人だけ静止画の世界でした。Youtubeでサラ・ラムのフロリナ王女を発見!

個人的には眠りの3幕のパドドゥと言ったらこのリフトが絶対みたいです。ロシアのバージョンをはじめこのリフトが簡略化されたバージョンが多いですが、音楽が最高潮に盛り上がる時にこのリフトがピタッと音にハマった時の気持ちの高ぶりはすごいです。

ヤスミンは相変わらずハツラツとして可愛く、マシュー・ボールは1月の客演時が嘘のように軽やかでプリンス感が出ていました。1月の客演時は体も重いし、生気もないしで旅疲れ感満載のプリンスでしたが、別人のようにキラキラしていました。日本でもこのキラキラが見たかったな。

ロイヤルシネマも眠れる森の美女で今シーズン最後です。どれも素敵だったのでアンコール上映してほしいです。


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