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バレエ界のギャラリーストーカーについて


1. バレエ界にギャラリーストーカーはいるのか

以前から問題視されていたが、芸術家へのギャラリーストーカーについてのニュースを読み、これは美術界だけでなくバレエ界にもあると感じた。

近年、SNSの発達でダンサーと観客の壁は取り払われつつある。また、プロのバレエダンサーが同じ空間で指導する「オープンクラス」もかなり人気が高まっており、ダンサーと観客の距離は精神的にも物理的にもかなり近くなった。

だが、様々なオープンクラスに行けば行くほど、そこには色々な生徒がいることも気が付いた。今回話すのは、「あれは今思うとギャラリーストーカーだったのかな?」と私が思った実例である。あくまでも私の印象であるが、講師側の困惑した様子から多分間違えてないだろうなと思っている。

2. バレエ界のギャラリーストーカー対策が、美術界より難しいと思う理由

まず、美術のギャラリーは基本的に入場無料であり、お金が発生するのは作品を購入いただいた時である。入場にお金がかからない以上、変な客が来たら追い払って欲しいし、警察を呼ぶくらい強気になってほしい。

しかしバレエでこの対応は難しいと思う。なぜなら、バレエは劇場であってもクラスレッスンであっても、お金を払わないと同じ空間には入れないからである。
ダンサー達の給料はお客が払うチケット代やレッスン代から発生しており、そのお客を失うということはダンサーにとって今後の収入が減ることを意味する。お金を払ってくれている以上、その生徒はお客様なのだ。もちろん、ダンサー達が身を守るために防御することは必要だが、切り方によっては自分にお金を払ってくれる存在を永遠に失う可能性もあることを忘れてはならない。でも、だからと言って講師が自分を犠牲にしなければいけないと言うのはおかしいと思う。

美術界よりも、バレエ界で働く人々の立場は本当に弱い。ダンサー達が生活を犠牲にする事がないよう、バレエ団や雇用元がきちんとダンサーを守るルールを作っていかないとこの状況の改善は難しいと思う。バレエ講師は非常に立場が弱いため、運営はもっとサポートを充実させるべきである。

3. ギャラリーストーカーを防ぐための対応策

バレエを指導する以上、距離の近さは避けられない。運営元はきちんと通報ガイドラインを整備し、講師をきちんとサポートすべきだと思う。
バレエはレッスンであってもレオタードを着用するため肌の露出が普通より多く、ポジションを直すために体を触ることもあり、物理的な距離が非常に近い。残念ながらそれに味をしめてストーカー化するバカもいると思う。

また、生徒自身もストーカーと勘違いされないために、例えばオープンクラスに参加した際は、さっさと帰った方がいいと思う。同性ならまだしも、異性相手ではことさら気をつけた方が良いだろう。長居する人に対しては、ダンサーにしてみたら「帰ってください」と言いにくいと思うからこそ、運営側が声掛けをすべきではないかと思う。
そのダンサーを好きなのであれば、迷惑をかけないよう、必要以上の接触を避けるのが真のファンだと思う。

4. 実例① 女性バレリーナと男性生徒の場合

某有名バレエ団に所属する、ある小柄でか弱そうな雰囲気のバレリーナのクラスに参加した時のことであるが、やたらとそのバレリーナに話しかける男性生徒がいた。なんと言えばいいのだろうか、卑猥な言葉こそは発していなかったが、とにかく男性生徒が一方的にしつこく話しかけていたのだ。

正直に言って、どう見てもしつこいその男性生徒にそのバレリーナは困惑していたが、男性生徒はそのバレリーナの次回公演やチケットの話を巧妙に織り交ぜており、そのバレリーナも困った顔をしながらも無視することが出来ない状態であった。それは初めて参加したクラスだったので、私にはそのバレリーナと男性生徒の関係性がよく分からなかったのだが、女性側が嫌がっている様に見えたのは確かである。

その状況から助け出してあげたいと思ったが、もし男性生徒がそのバレリーナのチケットを沢山買ってあげていたり、オープンクラスに毎回参加してギャラに必要な頭数の大切な要素となっていたら、結果としてそのバレリーナの生活にも悪影響が出てしまうかと思い、何も出来なかった。

ちなみに上記エピソードには続きがあって、そのバレリーナは小柄でか弱そうな感じだけど、別の超強そうなバレリーナのクラスでもその男性と一緒になったことがある。そのときはとても大人しくしていた。
やはりあれは迷惑行為だったんだなと思うと同時に、この手の男性は痴漢が相手を選ぶように、絡む女性を選んでるなと思った。絶対に反抗できなそうな弱めのタイプの女性を選ぶだけでなく、バレリーナが運営側に文句を言えないギリギリのラインを心得ており、巧妙であり、姑息だと思った。

正直迷惑行為をする人間については、見ている方も不快だし、バレリーナは生活がかかっているから強く言うことができない。だからこそ運営元がきちんと守ってくれるようになって欲しいと思う。

5. 実例② 男性バレエダンサーと女性生徒の場合

ところで、ストーカーに悩まされるのは、女性バレリーナだけではない。

まず大前提として、バレエ界では男性ダンサーの立場は圧倒的に強く、そもそもトラブルに巻き込まれにくい気がする。
女性バレリーナに比べ、男性は人数が圧倒的に少ないため周りから大事にされるだけでなく、仕事の多さも選択の余地も女性バレリーナとは全く違う。おそらくギャラにも差があるのでは無いかと想定している。

また、バレエ界は女性が圧倒的に多い環境ということもあり、男性ダンサーは幼少期から必然と女性達に囲まれて育つ。そのためバレエ界の男性はトラブルの芽を察知する能力が非常に高く、女性のあしらい方や距離感の取り方が上手い男性がほとんどである。(たまに距離感バグっている男性ダンサーはいて、これはこれで心配になるが)

だが、男性バレエダンサーのクラスに毎回来て、やたらと話しかける女性生徒は確かに存在する。何しに来ているのか本当に謎なのだが、そのダンサーやバレエに直接関係ないことを怒涛の勢いで延々と話し続ける女性生徒を何度か見たことがあり、男性ダンサーは困惑していた。ただ流石だなと思ったのが、やはり女性のあしらいに慣れているので、上手いこと対応し切り抜けている人がほとんどである。

ただし、オープンクラスであればそこで終わるかもしれないが、例えばパドドゥなど2人で一緒に踊る仕事の依頼をされる関係になってしまったら、今後の商売や生活が絡んでくるのでその辺の対応は大変だろうなと思った。


結論として、上記は色々な例を見た私の印象であり、ギャラリーでの例ほど悪質なものはみた事がない。だが、正直見て居る側が不快になるようなコミュニケーションを取る人がいることは確かである。オープンクラスであっても、その他バレエイベントであっても、アーティストの安全が第一に守られるよう、運営元は警備や防御体制をしっかり充実させていって欲しいと思う。

追記:
ギャラリーストーカーとは本来は画廊で作家に付きまとう迷惑客についての呼称です。最近は画廊や美術業界だけでなく、アーティストに迷惑行為を働く人の固有名詞になりつつあると思い、今回はあえて「ギャラリーストーカー」という言葉をそのまま使いました。もっといい言葉があれば教えて頂きたいです。



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