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大麻取締法改正|THC残留基準の厳格化とカンナビノイド医療に与える影響|微量THCを必要とする患者に選択肢は残るのか?

こんにちは、カンナビノイド研究所の中川智裕です。2024年9月11日、大麻取締法の改正により、THC残留基準値が大幅に厳格化されました。新しい規制は、製品の安全性を向上させる意図がありますが、一方で、カンナビノイド医療に依存する患者にとっては深刻な影響をもたらす可能性があります。特に、微量のTHCを必要とする患者にとって、治療の選択肢が失われるという懸念が広がっています。

新たなTHC残留基準値

今回の改正により、カンナビノイド製品に含まれるTHC残留基準値は以下の通りに設定されました。

  • 油脂(常温で液体のもの)および粉末:10ppm

  • 水溶液:0.1ppm

  • その他**:1ppm

これらの基準値は2024年12月12日に施行され、これを超える製品は市場に出回ることができません。特に、水溶液製品の基準は非常に厳しく、多くの製品がこの基準をクリアするのは難しいと予想されます。

微量THCを必要とする患者の現状

「カンナビノイド医療患者会:PCAT」に参加している患者の中には、微量なTHCが治療に不可欠な方が多く存在します。これまで、200ppm程度のTHCが含まれる製品を使用していた患者さんもおり、微量なTHCが症状の緩和に大きな効果をもたらしていました。特に、慢性疼痛や神経障害、てんかんなどの症状を抱える患者にとって、THCの存在が治療効果を高める重要な役割を果たしています。

今回の厳格な基準によって、微量なTHCを含む製品が市場から消える可能性が高く、患者さんが必要とする治療法へのアクセスが制限される懸念があります。特に、従来の製品では十分な効果を得られていた患者にとって、新基準に適合する製品では効果が不十分になる恐れがあります。

厚生労働省の対応|特定臨床研究への道

一方で、こうした患者のニーズに応えるために、厚生労働省は微量のTHCを必要とする患者を対象に**特定臨床研究**を行うことを認めています。これにより、一定の条件下で、医療現場においてTHCを含む製品の使用が許可される可能性があります。しかし、この特定臨床研究は非常に限られた枠組みであり、全ての患者が参加できるわけではないため、治療法へのアクセスが完全に保障されるわけではありません。

業界への影響|厳格な基準がもたらす課題

今回の基準は、カンナビノイド業界にとっても大きな課題を突きつけています。特に、CBD(カンナビジオール)が保存や加工の過程でTHCに変性するリスクがあるため、製造工程や保管環境の厳密な管理が求められます。これまで使用されていた技術や方法では、新基準をクリアすることが難しいため、多くの企業が新たな品質管理体制の整備を迫られることになるでしょう。

また、対応可能な検査機関が限られていることや、検査コストが高額であることも業界の負担を増大させます。特に、中小企業にとってこの負担は大きく、結果として市場から撤退する企業が増える可能性があります。これにより、業界全体の成長が停滞し、消費者にとっても選択肢が減少する懸念があります。

フルスペクトラム製品とブロードスペクトラム製品の今後

フルスペクトラム製品は、大麻草に含まれる全てのカンナビノイドを含むため、THCの微量な含有が避けられないのが現実です。そのため、新基準に適合するフルスペクトラム製品を市場に出すことは非常に難しく、多くの製品が市場から姿を消す可能性があります。

一方、ブロードスペクトラム製品THCフリー製品は新基準に適合しやすいため、今後はこれらの製品が市場の主流となることが予想されます。しかし、これらの製品では、THCを必要とする患者にとって十分な効果が得られない可能性があるため、依然として課題は残ります。

まとめ|柔軟な対応と新たな治療法への道

2024年12月に施行される大麻取締法改正によるTHC残留基準の厳格化は、カンナビノイド医療に依存する患者や業界全体に大きな影響を与えます。微量なTHCを必要とする患者の選択肢が制限されるリスクは深刻であり、特定臨床研究の枠組みを活用しつつ、患者が適切な治療を受けられる体制を整えることが急務です。

また、業界としても厳しい規制の中で、品質管理やコスト削減に向けた取り組みが必要です。消費者にとって安全で信頼できる製品を提供し続けるために、政府、業界、医療関係者が連携し、柔軟かつ創造的な解決策を模索することが求められます。

引き続き、カンナビノイド研究所では最新の情報や業界動向をお届けしてまいります。どうぞご注目ください。