【イベントレポート】災害時のがん医療 – 災害時のがん医療の課題 患者・家族が知っておくべき情報は?-
災害時のがん医療は、Cancer Agendaの3、4、8、9、10、11、12と幅広いアジェンダに該当するテーマです。今回は、患者さんご自身のがん治療をどのようにまとめて記録しておくか、家族などケアギバーの方はどのような備えが必要かについて取り上げました。
最初に佐々木先生より「がん患者・がんサバイバーが災害時に困らないために」をテーマに講演いただきました。
「がん患者・がんサバイバーが災害時に困らないために」
①がんサバイバーにも様々な課題
がん治療中は、様々な支援体制が整ってきていますが、がんサバイバーを支える仕組みが日本は不十分です。サバイバーの備えとして、ご自身の治療記録を国立がん研究センターが運営する「がん情報サービス」の「患者必携 わたしの療養手帳」を活用するのがおすすめです。全部を記載するのが難しい場合は、病名と治療内容だけでも記載するのがよいでしょう。また、主治医の他にもがん診療連携拠点病院のがん相談支援センターや保険薬局(かかりつけ薬局)で相談しながら記載するのもよいでしょう。
②災害時の備え(行政の取り組み例:熊本県)
熊本県では、ホームページで「がん診療連携拠点病院の災害時がん診療情報について」を公開しています。発災後の情報発信について平時から情報発信をしていることは大変心強い取り組みです。
③がん患者・サバイバーとして「転ばぬ先の杖」が必要
地域や施設の準備の他、個人として、持っておくべき情報(病名、治療歴、使用中の薬)、どうやって持つか(必ず持って逃げるもの:スマホ・携帯、持っていなくてもいいもの:クラウド)、頼りになる人(日ごろから相談できる人)(医療従事者、がん相談支援員、ピアサポーター、がん医療ネットワークナビゲーターなど)を見つけておくことが重要です。
続いて、佐々木氏、縄田氏でディスカッションを行いました。
ディスカッション
①治療薬の情報保管について
熊本地震、能登半島地震の際もお薬手帳を持って避難する方は少なかったと報告されています。最近は、電子お薬手帳も普及していますが、病院での点滴治療の内容などは、取り込めていないことも多いと思います。日ごろから、治療に関する情報を画像データと保管しておくことが重要です。また、電子お薬手帳や画像データは、ネット環境がないと開けないこともあるので、スマホを機内モードにしても開けるかを確認することも重要です。また、今後は、マイナンバーカードなどが皆さんの医療情報を共有するツールとなってくると思いますので、災害時に医療機関や避難所などでの活用の整備も重要になってくると思います。
②なぜ熊本県は取り組みが進んでいるのか?
熊本県では、以前から「がん地域連携クリティカルパス」の取り組みが積極的に行われてきました。それは、日頃から顔の見えるネットワークづくりが積極的に行われてきたためです。その結果、災害時のがん診療に関する取り組みもすすんでいます。災害時のみの仕組み作りには、限界がありますので、日ごろから地域で、がん患者さんやサバイバーをどう支えるかを検討していくことが重要です。
③がん患者さん・サバイバーへのメッセージ
日頃からご自身の治療について理解していくことが重要です。そのためには、ご自身が相談しやすい方にまずは分からないことを相談してみましょう。また、災害が発生し、避難を余儀なくされてしまった場合は、たくさんの医療従事者、福祉関係者などが皆さんの支えになってくれます。「孤立」と「自立」は違います。「自立」は誰かに頼ることで自立できますので、ぜひ、頼ることをしていただければと思います。
最後に
CancerXでは、今後も災害時のがん医療を重要な課題と考え、取り組みを行っていきます。実際にがん治療中に被災された方のお話を聞いて、取り組むべき課題を具体化していくことや行政や患者団体と連携して取り組めること、医療従事者の方との取り組みなどを検討してきます。
みなさんと共に災害に強いがん医療の推進のために動き、その結果、安心して生活できる社会の実現を目指します。今後とも「CancerX 災害時のがん医療」の取り組みにご参加をお願いいたします。
■開催概要
災害時のがん医療 – 災害時のがん医療の課題 患者・家族が知っておくべき情報は?-
【日時】2024年7月3日(日)13:00〜14:00
【形式】オンライン
【登壇者】
佐々木 浩一郎 氏(北里大学医学部 新世紀医療開発センター・教授 )
縄田 修一 氏(CancerX / 昭和大学横浜市北部病院 薬剤部・部長/准教授、日本DMAT )
モデレーター:鈴木 美慧 氏( CancerX 理事・ 認定遺伝カウンセラー )