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情報化社会に生きている。(中編)

前回につづき、情報化社会における産業について考察します。ここでは、情報産業を、特定人(P)または不特定多数(M)どうしの間で、情報を“変換”して受け渡す機能(写像 f )としてとらえて、次の4タイプに分類します。
「P2P型」 f : P → P 、
「P2M型」 f : P → M 、
「M2P型」 f : M → P 、
「M2M型」 f : M → M 。
以下では、それらをさらに変換のあり/なしに細分するなどして、どういうサービスがあるか詳しく見ていきます。※なおこの分類だと、ゼロイチをする第一次情報産業は含まれませんが、それはすでに前回、分析をすませています。

結果を先にいうと、前回の考察とあわせ「どうも人々はすでに情報過多の傾向にあるようだ」、という仮説が導かれるように思います…。

では順に見ていきましょう。

2-1.  P2P型の情報サービス

これは、特定の人から特定の人へと、情報を受け渡すタイプの情報関連サービスです。

★2-1-1.  情報の保管/共有/自己プッシュなど
特定の送り手と受け手がほぼ同じで、何も加工しない場合。(マネタイズ度 △?)

※ 情報の保管や、特定メンバーのコワーキング用グループウェアによる情報共有、カレンダーやリマインダー・サービス、などなど。

★2-1-2.  ファイル加工/タネから自動生成系/意思決定支援など
特定の送り手と受け手がほぼ同じで、何かの加工をして渡す場合。(マネタイズ度 △?)

※ 単純にはファイル変換やファイル結合サービス、PDFや写真などのOCR(光学的テキスト抽出)加工、自分が用意したファイル群のテキストマイニングサービス?など、あるいはデータの可視化(典型は体重グラフ)とか。あとは、自動伴奏作成サイト(ヤマハ)のような、与えたタネからの自動生成系もあり。また、グループウェアみたいなので、内輪のイベント開催候補日に投票すると集計してくれるサービスもあったので、小規模な投票システム/小規模な意思決定支援。などなど。

★2-1-3.  郵便的な機能
特定の送り手と受け手が違って、何も加工をしない場合。(マネタイズ度 ○)

※ メール・チャットによるコミュニケーションサービスなど、とにかく郵便的な機能。(※同報的と時差的があり。)

★2-1-4.  デザイン/意見集約・報告・情報管理など
特定の送り手と受け手が違って、何か加工をして渡す場合。(マネタイズ度 ◎)

※ デザイナーは渡された情報を整理して(視覚)情報をつくるならここ。あとたとえばカスタマーセンターは、加工の機能を一部担っているかも。つまり、顧客(という特定の人たち)からの苦情なり質問を受けつけ、応対したあと、その内容を集計・分析して本社やクライアントに報告する部分。情報の報告や管理と言えるかも?

2-2.  P2M型の情報サービス

特定の人から、不特定多数へと情報を渡すタイプの情報関連サービス。

★2-2-1.  情報拡散や代行/通販サイト/募集系など
特定人から不特定多数へ、原則として何も加工しないで渡す場合。(マネタイズ度 ○)

※ Ameblo、Twitter、note、Instagram、ニコニコ動画、YouTubeをはじめとするブログ・日記・動画投稿系サービス。iTunesやSpotifyのような音楽・動画の配信サイト、そこへの出品代行。伝統的メディアにおける出版・放送・配信の部分。PR代行。通販サイトは、出展者の商品情報を不特定多数に見せているからここでもよい。フリーランス向けのアウトソーシングのマッチングサイトは、陳列された登録情報や入札情報を、不特定多数のひとに比較検討させてあげてるから、やはりここか。そういう意味では、稽古事の先生検索サイトも(逆に言うと生徒募集)。 このように、ひろく募集系。

★2-2-2.  編集/募集の受託/自動加工&公開/情報集約&表明など
特定人から不特定多数へ、何かの加工をして渡す場合。(マネタイズ度 ○)

※ オファーを受けて取材してメディアで発信する記者とか、文芸作品などの特定の執筆者がいるときの編集者もここでしょう。就活サイトや求人ジャーナルも、編集が入るなら原則はここ、つまり募集告知の受託というか。あと、いまはまだ存在はしないかもしれないけれど、投稿した情報を適当に“盛って”公開してくれるサイト?や、何かを取りまとめて、自動編集して発信してくれるサイトとか…?? ニーズがあるかどうかは超不明ですが。

2-3.  M2P型の情報サービス

不特定多数(の情報)から、特定の人へと、情報を橋渡しするタイプの情報関連サービス。

★2-3-1.  情報プール/コメント機能/アンケート/マーケット情報など
不特定多数から特定人へと、原則として何も加工しないで渡す場合。(マネタイズ度 ○)

※ SNSでコメントが殺到する場合とか。ほか不特定多数相手のアンケート調査など。そのような“通行人”からの情報採集が可能なサービスはみなここ。あと、単にマーケット指数を通知してくれるサービス。より一般には、公共的な場での人々の行動の、何らかの平均や全体像をプッシュ通知してくれる系。

