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バレエ感想⑭ 「エデュケーショナルバレエ白鳥の湖」新国立劇場バレエ団(速水/木村組)


エデュケーショナルバレエは面白そうだなと思ったものの、固定化された主演キャストだし、夏は行きたいバレエ公演が多すぎて、体力的にも金銭的にもキツイなあと思い、最初はチケットを買いませんでした。
が、たまたま見に行った新国立劇場バレエの「白鳥の湖」で、速水渉悟さんが目の前でプリンシパルに任命され、せっかくだから行ってみるかと思いチケットを購入しました。ちなみにオデットは怪我からの復帰が切望されていた大人気プリンシパルの木村優里さんです。

エデュケーショナルバレエ感想

さて、感想ですが、なんといってもナレーターの俳優さんがうまい!巧みな話術と動作で会場を一気に物語に引き込みます。
発表時は「ダンサーにナレーションもやらせれば良いのに」と思ってましたが、撤回します。やはりプロ、観客をグッと引き込む力が凄まじかったです。

王子とオデットの出会いの場のマイムを、俳優さんの主導でダンサー達もセリフを話しながら紹介してくれたのですが、これはとても興味深かったです。改めてバレエってちょっとした動きにも色々な意味が込められてるんだなと感じました。そしてとにかく俳優さんの進行が上手い!

私は速水•木村組の回しか行かなかったのですが、全キャストの感想を見てると、渡邊王子はよく通る声でとても良かったらしく、井澤王子も俳優ばりの素敵さだったらしいです。速水王子に関しては、本職はダンスなので、本職外のセリフについてはここでは言及を避けましょう。
王子の出てくる場面は、出会いの場の解説と、三幕のグランパドドゥがメインですが、ヴァリエーションは無し。とはいえ、さすがプロ、コーダでしっかり会場をわかせていました。喋るとアレレでしたが、バレエは凄かったし、もっと踊っているのを見たかったです。

そして、オデットの木村さん、今まであまり見る機会が無かったのですが、改めて見てみると手足が長く、超カワイイ!写真で見てもカワイイですが、実物は本当にカワイイ!小野絢子さんもそうですが、木村さんも含め、やはり美人の存在感は凄いなと改めて実感。
三幕のパドドゥでは、最初のリフトのアチチュードの爪先が超鎌足になっており、足捻ったんか?シューズ脱げとるんか?と心配になりましたが、普通に踊っていたので安心しました。観客は結構細かいところまで見ていまっせ!
フェッテも危なげなく周り、観客をわかせ、早着替えで王子とオデットの再会の場も演じていました。

一個だけこれはアカンやろと思ったのは、賛否両論あると思いますが、ロットバルトへの勝利を「打ち勝ちました」と業務報告のように淡々とする場面w。せっかくバレエの非日常な空気に浸っていたのに、日常感満載で観客もさすがに失笑。時間の関係で仕方がないとはいえ、サラリーマンの報告みたいでした。バレエを見たことがない人にとってはあまり気にならないかな?

今回のプログラムで良かったと思うのは、ダンサーだけでなく、オーケストラや照明、衣装など、バレエを作り上げる様々な要素に注目を向けたこと。
オーケストラは指揮者の紹介だけでなく、情景を奏でるオーボエのソロの意味を説明したり、ハープのソロを聴かせて、様々な構成要素を説明したり、本当に面白かったです。そしてお馴染みの情景は2幕と3幕で全然違う調子で演奏されることなど、音楽について沢山紹介して下さり楽しかったです。指揮者の冨田さんもマイムを一緒にやっていて、会場の一体感が増していたと思います。

ダンサーが普段浴びている照明を観客席に向けてくれたのですが、これがものすごく眩しかったです。目を開けていられないくらい眩しくて、ダンサー達はいずれ白内障になるんじゃないか?と心配になるレベルで眩しかったです。

セリフに関してはツッコミ満載でしたが、その他は本当に楽しかったです。推しの直塚美穂さんもちょっとだけ出ていたし、ベンノの中島瑞生さんがめっちゃハンサムでしたし、力強いオーケストラに触れられ、とても楽しかったです。

【良かったところ】

①子供向けに分かりやすい構成

 →プロの俳優をナレーターとして起用し、わかりやすい説明と簡潔なストーリー構成で観客をぐいぐい引き込んでいたのが良かった。

②チケットがバレエにしては廉価

 →もちろんバレエが少ないとは言え、一律5,000円はありがたい。1階席も5,000円なのがポイント

③オーケストラだけでなく、照明や衣装など裏方も紹介

 →バレエはダンサーが主役だが、オーケストラの中でもオーボエやハープなど普段は聞くことのない楽器のソロを聴けたり、ダンサーがどれくらい強い照明を浴びているのかなどを体験でき、裏方の仕事にも脚光を浴びせた

【改善してほしいところ】

①ダンサーの喋りがイマイチ。

 →新鮮ではあるが、踊りほど魅力的ではない。サラリーマンの業務報告みたいで夢がない。踊りが少ないんだし、ここはあえて喋りの上手い団員をオーディション等で発掘してチャンスを与えても良いのでは?

②キャストがいつもと一緒でつまらない

→こういうときこそ、普段は主役を踊る機会のない若手を積極的に起用すべき。そうすることでバレエをよく見にくる層も興味を持ってチケットを買うと思う。

③裏方は照明だけでなく、もっと紹介してほしい

→今回の照明の紹介はとても良かった。が、バレエを支える裏方は例えば大道具やメイク、音響など沢山あるはず。わかりやすい部分だと大道具やメイクだと思うし、衣装さんなどにも説明をしてもらえたらもっと分かりやすかったかも。


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