正気を保ちつづけるには足りない──ヴィム・ヴェンダース『PERFECT DAYS』感想
質素でミニマルな生活様式は、ただミニマルなだけではなく「精神的な余裕」をプレゼンスとして広告表示されるものでなければならない、という強い偏見が今の社会にはないだろうか。
ヴィム・ヴェンダース『PERFECT DAYS』は、そうしたミニマルな生活様式へ向けられたよくある偏見──貧しくても慎ましい生活している人であれば、それだけ心の余裕(心の豊かさと言われるような気質)を持っているはずである、という偏見──を、明らかに商品広告化している。
役所広司演じる平山という男の生