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【連句コラム 3】転じの妙
連句が何より大切にする「転じ」について、一介の連句愛好者の底辺の端っこにぶら下がる者として考察してみたいと思います。テキストは、引越しでバッサリ処分してほんの数冊持ってきた書籍の中の一冊「連句辞典」です。
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自分の句が果たしてうまく転じているのか、そこは人間の創作である限り曖昧さがあり、だからこその式目であると思います。
やたら細かく式目が定められているのは、結局そこまで意識しないと、人間というのは同じ話をダラダラ続けてしまうものなのでしょう。
A 打越
B 前句
C 付句
CBの付句を考える時、ABの句から、普通に脳は関連情報を差し出してくるでしょう。一往復の返歌ならばそれがあたりまえでも、百韻ともなれば、縛りがないと延々と同じような句ばかり続いてウンザリしたのかもしれません(想像ですが)。
連句の題材は、森羅万象、天地万物すべてを盛り込むのがよいとされています。卑近な出来事もまた良しですがそれだけではなく、神祇・釈教・恋・無常・述懐・病体・地名・人名、その他世界のあらゆる視点を盛り込む事を意識する、自分ひとりでは届かなかった境地に、他の連衆が運んでくれる、そういうところが連句の醍醐味ではないかと思います。
連句のこのような性質から、付句は臨機応変に作られたフィクションになります。この作為的とも言えるフィクション性が、文学ではない、とした正岡子規の連俳非文学論というのもあったそうです。
連俳非文学論
正岡子規が明治二六年の『芭蕉雑談』に発表したもの。「連俳」とは、「連句」のことである。これによると「連句」は文学ではなく、文学の分子を有しないわけではないが、その文学の部分は発句で十分である、とする。文学以外の分子をもつ理由として、連句に貴ぶものは変化であり、その変化は、終始一貫した秩序と統一の間に変化するものでなくて、全く前後関連のない突然の変化であるから、そのようなものは、文学と認められないというのである。子規が変化というのは、転じのことで、この付けと転じの調和と変化とに連句のおもしろさは存在するが、子規は発句を取り上げて、俳句として独立させることに全力をあげていた時であり、彼のいう写生説は連句のフィクションとは相合わぬ部分が多く、遂に連句の真価を認める事が出来ずこれを認めようとしなかったのである。
フィクションが文学ではないということはないので、これは極論なのですが、文学への嗜好性のひとつではあるかもしれません。アートとデザインの違いみたいなものでしょうか。
私は個人的には技巧で作られた叙情みたいな世界が好きなので、連句の創作は性に合っている気がしています。
強制変化装置としての式目には、句数・去嫌があります。
句数・去嫌について ↓
春や秋などの句を続ける場合、季戻り(晩春の前句に対し初春の付句をするなど)は避けることになっていますが、現在開催中の連句ではそこは無視しています。
それ以外に、今のところ全く無視している式目がありまして……
それが人情自他場というものです。
連句のおもしろさの中心は人間の姿・感情・思想などの種々相を描くことにあり、山川草木などの自然の美しさを詠むことではない
という原則があり、その為人に関連する句が多くなるわけですが、そこでも変化をつけるために、
人情自の句……作者が作中人物としての視点に立ち、他人を含んだり匂わせたりしない自分だけを表現したもの
人情他の句……作中人物の自分(作者の視点)から見た他人に関わるもの
人情無し(場)の句……人物の存在を匂わさない表現の句(付所は、其場・時節・時分・天相を主とする。情景を見ている作中人物としての自分の姿は見せない)
という区別があります。
人情の句は二句以上続けなくてはならず、人情無し(場の句)は二句までは続けてもよいが、それ以上は続けないという原則があり、人情自他場は打越と被ってはいけません。
正直私はもうそこまで頭が回りません……
努力目標ということで……
俳諧の先人がこのように執拗に変化を求めたのは、日本に四季があることや、天災も多く永劫続くものなどないというスクラップアンドビルドな人生観の現れなのかなと思いました。
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