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過去最多の9名が指名されたNPBドラフト会議2023速報! 〜四国アイランドリーグplusデータレポート(10月23日週号)


四国アイランドリーグplusから9名が指名を受ける!

10月26日に「2023年 プロ野球ドラフト会議 supported by リポビタンD」が行われ、独立リーグ各球団からは過去最多となる23名、日本独立リーグ野球機構(IPBL)傘下の球団からは22名の指名がありました。

四国アイランドリーグplusは各リーグの中で最多、かつ四国としても過去最多となる9名(支配下3名、育成6名)
が指名を受けました。

今回は指名を受けた各選手の情報を整理しておきたいと思います。

※記事執筆前提となるリーグでの自分の役割は、次の記事をご覧ください。

各媒体で掲載していたドラフト候補関連記事まとめ

最初に、四国アイランドリーグplusや独立リーグ関連で掲載されていた記事をまとめておきます。

指名された選手はほぼこの中に名前が出ていますので、シーズン中に独立リーグでどのような活躍をしていたか、確認していただけると思います。

1、スポーツナビ

2、野球太郎

3、note「独立リーグのデータ活用を推進する」

それでは、四国で指名された各選手を簡単におさらいしておきます。

阪神2位:椎葉 剛(徳島)投手

社会人のミキハウスを経て加入した椎葉は今年の独立リーグ全体を代表する投手として春から名前が上がっていました。

シーズン中の最速は157 キロ。独立リーグ日本一を決めるグランドチャンピオンシップ(GCS)では159キロをマークし会場がどよめきましたが、ストレートの奪空振り率もリーグトップであり、球速が速いだけの投手ではありません。力感を感じさせないフォームからのストレートと、空振りを奪えるスライダー、フォークが魅力です。

豊作と言われた大学4年生投手と同じ年代であり、その中で2位指名を勝ち取ったことは本人にとっても自信になると思いますし、それだけの実力がある投手だと思います。

西武5位:宮澤 太成(徳島)投手

長野高校から北海道大学(在学中)という異色の経歴でもある宮澤は上記のデータサイトに飛んでいただけると分かる通り、今季の公式戦はほぼ8月以降の登板でした。

映像にある通り155キロをマークしていますが、この球速だけでなく打者がストレートと錯覚するフォークが武器で、変化球の奪空振り率がリーグトップです。

今年、九産大から楽天に入団した渡辺翔太がパームボールを武器に活躍していますが、個人的には彼ような活躍を期待しています。

DeNA6位:井上 絢登(徳島)内野手

野手で支配下での指名を勝ち取った井上はパワフルなスイングが魅力の選手です。2年連続でリーグの本塁打、打点の2冠に輝いており、昨年と比べて打率も大きく上げています。

今年も前期は中堅手として出場していましたが、後期は三塁を主に守っており、指名も内野手としてでした。

三塁守備での好プレーは下記の映像でご確認ください。

昨年、育成4位で指名され開幕スタメンを勝ち取ったオリックス・茶野篤政よりもともとパワー面での評価は高い選手なので、独立リーグ出身野手としては最高峰であるロッテの角中勝也に追いつき、追い越すような息の長いバットマンとしての活躍に期待したいです。

西武育成1位:シンクレア ジョセフ 孝ノ助(徳島)投手

徳島での登録名は「シンクレア」。5月に入団すると、11試合に投げて防御率0.67の数字を残しました。

193cmの左腕ですが真上から投げ下ろす角度ではなくやや斜めのリリースで、ストレートで空振りを多く奪うタイプではありません。ただ、その分カーブ、スライダーが独特の軌道で成績が良いです。

あくまでも速報用途での球種の集計なので信頼度は高くないですが、カーブ、スライダーでは28打数0安打と、シーズン中にヒットを打たれていません。

個人的には支配下での指名があると思っていた投手なので、ぜひ来年早々に支配下登録を勝ち取り、一軍で活躍する姿に期待しています。

西武育成2位:谷口 朝陽(徳島)内野手

西武の2位で高卒1年目の谷口が指名されました。リーグのデータサイトをご覧になっていただくと分かる通り、今季は投手として3試合に出場したのみの成績です。

編成部(アマチュア担当)評
身体能力が高く、伸びしろが満載です。野手として期待しています。

埼玉西武ライオンズHP「2023年「プロ野球ドラフト会議」全指名選手」より該当箇所を抜粋
https://www.seibulions.jp/news/detail/202300351919.html

