肺がん

いろんながんがある中、治療の進歩はがんの種類で差があります。

これは、冷静に考えればその通りなんですが

患者数が多いがんほど、治療法が迅速に、多く、開発されます。

臨床試験や治験といった、製薬会社やその他の医療業者が関係します。
だから営利は絶対に必要になります。

年間1万人の病気と、年間数十人の病気。
企業が投資する方は当然前者になります。

また、医療サイドからみても、やはり年に一人いるかどうかの希少がんよりも、より患者数の多い病気のほうが、治療経験値があがり
治療成績も向上します。

例えば、やはり、乳がん、肺がん、胃がんなどは
圧倒的にこの10年で治療が進歩しました。

わかりやすいのが、チェックポイント阻害剤、いわゆる免疫治療や
ハーセプチンやアバスチンといった分子標的薬、これらが導入される順位が速い病気が、「数の多いがん」となります。

つらいでしょうが、数の少ないがんの治療開発は、多くは後回しとなり
他の病気では使える薬が使えないなど、臨床現場では当たり前となります。


先週、肺がんの患者さんの治療をさせていただきました。
肺がんは、治療法が非常に多いです。
遺伝子検索して、それに合わせて治療する。
最先端の治療が当たり前のがんとなっています。
それでも、それでも
それでも、がんは完治しない。
どんな治療法でも、本当に早期でなければ再発し
いろんな治療を変更しつつ、治療が効かなくなります。

通常、最初に提案されるファーストライン治療がその時代の最も有望な治療法です。ですので、その後に選択される、セカンド、サードは
必然的に治療成績は下がります。
さらに、がんは経過の中で、悪性度が高まり、さらにセカンド、サードに効きにくくなります。

先週の肺がん患者さんは、ご自身がしっかりしていて
自分の状況がかなり後半戦であることも理解しながら
それを受け止め、僕の治療を選びました。

実際、僕は、エビデンスのある標準治療を基本勧めます。
それでもカテを提案するときって、エビデンスが残っていても
そのエビデンスが、無治療の患者さんと比較してわずか1ヶ月程度の生存延長、そして半分以上の患者が副作用で、後半戦なのに苦しみます。

うちは、後半戦で勝負をしていますが
あまりに後半戦だと、カテもできません。
でも、そのちょっと手前だと、めちゃくちゃ患者さんの状態が改善します。
ようは、カテが受けれるギリギリの手前で来ていただければ
標準的なエビデンスもない、でもカテはある。
そんな状態で勝負ができます。

正直、なかなかここでは書けない難しい患者さんでした
(ご本人さんは、本当に話しやすくて理解もよくて、しっかりとされていて
対応しやすかったです、本当に助かりました)
ただ、病気が厳しかった。

そんな患者さんが、仰臥位でいることさえ息が苦しかった患者さんが
嬉しそうに、数日で呼吸がすごく楽になりました!と退院されるのをみると

こんなに難しい病状の患者さんでも、勝負にいく価値がある
そのためには、ちゃんと事前に本人とカテのゴールを決めて
一緒に頑張らないと。

うちのカテ室のスタッフも、カテ中、体制保持も大変でしたが
僕のカテのスピードにもついてきて
迅速に患者さんの治療ができました。


数年前より、明らかに、状態の難しい患者さんも受け入れるようになりました。
それと同時に、従来から受け入れている
症状が乏しい肝転移や肺転移、リンパ節転移なども
残されている標準的治療とうちのカテのどちらが今するべきか
これをちゃんと明確にして、紹介先の先生にも返書を書いたり
時に直接電話で説明して
患者さんを受け入れています。


今の病院にきて今度で9年目かな。

自分は歳をとりましたが、明らかに救える命が増えました。

また学会で報告します。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?