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バレエ感想㉔「眠れる森の美女」マシューボーンinシネマ

3月に見たマシュー•ボーン版「くるみ割り人形」がとても良かったので、「眠れる森の美女」もずっと楽しみにしていました!マシュー•ボーンの作品は斬新なだけでなく、ストーリー展開が早く、思わぬどんでん返しもあって本当に面白です。そしてダンサー達がとても魅力的で、色気がすごくて、いつ見ても素敵なダンサーが沢山いてドキドキします☺️

プロローグは子供に恵まれない王様と王妃がカラボスに願い、ようやく子宝がもたらされるのですが、オーロラは王妃から生まれるのではなく、カゴに入って玄関先に置かれるというビックリ演出!!人工授精じゃあるまいし、血の繋がりあるんか!?と思いましたが、おとぎ話なのでその辺は突っ込まないでおきましょうw
そして赤ちゃんのオーロラがハイハイであちこち動き回り、周りはてんやわんやなのですが、これは子育て経験がある人ならすごく納得できる演出です。やっと赤ちゃんを捕まえても嫌がられる様子や鳴き声など、リアルかつクスッと笑える演出が面白いです。

プロローグは眠れる森の美女初演の1890年がベースということもあり、衣装も宮廷風で、妖精達は男女混在でトウシューズこそ履いてませんが、バリエーションはクラシックでよく見るプティパ風の振り付けがふんだんに取り入れられています。例えばステップでリズムを刻む3番目のバリエーション、人差し指を突き出す手が印象的な元気な精、そして男性が踊るリラの精など、この時代を表現するためにクラシックへのオマージュが所々に見られます。マシュー・ボーンの作品でプティパ風の振り付けがあるのが新鮮です。
子どもを王様夫妻にもたらしたのに感謝されず、ブチギレたカラボスがオーロラに呪いをかけるシーンは、のっぺらぼうのマスクをつけて顔が見えないオーロラとレオも登場するなど、色々と斬新でした。

マシュー•ボーン作品なので展開が早く、プロローグから1幕に移るとオーロラが登場します。ちなみに1幕は1910年の設定なので、オーロラは16歳ではなく、21歳?ストッキングをバタバタしながら脱ぎ捨てていて、靴も履かず、メイドが困っているなど、相変わらずやんちゃな様子が描写されています。
そしてこのシーンでアンドリュー•モナハン演じる運命の相手レオが登場!ちなみにレオは王子ではなく庭師です。オーロラの部屋に忍び込み、バラをプレゼント。このバージョンの眠れる森の美女では、バラがキーとなっており、色々な場面でバラが使われます。

あっという間にオーロラの部屋から宮廷の庭園に場面転換しますが、オーロラは相変わらず超やんちゃです。そして登場人物達がテニスをするのですが、服装がラルフローレンみたいでした。ちなみに王様と王妃は帝国時代のロシア風の衣装という感じでした。

カラボスはプロローグで亡くなっている設定なのですが、この宮廷にカラボスの息子、カラドックが出てきます。そして糸車の針ではなく、カラドックがもつ怪しい色合いのバラがオーロラの死の原因となります。カラドックは無理やりオーロラと踊ろうとし、バラを渡して呪いを成就させようとしますが、雨が降ってきてしまい、登場人物は全員走りながら退散となります。
すぐに雨が止み、庭師のレオがバラの剪定のためにやってきます。オーロラも雨に濡れながらやってきますが、レオはオーロラに対して拗ねてます。そしてここで、ローズアダージオを曲が使われ、2人の愛のパドドゥが踊られます。このパドドゥがとても素敵でダイナミックで、大好きです。

ローズアダージオの曲が最高潮に盛り上がった瞬間、オーロラは呪いのバラのトゲに指をさしてしまい、倒れてしまいます。カラドックが正体を表し、王様夫妻が後悔するも時はすでに遅く、オーロラは呪いにかけられてしまいます。
クラシックだとお城の全員が100年の眠りにつきますが、マシュー・ボーン版ではレオがその場では眠らず、オーロラの目覚めを待つためになんと吸血鬼となって永遠の命を手に入れます。ライラック伯爵(リラの精)がレオを吸血鬼にするために首元に噛みつき、命を与えるというすごい設定でビックリしましたし、トワイライトを思い出しました。

2幕は普通のクラシックだと正直長いと感じるのですが、マシュー・ボーン版は使われている曲も少なく、構成も非常に面白いです。ちなみに1910年の100年後なので、2010年が舞台です。観光客の服装も現代風になっており、iphoneを使っていたりみんなでセルフィーを撮ったりしています。
夜になると吸血鬼となったレオが出てきて、ライラック伯爵がお城の鍵を渡し、オーロラに近づいていきます。ちなみにレオの服装も現代的で、ナイキのパーカーを着ています。幻想のシーンの後にオーロラが眠っている場面となるのですが、側にはカラボスの息子のカラドックがおり、キスして目覚めさせようとしますが、オーロラが目覚めません。そこへやってきた運命の男性レオにキスをさせ、オーロラが目覚めたらレオを捕え、自分と結婚させるシーンは予想しておらず、ビックリしました。

3幕はまさかのカラドックとの結婚式なのですが、ナイトクラブみたいな場所で全員赤と黒の衣装に身を包んでおり、怪しさとカルトっぽさがプンプン匂ってきます。チャイコフスキーの音楽とこのカルトっぽい集団のマッチ具合が絶妙で、すごい振り付けだなと改めて感じました。一通りカラドックやレオ、そして招待客たちが踊った後に、パブロワとチェケッティのバイオリンソロが始まるのですが、この音楽と共にウェディングドレスを着たオーロラが出てきます。赤と黒の群衆の中に白い衣装がよく映え、本当に美しかったです。この時のオーロラの無表情が望まない結婚を表している気がしました。そしてこの曲が終わるとオーロラはなぜがベッドに横たわるのですが、次の音楽でカラドックがタトゥーを見せながらオーロラを殺そうとした時、ライラック伯爵とレオによって助けられます。ここまでの流れは教祖に洗脳されているカルトみたいな雰囲気でした。

最後に、オーロラとレオの愛のパドドゥが再び踊られます。このパドドゥが、お互いを確かめ合い、慈しんでおり、本当に素敵です。オーロラのために吸血鬼となって100年待ったレオの愛が報われて本当によかったです。


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