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CancerX Story 〜扇屋りん編〜

CancerXメンバーがリレー方式で綴る「CancerX Story」
第7回はCancerXメンバーの扇屋りんです。

私のキャンサーストーリー


がんとの最初の関わりは、医学生の頃。

初めての臨床実習で回った外科で、臓器別のチームに学生が割り当てられ、私は乳腺外科で実習することに。実習の中で、乳腺外科の先生に一時間ほどお話いただく機会があり、乳腺外科の魅力について以下のようなことを伺った。

乳癌の患者さんの数は増えてきていること、患者さんの数が多いことに加えて、腫瘍は身体の表面にできるので、腫瘍を用いた研究が進んでいること、治療法は様々で手術・化学療法・放射線療法…と学びが多いこと、そして、女性の患者さんは女性の医師を好むことが多いこと。

どのポイントも当時の私には魅力的に感じられた。
 
その後も医学生として臨床研修医として、様々な診療科をまわったが、乳腺外科以上に惹かれる科はなく、乳腺外科の医局に入ることになった。外来で、病棟で、多くの患者さんたちと向きあった。患者さんの治療方針を決める上で、最新の知見を取り入れるべく勉強し、医局の先生方と多くの議論をした。そこは、標準治療を提供するのは当たり前、という環境であった。

一方で、乳癌専門の医師がいない病院では、ガイドラインに沿った治療がなされていないという事実を耳にする機会が増えていた。最初に受診した病院次第で治療が大きく変わってしまうかもしれない、という状況。どうすればこの病院間格差を変えられるのかといつも頭の片隅でもやもやと悩みながら過ごしていた。

お気に入りのピンクリボンとご当地キャラのコラボレーション

転機


臨床医としてしばらく働いた後、かねてから希望していた米国留学の機会を得ることができた。学んだのは公衆衛生。疫学、統計学、行動経済学、医療経済、国際保健など一般的なコースに加え、リーダーシップ学などもあり、すべてが興味深く、視野が大きく大きく広がった。 

“Are you ready to change the world?”

とあるアイデアソンで講師が聴衆に語りかけてきた。いきなりそれ聞かれても心の準備が、などと動揺したのはおそらく私くらいで、その会場にいた人はみなニコリとしながら頷いていた。 

その後の自分なりの解釈として、世界を変えると言っても、その変え方は人それぞれ。大企業のCEOになって業界を様変わりさせる、という人もいれば、公園の清掃活動に参加して、みなが心地よい公園に変える、という人もいるだろう。つまり、誰でも世界は変えられる。その気持ちが芽生えたことが大きな収穫だった。

臨床医時代にはその発想すら無かった「より良い世界」に変えていくために貢献したいという思い。この思いがキャリアチェンジを考え始めるきっかけとなった。時同じくして、厚労省の医系技官にならないか、とお誘いを受け、新たな道を踏み出すこととなった。

大学院のアカデミックガウンを着て卒業式へ

 これから


どうやって世界を変えていくか。

私にとっては、どうやって臨床医時代に感じた病院間格差を解消していくか。

格差を解消するためのアイデアとして、地域格差の可視化、医療従事者・患者の教育、病院の連携体制の強化など書ききれないくらい出てくるが、これらは、行政だけが、医療従事者だけが、頑張ってもなかなか変わらない。

そんな中で出会ったのがCancerX。

コレクティブインパクトー産官学民医が手を取り合うことで、ひとりではたどり着けない成果を産み出すーに主眼を置いていると聞き、とても興味を持った。

思い切って中に飛び込んでみると、多様な立場のメンバーがいて、会議ではいつも多様な意見が飛び交っていた。それまでの私の知り合いと言えば医療系にかなり偏っていたので、この環境は非常に新鮮で、それでいて居心地が良かった。

これまで多くの議論をしてきたが、その中でも、メンバーでかなりの時間を割いてまとめたのが、がんに関する社会課題のリスト(Cancer Agendaってなんだ?|CancerX|note)。がん患者さんをとりまく課題は医療的な側面が捉えられがちなところ、一人の人として生きていく上で感じる課題を洗い出した。

これから、Cancer Agendaに沿って一つずつ、Small stepでも社会を変えていきたい。

Cancer Agenda

プロフィール

扇屋りん Rin Ogiya

厚生労働省 医系技官
1984年大阪生まれ。山梨大学医学部卒業後、乳腺外科医として臨床に従事。ハーバード公衆衛生大学院に留学し、医療政策・医療経済学に興味を持つ。帰国後に厚生労働省に入省、医療の質の標準化を目指す。お菓子作り、絵を描くことが好き。

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