なんでもランキング(守備編) 〜四国アイランドリーグplusデータレポート(7月第1週号)
守備に焦点を当てる
四国アイランドリーグplusは中断期間を経て、6/24(土)から後期の戦いが始まりました。
前回から「なんでもランキング」として、データを使って注目の選手やチームをランキング形式で紹介しています。今回は1球ごとのイベントデータだけでは表現しづらい守備についてお送りします。
守備の中でも特に「肩力」に注目して、ランキングと該当シーンを記載したいと思います。
前回の記事は下のリンクの通りです。
記事執筆前提となるリーグでの自分の役割は、下の記事をご覧ください。
最も強肩の捕手は誰だ?
まずは捕手から。上の表は受けた球数の多かった捕手のランキングです。香川OGは天野龍人、徳島ISは北村辰輝、愛媛MPは竹次海が多くマスクを被っており、高知FDは出原康希と嶋村麟士朗がスタメンを分け合っていました。
では、彼らの盗塁阻止の成績はどのようなものだったのでしょうか?
上記は捕手が二塁走者をアウトにして、捕殺が記録された場面を抽出したランキングです。
1球ごとのデータで、捕手から二塁手、もしくは遊撃手に送球されて直接走者がタッチアウトになったと記録された場面を抽出しています。そのため、盗塁の場面だけとは限らず、二塁走者の牽制刺も対象となっています。
捕殺回数のデータを見ると、天野がダントツの回数を残しています。リーグで投球を受ける場面が最も多かった天野は肩で魅せる場面も多かったことが分かります。
肩の強さは捕殺数や盗塁阻止率だけでは分かりづらいものなので、前期の二塁走者を捕殺した場面を一覧で紹介します。天野の送球などいくつか映像をコマ送りにして測ってみましたが、NPBでもトップクラスと言われる1.80秒は難しくても「実戦でのポップタイムがコンスタントに2秒程度」を出せる捕手はいますので、ぜひチェックしてみてください。
ちなみに、捕手のポップタイムの取り方や参考となる数字は下のキビタキビオさんの記事をどうそ。
捕手の二塁送球捕殺一覧
下記に二塁送球の捕殺の一覧を記載し、映像がある場面はリンクを貼ってあります。なお、スマートフォンからYouTubeの映像リンクを開く場合、同じ試合の違う場面を続けて開くことができないので、一度YouTubeのアプリを閉じてから再度試してください。
1位:天野 龍人(香川オリーブガイナーズ) 14回
・3月26日の18時開始の徳島IS戦、2回裏、北村の打席
・3月26日の18時開始の徳島IS戦、7回裏、古本の打席
・3月26日の18時開始の徳島IS戦、7回裏、平尾の打席
・4月1日の14時40分開始の徳島IS戦、3回表、増田の打席
・4月2日の13時開始の高知FD戦、1回表、山田の打席
・4月2日の13時開始の高知FD戦、5回表、坂口の打席
・4月9日の13時開始のソフトバンク戦、2回裏、山下の打席
・4月14日の18時開始の高知FD戦、6回表、出原の打席
・4月22日の13時開始の愛媛MP戦、2回裏、古賀の打席
・4月30日の18時開始の高知FD戦、3回裏、松堂の打席
・5月3日の18時開始の高知FD戦、4回表、坂口の打席
・5月21日の13時開始の愛媛MP戦、5回裏、浅井の打席
・5月28日の14時開始の高知FD戦、3回裏、森本の打席
・6月7日の18時30分開始の徳島IS戦、4回裏、柏木の打席
2位:嶋村 麟士朗(高知ファイティングドッグス) 7回
・4月16日の15時開始の徳島IS戦、2回表、井上の打席
・4月19日の14時開始の愛媛MP戦、7回表、矢野の打席
・4月23日の13時開始のソフトバンク戦、5回裏、石塚の打席
・4月23日の13時開始のソフトバンク戦、7回裏、石塚の打席
・4月30日の18時開始の香川OG戦、7回表、長嶺の打席
