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とあるカフェ&BARで 〜 ビジュアルと味付け

この夜は、ラジオ収録日でもありエミホと常連の女性二人が仕事終わりの20時過ぎに来店した。夜でも圧迫感を感じるような蒸し暑さの中、足を運んでくれた3人ととりあえず乾杯する。

この日の食事メニューは、ハンバーグセット1500円一択で、このカフェ&BARでは、お客さんからのリクエストがある場合以外、私が作りたいものを作るシステムになっている。実際には、作りたいものと言うよりも、楽で一度に提供できるメニューを選択するようにしている。

ハンバーグセットの中身は、ポテトサラダ、ハンバーグ大根おろしと煮タマゴ添え、豚肉ともやしと万願寺とうがらしとゴーヤの蒸し煮。ご飯は欲しい人だけ。文字で書くといいもののように見えるが、ただそれらを器に乗せただけのものだ。

予め下ごしらえを済ませてあるので、手早く温めて3人の前に料理を置いていく。

「うわぁ〜、手作りや〜」
と、騒ぐエミホの言葉には、普段の収録日に出来合いのものばかり食べさせられている恨みがこもっている。

3人はひと通り料理を眺めてスマホを取り出し、思い思いの構図でパシャリパシャリ。

その後、賑やかに喋りながら箸を動かしては、

「ん〜、美味しい、柔らかい」とか、

「豚肉と万願寺ともやしとゴーヤ?」
と、素材を点呼している。


ここで、数時間巻き戻してこの夜の仕込みの内幕を暴露してみたい。

まず、ポテトサラダは、いつも通りにジャガイモをレンジで加熱して温かいうちにバターとゆで卵を加えてヘラで潰し、さらに塩、粒マスタード、マヨネーズを加えて混ぜる。この日はそれにプチトマトを添えて出来上がり・・・。のはずだったのだが、後で考えるとゆで卵を入れ忘れていた。

ハンバーグは3人分なので、合い挽きミンチ600グラム、タマネギ一個みじん切りをナマのまま加え、卵黄2個をしっかり手でこねる。
ここで、問題発生!
ハンバーグを作るのは半世紀ぶりなので、下味に使う調味料の量がわからないし、ナマ肉を味見するわけにもいかない。
困った私は、固形コンソメをお湯で溶かし、それを冷まして材料に加えてみた。
これなら、スパイスも入っているような気がする。
ただ、水分を加えたことで混ぜ合わせたものが柔らかくなったので、今度はパン粉を加えてカサ増しをする。
あとは適当に形成してオーブンで焼けば、3人分6個のハンバーグが一度に焼ける。
それに大根おろしと半熟煮玉子を添えて味見をしないまま提供したが、食べられる味だったようだ。
煮玉子は7分茹でてめんつゆに1時間ほどつけたら簡単にできた。


名前のない豚肉と野菜の料理は、フライパンにもやし一袋を敷き、ゴーヤと万願寺とうがらしをその上に散らすように置く。豚肉250グラムをめんつゆ、たたき梅3個分、片栗粉を混ぜた調味液に浸して馴染ませ、野菜の上に偏りのないよう広げておく。
あとはフライパンに蓋をして弱火で10分加熱すれば、混ぜる必要はない。
が、フライパンの蓋がなかったのでアルミホイルで代用した。
この料理は豚肉のつけダレを味見できるので、大きな失敗はないはず。

「料理は実験と失敗と修正の繰り返しだ」と、妙な言い分でお客さんを実験台にして面白がっている。

SNS全盛の近頃では、味よりも写真撮りたさで行列ができたりもするが、うちの料理はビジュアルも茶色一色だったりするので、あえてその写真はここに載せない。

掲載の写真は、当日店内の大型モニターで長岡花火を大音量で投影していたもの。涼しい場所でお酒を飲みながら観る花火は最高で、彼女らも感嘆の声を上げていた。

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