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味蕾diary第10回【サラダ】

僕は生徒数日本1の日本大学を卒業している。

生徒数が多いので、いろんな人がいる。

大学時代の仲の良い友人達は高校以前であれば仲良くなっていないだろうな
という友人が多い。

なんというかもし出会いが高校以前なら
絶対仲良くなっていないだろうと
思う様な共通点が少ない6人でよく固まって遊んでいた。

明らかにチャラいやつ、めっちゃ野球部なやつ、見るからにサブカルなやつ、意識高いやつ、引きこもりみたいなやつ。

今回のnoteに記すのは
引きこもりみたいなやつの話だ。

かなり過激な表現をしている様に
思うかもしれないが
本人も自覚しているので問題ない。

その友人は今、現在就職するまで
一度もアルバイトをしたことがなかった。

さらに、サークルにもほぼ入っていなかった。

かと言って、勉強に励む訳でもなかった。

家は茨城県で、車で最寄り駅まで行き大学まで合計2時間半近くかかりながら通っていた。

こんな大学生はいるのか?
まぁ探し回ればいるんだろうが、
かなり珍しいと思う。

そいつとはよく授業の合間や放課後に
酒を飲む訳でもなく、
一緒に勉強するわけでもなく、
イナズマイレブンの技名をどちらかが言えなくなるまで言い合うという
女性にモテる訳ない遊びをよくしていた。

そんな個性的な友人の特徴の中で
僕が1番衝撃的だったのは、
サラダを頑なに食べないというところだった。

しかも、食べれない訳ではないのにだ。

いつもの6人で大学の近くのカレー屋に
行った時、セットでついてくるサラダを
他の奴に食べさせていた。

「僕は良いです。食べてください。」

もう大人なんだから食べろよ。
しかも、絶対みんなから笑われるのに
なんでこいつは食べないんだろう。

「僕は良いです。
食べれない訳じゃないけど、
好きじゃないので」

なんだこいつ。
食べれないと言ってくれた方が
まだスッキリする。

「いや、普通に食べれるなら食べろよ」
と笑いながら僕が言うと

「いや、いいです。
20年間、食べたことないです。」

怒りより少し心配が勝つ。
しかし、割と強く言っても少量のサラダを
食べない。
ここまで頑なになるのは
もはや、凄い。

正直、自分の食べたくない物を
誰になんと言われようとも食べないで貫く
という流されないかっこよさを同時に感じた。

僕は周りの目を気にしすぎるところがあり、
それが当時の悩みであった。

僕には自分の中に譲れない何かが
無いような気がしていた時期だ。

優しいと言ってもらえることが多かったが、
それは僕が優しいと思われたいだけであり
人の為というよりは
自身の保身のための行動の蓄積が
そうさせただけだった。

周りの目を気にしすぎていることと
周りの人の気持ちを考えて行動することは
近い様でその微妙な心理の差は大きい。

あの引きこもりみたいな友人の
サラダを食べないという信念、
アルバイトをしないという信念、
一人暮らしをしないという信念、

貫き通す生き方が少し羨ましくもあった。

僕にも徐々に自分の中に譲れないものを
増やしていきたいなと
その友人に影響を受けて感じていた。

大学を卒業し今になって、
心から思う。

サラダ食べろよ。
普通に。

当時の僕は考えすぎていたようだ。
普通に好きじゃなくてもサラダは
少し食べた方がいい。

美味いし。
ホリエモンに出会ったらボコされそうな奴だ。

その友人を今でもたまに遊びに誘う。
久しぶりにみんなに会いたくなる。
全くもって自然な感情だ。

「僕はその日、ゆっくりしたいので
行かないです。」

あいつはやっぱり憎めない。

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