・5月4日の18時開始の徳島IS戦、9回表、柏木の打席
・5月12日の18時開始の徳島IS戦、6回裏、牧内の打席
3位:出原 康希(高知ファイティングドッグス) 6回
・4月9日の18時開始の徳島IS戦、1回裏、平尾の打席
・4月14日の18時開始の香川OG戦、5回裏、宮下の打席
・5月24日の18時開始の愛媛MP戦、6回裏、押川の打席
・5月26日の18時開始の徳島IS戦、6回裏、寺岡の打席
・5月26日の18時開始の徳島IS戦、8回裏、竹石の打席
・5月27日の14時開始の香川OG戦、5回表、水本の打席
4位:竹次 海(愛媛マンダリンパイレーツ) 5回
・5月17日の13時開始の徳島IS戦、3回表、竹石の打席
・5月21日の13時開始の香川OG戦、4回表、長嶺の打席
・5月24日の18時開始の高知FD戦、5回表、山田の打席
・6月3日の18時開始のソフトバンク戦、3回裏、山下の打席
・6月4日の18時開始のソフトバンク戦、4回裏、牧原の打席
5位:北村 辰輝(徳島インディゴソックス) 4回
・4月2日の13時開始の愛媛MP戦、2回裏、竹次の打席
・4月6日の13時開始のソフトバンク戦、8回裏、笹川の打席
・4月14日の14時30分開始の愛媛MP戦、1回表、浅井の打席
・5月26日の18時開始の高知FD戦、3回表、有田の打席
6位:矢野 泰二郎(愛媛マンダリンパイレーツ) 3回
・4月14日の14時30分開始の徳島IS戦、1回裏、平尾の打席
・4月19日の14時開始の高知FD戦、5回裏、松堂の打席
・4月27日の14時30分開始の高知FD戦、3回表、桑原の打席
7位タイ:近藤 大輔(香川オリーブガイナーズ) 1回
7位タイ:後藤 風海(愛媛マンダリンパイレーツ) 1回
以上、二塁への送球で捕殺を記録した場面の一覧です。
なお肩力とは別の視点ですが、映像を一通り見て、ショートバウンドで積極的に走るものの走者がアウトになるという盗塁死が目立った印象でした。セーフになっているものがどの程度あるかを見ないと確かなことは言えませんが、NPBに比べると積極果敢にチャレンジする走塁が多いと考えられます。
強肩の外野手を探す
捕手だけでなく、強肩ネタで欠かせないのは外野手の捕殺でしょう。上記は前期のチームごとの外野手の捕殺数ランキングで、優勝した徳島ISがこの数字もトップとなっています。
余談ですが、私が雑誌の野球選手名鑑の編集に携わっていたときに、高知FDからロッテに入った角中勝也の紹介記事を執筆していたことがありました。取材でとあるアマチュアのスカウトの方から聞いた話が「ライトを守っていた角中の三塁への送球が、とても印象に残る見事な球だった」というものでした。
プロのスカウトもその印象が残っていたかは不明です。ただ、外野からの矢のような送球は印象に残る一芸であり、より高いレベルの野球でお客さんからお金を取れる魅力的なプレーだと思いますので、ないがしろにはできません。
外野手が捕殺を記録したプレーは個人のランキングにするほどの数がなく、1から映像を探すのは大変だと思いますので、今回はその捕殺の場面を一覧で紹介します。
外野手の捕殺場面一覧
徳島インディゴソックス 8回
・3月25日の18時開始の高知FD戦、7回表、レフト寺岡 丈翔の本塁送球
・3月26日の18時開始の香川OG戦、3回表、センター井上 絢登、ショート佐々木 海渡の三塁送球
・4月1日の14時40分開始の香川OG戦、4回裏、ライト増田 将馬、セカンド柏木 寿志の本塁送球
・4月14日の14時30分開始の愛媛MP戦、6回表、レフト寺岡 丈翔、ショート佐々木 海渡の本塁送球、
・4月14日の18時開始の愛媛MP戦、6回表、レフト寺岡 丈翔の本塁送球
