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285 のとてつ廃線めぐり

奥能登を旅しています。
今は鉄道がなくなり地図上から消えてしまった奥能登地方。
2005年まではかなり奥の方までのと鉄道能登線が走っていました。

赤が旧七尾線部分、青が旧能登線部分。

のと鉄道は国鉄七尾線の和倉温泉駅から輪島駅までと、穴水駅から蛸島駅までの能登線を引き継いで1988年に設立された第三セクター鉄道です。能登地方の鉄道輸送に尽力してきましたが、2001年に旧七尾線部分のうち穴水駅より先の部分が、そして2005年には旧能登線部分が廃止され、和倉温泉駅から穴水駅までの部分のみ現在も運行されています。なお、和倉温泉駅から穴水駅が残されたのは北陸本線をIRいしかわ鉄道に移管する際に鉄道運営のノウハウがなくならないようにするためと言われています。

今回は青の旧能登線部分の廃駅をいくつかめぐりました。

旧松波駅

能登町松波地区にあった松波駅。旧内浦町の中心駅でした。交換設備もある直営駅で、隣の恋路駅の記念切符は恋路駅が無人駅であるためここで販売されていました。

かつては乗降客で賑わっていたと思われる駅ですが、駅舎の裏に回ると御覧の通り夏草に覆いつくされてしまっています。

駅舎の向こうにホーム跡と待合室が見えます。自然の中に飲み込まれようとしていて何とも物悲しい光景です。

駅前広場は今もしっかり残っていて、素人目にもここにかつて駅があったということがわかります。今は北陸鉄道のバス停が設置されていました。

旧恋路駅

松波駅から3キロほど進んだところにあった恋路駅。前回のnoteでもご紹介しました。

こちらは線路残っていてホームや駅舎もきれいに整備されています。

この区間は宗玄酒造という地元の酒造会社が買い取って、「のトロ」という小型トロッコ列車を隣の宗玄駅まで運行しています。定期便を走らせているわけではなく事前予約が必要で、動力は「人間の足」。実質上はレール上を走る自転車です。

なお、宗玄酒造はのと鉄道のトンネルも買い取りそこに醸造したお酒を保管しているそうです。温度的にちょうどいいようですね。

恋路駅は恋路海岸の最寄り駅ですが、駅は少し離れた高台の上にあります。

高台の上から美しい海岸を眺めることができる絶景ポイントです。

広くはない海岸ですが、お盆までは海水浴を楽しむことができます。監視員の方はいましたが、「あくまで自己責任でねぇ~」といっていました(汗)。
この先見附島までは「えんむすびーち」と呼ばれる観光道路にもなっています。暑い中ではなかなか厳しいですが、散策にいい時期になったら歩いてみるのもいいと思います。

旧蛸島駅

さらに車を奥まで走らせます。能登半島の先端に位置する珠洲市。終点の蛸島(たこじま)駅に到着しました。廃駅になって18年ですがまだ駅舎が残っています。

駅裏は松波駅ほどはさびれておらずこのような状態で、私が滞在している間にも何人かが訪れ写真を撮っていきました。

線路の終端に見える「something is else possible」と書かれた派手な看板。なんだよ、パチンコ屋の看板か、風情ないな。と思ったら芸術作品でした。奥能登国際芸術祭の出展作品だそうで…。なんだかなぁ。駅自体も芸術作品として出展されたことがあるようです。

蛸島駅から少し西に戻ったところには車両が1台保存されています。

車両自体に触れることはできませんが、未舗装の道を歩いて近くまで行くことはできます。少し前に写真で見たときは塗装が剥げ、錆びてしまっていたのですが、足場があるので塗装しなおされたのかな。きれいに復元されていました。ここに鉄道が走っていたという確かな証を感じ取ることができます。

かつては蛸島まで結ばれていた鉄路。途切れた先にはまた別の芸術作品がありました。

折角ですので芸術作品越しに蛸島駅方面をのぞいてみました。
かつては線路上であり目の前の道もなかった場所です。

番外:西岸駅

最後はぐっと南に戻り、西岸駅を訪ねました。
こちらは今も残るのと鉄道七尾線の駅です。

この駅、アニメファンには欠かせない聖地のようで、

駅名標は西岸駅のほかに「湯乃鷺駅」というものもあります。

これは西岸駅が能登の温泉旅館を舞台にしたアニメ「花咲くいろは」に登場する「湯乃鷺駅」のモデルとなったため。10年以上前の作品ですが人気が高く今でもラッピング列車が走り続けます。

駅舎内も「花咲くいろは」に関するポスターなどでいっぱいです。

そしてこの駅、「君は放課後インソムニア」の舞台にもなりました。主人公の女子高生、曲伊咲の祖母の家をクラスメイトたちが訪ねるシーンです。

複数のアニメに描かれるとても絵になるローカル駅です。

需要が少なくなり今はなくなってしまった鉄路ですが、かつてそこに住む多くの人々の足となり、物資輸送を通じて日本経済を支えたことを忘れてはなりません。そこに鉄路があったことの意味を知り、感謝することを忘れてはならないと思いました。









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