投手登録でしたが、まさかの野手指名。西武の球団HPでも野手として期待しているという旨のコメントが書かれています。

徳島の公式YouTubeでも野手挑戦の様子がアップされているので、ぜひ野手としての動きを確認していただければと思います。

中日育成2位:菊田 翔友(愛媛)投手

中日の育成2位で指名された菊田は享栄高校出身の2年目で、高校の同期にはヤクルトの竹山日向がいます。

先日、独立リーグのグランドチャンピオンシップの後に「愛媛の選手がファンと一緒に松山市内を観光するツアー」があり、自分もリーグ側として付き添いをしたのですが、そのときに選手代表として参加したうちの一人が菊田でした。ファンの方向けのインタビューで竹山と定期的に連絡を取っているエピソードも話してくれました。

映像にある通りストレートとフォークが魅力の投手で、リリーフ向きだと思います。実際にリーグではフォークの被打率が低いですが、NPBのレベルではこの変化球を見られて苦労する可能性は高いと思いますので、高知から阪神に入団して活躍している石井大智のように、ストレートを軸として使える投球スタイルへの成長が求められると思います。

菊田はGCSでの登板でもカウント球でフォークを使うなどフォークには自信を持っていると思いますが、それを最大限に活かすためのストレートをどこまで伸ばせるか。球速、球質、フォームの変化に注目しておきたいと思います。

巨人育成3位:宇都宮 葵星(愛媛)内野手

巨人の育成3位指名を受けた宇都宮は高卒1年目の内野手で、主にサードやショートを守っています。リーグ初の2世選手でもあり、父親の宇都宮勝平さんも愛媛の選手でした。

快足が魅力で、投球の軌道にバットを入れてミートポイントを長く取れるようなスイングにも将来性を感じます。独立リーグよりひとつ高いレベルでの経験を早く積むことによって才能が開花する可能性のあるタイプだと思いますので、まずは二軍で多くの経験を積んでほしい選手です。

オリックス育成5位:河野 聡太(愛媛)内野手

愛媛の遊撃手・河野は球団公式の映像集がなかったので、前期の本塁打の記事を載せておきます。上記note中段の辺りから前期の本塁打2本のリンク飛べます。

彼の一番のセールスポイントは個人的には守備、特にハンドリングの柔らかさと送球の動作への移行のスムーズさ、正確性だと感じています。

打撃成績はリーグトップクラスですが分かりやすい一芸ではなく、このタイプの野手はなかなか評価されづらいかなと思っていましたが、パ・リーグ3連覇中のオリックスで茶野に続き支配下登録され一軍に常時出場できるとなれば、独立リーグの見方がより変わってくると思います。

ソフトバンク育成7位:藤田 淳平(徳島)投手

今年のリーグで最優秀防御率を獲得した藤田がソフトバンクから育成7位指名を受けました。

ストレートの奪空振り率がリーグの左腕の中ではトップで、西武育成1位のシンクレアとは違うタイプで空振りを取れるストレートが魅力です。

ただ、9月3日に先発してアクシデントで1回投げきれず降板して以降公式戦は投げておらず、久々の登板となったGCSの初戦でも1イニングを2失点と良いときの藤田の姿を魅せることは出来なかったのですが、年間通したパフォーマンスを評価してもらえたのはとても良かったと思います。

藤田も分かりやすい一芸のタイプではないので、いままでの独立リーグの選手としては指名されづらいのタイプだったと思います。それだけに、活躍すれば独立リーグの印象を大きく変える選手のひとりです。

独立リーグ23人の指名は一過性のものか

以上、四国からの指名選手を紹介しました。本当は他の独立リーグの選手も紹介したいのですが、指名を受けたが多く嬉しい悲鳴で文字数が長くなっているので、今回はこのあたりにしておきます。

今年のドラフト会議では、社会人が支配下で14名、独立リーグが支配下6名、育成17名(IPBL傘下は16名)と、独立リーグが社会人からの指名数を大きく上回りました

独立リーグも「プロ」なので、ドラフトで指名されたと言ってもメジャーリーグとマイナーリーグの関係性で例えるならAやAAのリーグからAAAに引き上げられた、という感覚で良いと思っています。ひとつレベルの高いリーグに挑戦できる権利を得たということです。

ただし、いままではNPB各球団が独立リーグを米国でのマイナーリーグの球団のようにはそこまで捉えられていなかったため、今回ほど多くの選手が指名されることはありませんでした。

指名された選手のこれからの活躍次第ではありますが、今回のドラフト会議がNPB各球団と独立リーグ各球団の関係性を変え、日本のプロ野球のあり方を変える大きな分岐点となる可能性は十分にあるでしょう。

個人的には、野球を通して主体的に稼ぐことのできる「プロ」の発展が日本のスポーツ産業を牽引するだけでなく、IPBLのHPにもある通り公共財としてのスポーツの価値を高めていく上で欠かせないと考えています。

来年20年目を迎える四国アイランドリーグplusを始め、今後の独立リーグの動きに注目していただき、NPB各球団のファンの方やドラフトのファンの方もぜひ現地へと足を運んでほしいと思います。


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