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チシアンの画いた絵が

たかがドラマですから、つまらないと思ったら観なければいいだけなんです。

ですが、大好きな音楽家が主題歌を歌っているとなると、そのドラマのいいところを見つけたいと思ってしまう。

米津玄師さんが主題歌を担当する『リコカツ』。

去年の『MIU404』のドラマの面白さ、それに加えて米津さんが担当した主題歌『感電』が絶妙にマッチしていて、互いに良さを引き出し合っていた。

また、『アンナチュラル』の主題歌だった『Lemon』。人の死がテーマのドラマで、愛する人との永遠の別れを歌った曲にも関わらず、悲しみを浄化してくれるようだった。

それらがあるから、観ている私のハードルも上がってしまったのかもしれない(『馬と鹿』はドラマというより、ラグビーの主題歌にだったと思うのであえて触れません)。

第1話を観て、「ん?」と思うことの連続だったので、米津玄師さんが主題歌を歌っていなければ、そうそうに観るのをやめたと思う。

「もしかして、面白くなるかもしれない。観てもないのに、つまらないとはいえないし」

そう思って、今日、やっと『リコカツ』の第2話から第4話まで観た。

たかが、ドラマですから、いろいろ、おかしなところがあっても、とやかく言う必要はないのですが、最後の米津さんの美しい曲がそぐわない気がしてなりません。

ドラマの最後に流れる米津さんの声を聴きながら頭に浮かんだのは高村光太郎の『智恵子抄』の最初の詩「人に」でした。

これは、自由で魅力的な智恵子が平凡な結婚をするかもしれないという時に光太郎が書いた詩。

平凡な結婚、智恵子にそんなものは、似つかわしくない。

「まるでそう

チシアンの画いた絵が

鶴巻町へ買い物に出るのです」

“チシアン”はイタリアの画家、ティツィアーノのことで、『聖母被昇天』を始めとする神聖で高貴な女性像を描いています。

“鶴巻町”は、早稲田のあたりのようですが、通俗的な町を象徴していると思います。

まるで、似つかわしくないもの。

ドラマを楽しんで観ている人には、申し訳ないんですが、『Pale Blue』が流れると、寂しい気持ちになります。場違いな気がして。




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