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「食道がん」で胃が無くなった(2)

2回の抗がん剤治療を経て、いよいよ人生初の手術です。抗がん剤治療が効いて、病期は3⇒2へと改善しました。もう一回、抗がん剤治療をしたら更に改善するかもしれないと素人考えでは思いましたが、抗がん剤も良い事ばかりではないですし、仮に病期0になっても、手術はするようです(※下の方に傷跡のグロい写真がありますので、ご注意下さい)。

術式は「胸腔鏡下食道切除術」

手術に関して主治医に説明された僕の「がん」の病状が下の図です。

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原発巣は食道のほぼ真ん中で「深さT3 外膜」と書いてあるところです。黒い「◍」がリンパ節に転移している所で咽頭部の「右反回(神経)周囲リンパ節」と「腹腔リンパ節」(2か所)の計3か所に転移しています。

術式は、

①胸腔鏡下食道切除術
②リンパ節郭清
③胸骨後経路
④頸部吻合
⑤腹腔鏡補助下胃管再建術

と言うものです。主治医から、最低12時間も掛かる手術と説明されました。この病院の消化器外科では、一番大きな手術だそうです。執刀医は途中で変われませんが、流石にオペ室の看護師は交代制らしいです。

咽喉とお腹は切開します

一昔前の「胸部食道がん手術」は、右胸部と頸部と上腹部を切開して行っていて身体への侵襲が大きかったのですが、最近は胸腔鏡や腹腔鏡を使って傷を小さくする手術が主流になっているようです。

とは言え、咽喉仏の下に横に10㎝くらい、お臍の上から縦に7㎝くらいは切開しています。また、内視鏡を入れる小さな穴を数か所開けるので、合計で10個くらいの傷が出来ます。

大きな傷は、見た目がグロいので写真は挙げようか迷いましたが、これから手術を考えている方へ、この程度の傷になる参考として載せます(お腹の方は割愛)。


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!CAUTION!

※傷跡の写真があります※

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術後、1週間くらいの時の写真です。いずれ傷跡は目立たなくなるという事ですが、術後1カ月経った現在でも、この写真と大差ありませんw

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「胸部食道がん」の手術では原発巣の大きさに関係なく(残せる場合は)上部を5㎝くらい残して全部取ってしまいます。つまり、食道が無くなります。

食道と胃を切除します

25㎝くらいある食道が無くなるので、食物の通り道をどうするかと言うと上の術式の⑤「胃管再建」、つまり胃を切り開いて筒状に再建して咽喉の方に引き上げて残った食道の下端と吻合します。

タイトルにあるように、「胃が無くなり」ました。

術式の説明の時に「切り取った食道の代わりに胃を筒状にして引き上げて吻合する」と説明を受けたときは、胃が無くなるイメージはなく、食道と接続している上部を切って上の方に持ち上げて接合するんだな、という認識でした。つまり、胃としての機能・働きは残ると思っていました。

説明は根掘り葉掘りしつこいくらい聞かないとダメですね。実際は、胃の噴門部(食道との接合部)から胃を1/3位を斜めに切って切除して残りを筒状に再建して上にひきあげます。胃としての機能の内、胃液は分泌されますが、食物を一時貯めて消化を助ける機能は失われます。食べた物は幽門部を経て、そのまま十二指腸に流れて行きます。

術後の生活への影響

そのため、

食事量が減り、体重減少が起こります。胃酸や消化液の逆流による逆流性食道炎や、飲食物が小腸に速く流れ込むことによって起こるダンピング症候群が起こりやすくなります。また飲み込みの力が落ちることによって誤嚥(ごえん)を起こしやすくなります。手術後に残った食道と再建するためにつなげた胃や腸とのつなぎ目や、内視鏡や放射線治療を行った部位が狭くなり、食事がつかえることがあります。
国立がん研究センターがん情報サービスのサイトから引用

術後、上記のような影響が日常生活に起こり得ます。

「ダンピング症候群」とは、食べ物が直接腸に流れ込むために、めまい、動悸(どうき)、発汗、頭痛、手指の震えなどの症状が起こることです。また、上記以外にも「吻合不全」と言って、繋ぎ目から食物や消化液が洩れて炎症を起こすこともあります。この場合、再手術が必要になることもあります。

その他、数え上げたらキリがないくらいのリスクが手術には伴います。術前に主治医や麻酔医から説明は受けるのですが、全てを咀嚼して理解するには時間と知識が必要です。大方の患者さんは、僕のように何となく理解して手術を受けるのではないでしょうか?

また、理解しても術後の自分を正確にイメージできる人は少ないように思います。例えば、リンパ節の郭清にしてもスムーズにいくかどうかは開けてみなくては分からない様です。

幸い、僕の場合は組織の癒着や脂肪は殆どなかったので郭清は順調に処理できたようですが、ヘビースモーカーだと癒着が顕著で郭清だけでも何時間も掛かることがあるようです。また、肥満体型の人だと脂肪が邪魔をして手術時間が延びる原因になるようです。それだけ、身体への負担は増すでしょうし他の器官を傷つけるリスクも増すでしょう。

手術はやってみなければ分からない

結局、手術はやってみなければ分からない不確定要素が多くて、医師にしても何が起こるかはケースバイケースなのだと思います。術前の説明にしても、これまでの医学が集積して来た知見の総論であって、手術する個々人に全てが当てはまるものではないように思います。

手術の一つ一つは、それぞれが独立したもので毎回毎回がレアケースなのだと思います。そういう状況下でベストの結果を出すために、医療関係者は事前準備を綿密に行って対応しているのだと思います。

何が起こるか分からないのが手術だとしたら、受ける側も起こりうる何かを把握した上で手術に臨んだ方が良いように思います。今回、手術を受けてみて僕に欠けていたのはこの点でした。情報の収集が十分だとは言えなかったと思います。

ただ、手術を選択したことに後悔はしていません。でも、反省材料には事欠きません。まだまだ、がんの治療は継続しています。反省を生かして治療に臨んでいきたいと思います。


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