・4月30日の13時開始の愛媛MP戦、4回表、ライト増田 将馬、セカンド柏木 寿志の三塁送球
・5月12日の18時開始の高知FD戦、4回表、ライト増田 将馬の本塁送球
・5月20日の18時開始のソフトバンク戦、5回表、センター井上 絢登、ショート佐々木 海渡の三塁送球
高知ファイティングドッグス 5回
・3月25日の18時開始の徳島IS戦、6回裏、センター森本 玲委也の二塁送球
・4月30日の18時開始の香川OG戦、2回表、レフトのサンフォ ラシィナの二塁送球
・5月3日の14時30分開始の香川OG戦、7回裏、センター有田 諒嘉の本塁送球
・5月14日の17時30分開始の愛媛MP戦、5回表、ライト坂口 大輔の三塁送球
・5月27日の18時開始の香川OG戦、5回表、レフトのサンフォ ラシィナの本塁送球
愛媛マンダリンパイレーツ 3回
・5月4日の13時開始の香川OG戦、1回裏、センター三上 愛介、ショート河野 聡太の本塁送球
・5月6日の13時開始の香川OG戦、5回表、ライト堀川 優斗の本塁送球
・5月19日の14時30分開始の徳島IS戦、7回表、レフト浅井 玲於の本塁送球
香川オリーブガイナーズ 2回
・5月3日の14時30分開始の高知FD戦、6回表、ライト森本 大輔の二塁送球
・5月27日の18時開始の高知FD戦、5回裏、レフト田川 涼太、ショート長嶺 孝宣の二塁送球
以上、外野手の捕殺の場面を一覧で表しました。全体的に、外野からのダイレクト送球での捕殺、いわゆるレーザービームの場面はそれほど多くない印象です。低くカットマンをめがけて投げる選手が多く、堅実なプレーが目立っていました。そのため、外野手の肩力よりも遊撃手として中継に入っていた徳島ISの佐々木海渡の送球が個人的には強く印象に残っています。
チーム全体の守備力を測る「DER」
以上、肩力を注目したいシーンを中心にデータや映像を紹介しましたが、最後に、DERという指標を紹介して終えたいと思います。
DERとはDefense Efficiency Ratioの略で、公式記録から簡易的にチームの守備力を測る際に活用します。算出方法の詳細はこちらのサイトもご覧いただくと良いと思いますが、何を表しているかを一言でいうと「グラウンド内に飛んだ打球をどのくらいの割合でアウトにしたか?」です。
数値が高いほどアウトにする割合が大きいことを表しており、例えば前期のDERが1位の徳島ISはグラウンド内への打球の69%をアウトにしていたという意味になります。
グラウンド内に飛んだ打球は野手の守備位置や守備力次第でアウトにできる可能性があります。守備は守備位置の決め方など、チームの戦術で変えられる余白が大きく、この数値は失点を減らすためにチームとして目指す指標として適切でしょう。
例えば、前期のDERが4位だった高知FDは、失策や野選で出塁を許す場面が38回と多く、仮に失策や野選での被出塁を10個にまで減らすことができていたらDERはトップになっていました。
もちろん、安打を防ぐ好プレーでもDERは上がります。ある程度以上のレベルの野球であれば、DERが7割を超えているチームの守備は主観的にも堅く見えると思います。後期はDERが7割を超えるようなチームが出てくるか、注目したいと思います。
このように、データ化しづらい守備ですが、工夫次第で様々な情報を得ることが出来ます。
なお、海の向こうではトラッキングデータを活用することで、下記のようにポジショニングやアウト奪取能力などの個人の守備力を測る方法が編み出されていますので、参考までにリンクを貼っておきます。
<参考>MLBのポジショニングのデータ
<参考>MLBのアウト奪取能力のデータ
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