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美術のともだち、醒めない夢

作業を早めに切り上げて、友達と飲みに行く。五反田に行きたいもつ焼き屋があるんだ、と誘われていた。
作業を途中でやめるとき、いつも延び延びになってしまう。ここのパーツまで裁断したら、とか、このメール返したら、出よう!と思うのに、色々忘れ物がでてきて、どんどん出るのが遅れてしまう。

15分くらい遅刻してしまう、、、と思いながら、ラインを打ってお店の地図を送ってもらう。
友達はまたか、と思ってるだろうな、でも言わずにいてくれる。先に行ってるとのこと。そういう部分にいつも甘えてしまう。

五反田駅から結構歩いたところにあるお店は、場所がわかりずらくてすこし迷ってしまった。さらに遅刻。
階段を上ると、ドアに手書きの張り紙がしてあって、「ようこそ!」とある。あやしさ満点。スナックみたいで、もしすごい高かったらどうしよう、とちょっと不安になりながらドアを開ける。

店内はいたって普通のもつ焼きやさんだった。安心した。
奥の方の席に友達2人が座っている。会うの少し久しぶりだった。
「迷わずに来れた?」
すこしほっぺたが赤くなっている友達が言う。

「ビールでいいよね!」と言ってビールを頼んでくれる。乾杯して、ビールのひと口目は本当においしい。

もつ煮込みがきて、モツの盛り合わせが来て、友達がせっせと焼いてくれる。これはタン、レバー、これはコリコリ、、色々説明しながら、できたよーと言って隅に置いててくれる。どれもとってもおいしい。
こういうとき、わたしは何もしないで、ただ焼いてもらうのを待っている。

ふたりとも予備校からの仲で、もう10年以上の仲になるんだな、とふと思った。

ひとりの友達は、シンガポールへ2週間仕事で行ったこと、現地の暮らし、ビールが高かったこと、制作した椅子の話をするのをきいていた。しょっちゅうシンガポールへ行くのも大変そうだね、と言ったら、でもなかなか楽しいよ、みたいなことを言っている。英語を勉強しないとな、と話す。中国語なまりの英語だから全然わかんないんだよね。

彼は木工をやっていて、わたしのアトリエの棚も作ってくれた。突然に頼んだのに、しっかり反りどめまで付けてくれて、とても立派な棚で感激した。とても気に入って、ここを出てからもこの棚を連れて行くのが楽しみだわと言ったら、バラして机にもなるよ、と言ってくれた。

浪人生のときは、いつもなんだか眠そうで、たしか原宿の寿司屋でバイトしながら予備校に通っていた。朝までママの愚痴をきかされている、とかなんとか。

浪人もして有名な大学に通っていたのに、途中で辞めて、絵の予備校にきた。勉強が出来たので、絵じゃなくて、学科で入りたい、学科でなんとか、とつねづね言っていて面白かった。絵もていねいできっちりしたものを描く。慎重でていねいなところがいい。それはずっと変わってない。大学は別だったけど、よく皆んなで飲みに行ったり、家に遊びにいったりした。

彼の妹とも友達で、月に一度くらいある、家族のワイン会に呼んでもらったことが二度ある。お父さんがワインが好きで、家にワインセラーがあると、その会に招かれてから知った。5人で5本のボトルを空けていて、すごく酔っ払った。ワインもおそらくものすごく高級なものだと思う。一口飲むたびにお父さんの感想をきく。料理もとても美味しくて、品が良かった。家族みんなが教養があるって感じがした。
そんなことないよ、ふつうだよって彼は笑っていたけれど。
友達のことも妹のことも好きなように、お父さんもお母さんのことも好きだな、と思う。

もうひとりの友達は、仕事が新しくなってその話をきいていた。昨日まで新潟にいて、稲刈りをしていたという。稲の刈り入れの仕方を教えてくれる。全身が筋肉痛で、わたしがすすめた近所のマッサージ屋についに行ってみたよ、とか。

彼女とは4年前くらいからアパートの隣に住んでいて、10代の頃から、大学時代、そして隣に住む今と、とっても長い付き合いになる。
最近仕事が新しくなり、とってもいきいきしている。いきいきしている彼女のことが好きだなぁと思う。とても楽しそうにやっている。

彼女の両親とも、家が近くでよく食事をすることがあった。お寿司や洋食などをご馳走になって、お母さんの最近習ってる習字のことやはまっている朝ドラのこと、家族や親戚の話をきくのが楽しかった。お父さんは殆ど喋らず、いつもビールを一杯だけ飲む。彼女がいるときもあれば、彼女は単身赴任していて、わたしとご両親で食事に行きましょうと言われて、出掛けた時もあった。彼女がいないのに妙ではあったけど、とても楽しかった。

酔っ払ってふたりの話をききながら、2人の家族のことを思い出し、ぼんやりと全然違うことを考えていた。

ふたりとも、仕事大変だけど、楽しいって言っていた。わたしも大変だけど楽しいって思う。

わたしは炊飯器でお米を炊く派で、冷凍するのを忘れて黄色くしてしまうタイプ、
彼女は無水鍋で一気にたくさん炊いて、冷凍しておくタイプ、
彼はパックごはんで、いつかいい炊飯器を、どうせならいい炊飯器を買いたいタイプ。
10万くらいするの買いそうだよね、と彼女が話してみんなで笑った。
ふたりともに料理を作ってもらった思い出がある。ふたりとも料理が上手である。

ビールも飲み終わって、日本酒を回し飲みしながら、ほろ酔いだった。
2軒目行こう!って言って、繁華街を通る。
ここの繁華街来た時も通ったわ!とわたしが言ったら、繁華街っていうより風俗街でしょ!とつっこまれる。

おじいさんおばあさんがやってる焼き鳥屋に行きたいと彼女が言って、のぞいてみるも休みだったのか、早く閉めたのか、シャッターが下りていた。
彼の行ったことのある近くのもつ焼き屋に入って、サワーを飲みながら、マカロニサラダと秋刀魚と棒餃子をつまむ。

予備校の先生がいる島に来年こそ行ってみようよと盛り上がる。彼女は何年か前に行って、海がとってもきれいだったよと話す。免許みんな持っててペーパーなんだから、島で練習しようよ。

すっかり酔っ払って、お店をでて、
それじゃあもう一軒行こうか!って彼が言って笑った。
もう終電も近かった。ちょっとさみしい。なにもなかったら朝まで行けるけれど、学生のときもこんな感じで朝まで飲んでいたような気がする。

彼と駅で別れて、わたしと彼女は一緒に帰った。彼女は仕事をすこししなきゃなと言っていてちょっと大変そうだった。

わたしは帰ってお風呂に入って、あがったところまで、記憶があるのだけど、髪も乾かさずにそのまま寝てしまっていた。

そうして珍しく夢を見た。
夢の中でも3人で居酒屋で飲んでいた。
赤提灯系のがやがやしたお店で、ビールを飲んでから、日本酒をまわして飲んでいた。うまいな、とか言って。内容は覚えてないけれど、たわいもない話をして笑っていたと思う。お店を出て、次どこ行こうかと、ふらふら歩いてるところで目が覚めた。
まだ朝5時だった。夢の中でも空が少し白くてあかるかった。
楽しい気分のまま、また瞼を閉じて眠った。


(20190924)

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