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優里の「シャッター」が鍵になるホコリを被っていた宝物の"ヒトトキ"

「ねぇ、久しぶり!」
「ずっと、話しかけてたのに(イヤホンしてるから)全然気づかないじゃん!」
と笑いながら話す、1個上の女性。
「え!偶然ですね!めっちゃ、久しぶりじゃないですか!」
と道端で偶然会って、
緊張:6割 驚き:3割喜び:1割の状態で、
脳みそフル回転で話し上手な自分を演じる。

「あ!そういえば、良いものあるよ!」とチョコ味
のスーパーカップを紙袋から手渡してきた。

「食べる?」そう言いながら、
彼女は、自分用のチョコミントのスーパーカップを"宝石"を見つめるように、
 まるで無邪気な子供のように目をキラキラ輝かせながら、アイスを頬張っている。

「わたし、これ好きなんだよねー。」
と満面の笑みで食べている。

僕も、「そうでしたよね!昔から根強いチョコミント派でしたよねー。でも、チョコミントってほんとに好き嫌い分かれますよね!」
とつかさず、一生分かり合えないチョコミント論争の話しを、饒舌に話す自分。

「そうかなー?みんないつか分かり合える素敵なチョコミントに出会えるよ!」と
ラジオ代わりのように聞き流しながら、彼女は満面の笑みで目の前のチョコミントアイスに夢中になっている。

「あの時はこうだったよね」と思い出話しをしながら、彼女の最寄り駅まで見送る。
決して、踏み込んだ話はしない。
これ以上お互いの気持ちを傷つけないように。

「じゃあ、またね!」と笑顔で帰っていく姿を見ながら夢が覚める。

僕がその女性と付き合っていたのは4年前。
正確に言えば、当時の彼女と付き合ってたのは、
3ヶ月間。

お互いに休みを合わせて、月に一度、多くて2週間に一度、観光や食べ物、思いつく限りの彼女の好きなところを、僕がピックアップして色々なところに出かけた。

「一緒にいるのは楽しかったけど、結婚相手としては考えられなかった。でも、何かあったらいつでも連絡してね。」
そんな言葉が最後、4年経った今でも1度も連絡はしていない。

 夢から覚めたとき、心の中から「波のように引いていくあの時の気持ち」を大切にするために聞きたのは、「優里のシャッター」だった。

4年経って、その後も数人と付き合ったが、どこかで彼女の「カケラ」を探していた。
パスタが好きだったり、カフェが好きだったり…。
そのカケラを、探す時間と同時に
「あの時こうしていれば…。」「こう返せば…。」
と後悔ばかり溢れてくる。

 相手を喜ばせることに必死になっていた若かった自分。
彼女の好きなものを集めれば、喜んでくれる。
それが最適解だと信じて疑わなかった。
だから、真剣な話をするのが怖くて、真面目な話で空気が重くなるのが嫌で誤魔化し続けた
当時の自分。

今の自分なら、もっと上手く立ち回れたと思う。
もっと上手く共感できるし、相手の考えを受け止める器も、4年間の「経験値」で手に入れた。

でも、あの4年前がいなければ、ここまで一人の「ヒト」の一挙手一投足が気になって、本気で泣いたり、喜んだり、元気になることもなかった。

 失恋ソングを浴びるように聞いて、
心の中の「彼女への想いを洗い流す期間」があることも知らなかった。

友達の失恋話を聞いて、「ほんとに辛いよね」と隣で心の底から共感することも出来なかった。

「胸を締めつけられる想い」も
「その対処の方法」
も頼んでないのに教えてくれた。

一生残る
「キラキラ輝く夢みたいな瞬間」をくれた。

 今でも、「あの頃に戻れるなら全財産を投げ売ってでもやり直したい。」と嘘偽りなく言える。

しかし、あの瞬間があるから今がある。
心の底に埋めたタイムカプセルを開けてどうにかしようとしてはいけない。
それでも、「あの瞬間」の面影を思い出したい時、僕はこの曲を聴くだろう。

「人生に深みをくれた"あの瞬間"」のタイムカプセルの鍵が僕にとっての「優里のシャッター」である。

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