★2-3-2.  絞り込み系/ピックアップ系/フィルター系/分析系など
不特定多数から特定人へと、何らかの加工をして渡す場合。(マネタイズ度 ◎)

※ 典型的には検索サイトなどの絞り込み系、キュレーションサービスなどのピックアップ/クリッピング系、サイトブロック機能などのフィルター系。クライアントがいるアナリストやリサーチャー的な仕事もみなここ。人力検索エンジンなど、不特定多数の人力に頼って何かをしてもらうYahoo!知恵袋のようなサービスも。カスタマイズされた投資情報の提供もここか。

2-4.  M2M型の情報サービス

不特定多数から不特定多数へと、情報をつなぐタイプの情報関連サービス。

★2-4-1.  情報プール/掲示板/口コミ/人海戦術系/衆知系/データベース系など
不特定から不特定へ、原則として何も加工をしないで渡す場合。(マネタイズ度 △?)

※ あえて言うならば、インターネット自体(多数の情報をプールし解放)。掲示板サービスや、食べログなどの口コミ系。あとは、人海戦術で地域分布を調べる系のサービス(人力天気図、ガソリン価格、神社マップなど)。あとは、多数の英知(衆知)を結集してなにか作り上げる、Wikipediaのようなナレッジプール系。Yahoo!知恵袋(の過去ログの蓄積)やFAQ集のような不特定多数の質問・回答集。電話帳の編集は、加工ありなし微妙だけどここに。ということは名簿業者も?

★2-4-2. 世論調査/大人数の意思決定支援など
不特定から不特定へ、何か加工をして渡す場合。(マネタイズ度 ○)

※ メディアが行う世論調査がその典型でしょう。また、人々の投票行動やオピニオンを集約するなど、大人数向けの意思決定支援もここ。あとは、Twitterなどビッグデータ解析結果を周知するサービスも(典型的には今日のトレンドワードとか)。一律に発信周知される株価などのマーケット情報もやはりここ。

3.  気づいた重大問題 =すでに情報過多?

これまで検討してきた結果を見て思ったこと=どうも、マネタイズに苦戦してそうなカテゴリと、そうでもないカテゴリがあるようです。

★まずは、前回見た、情報の一次生産者の不遇というか格段の難しさ ―― 始めるのはほとんど誰でもできますが、生計を立てるレベルに達するのはかなりたいへんに思えます。理論的には、第二次以下の情報産業がすべて、そこに立脚(依存)しているはずなのに。
もちろん、ほかの業態では資本がたくさん必要だったりして、始めるのすら簡単ではないかもしれません。ですが、すでに存在する会社に雇われて従事する=稼ぐならば、一次生産よりも二次のほうがむしろハードルが低いように思える。
その理由としては、最終的にお財布を持ってる人の近くにいるほど稼ぎやすいから、だとは思います。なので、そこに近くて、すでにアクセスを確立している事業者ほど売上が有利なのは当然かもしれません。

★あと、カスタマイズの程度が高い(したがって加工度も相対的に高い)ほうが、マネタイズは良好のようです。(←上図で上にいくほど良好。)

★さらに、送り手にしろ受け手にしろ、かかわるユーザーがある程度多ければ、マネタイズに成功しやすいようです。ただし、提供先があまりにもマスになりすぎると、カスタマイズの度合いはどうしても低下しますから、ふたたびマネタイズが難しくなりがちのようです?。 (←上図、左右でない中央付近が良好。)

これらをふまえて逆に言うなら、

いまの世の中、情報を生み出すよりも、
お客に合わせた情報の目利きができることや、
すごく食べやすく料理(=分析・加工・簡単化)できることが、
より多くの人から/強く求められている

ということではないでしょうか。 ――つまり、多くの人にとっては、すでに情報過多の状態にある、と結論せざる得ません。←だからこそ、情報を生み出すよりも、お客さんに合わせて整理や簡単化するほうに強いニーズがある、と。 

自分で言っておきながら衝撃の結論…的な仮説です。どうりで、池上彰さんが引っ張りだこなわけですね。だって世の中が、基本的にはひたすら「わかりやすく!わかりやすく!」を求めているわけですから…。(※ぼくも、“無意味に”むずかしいのは好きでないですけど。)
これまで、ずっと「ゼロをイチにする」のがいちばん尊いと思って生きてきたので、情報に関しては「3をイチにする」ことや、ひょっとしたら「イチをゼロにする」ことが求められているかも、というのは正直…ショックです。

さてさて、どうしたものか…。あなたなら、どうする?

明日は、ぼくなりの処方箋を書きます。
以上かのわさびでした。

理数系の教養は国力の礎。サイエンスのへヴィな使い手の立場から、素敵な科学の「かほり」ただよう話題をお届けしたいと思っています。