見出し画像

怒りについて考える

緊急事態宣言が出されて2ヶ月あまりが経ち、そして解除されて、だんだんと心境が変化していることに気がつく。

アトリエから荷物を移動し、ほとんど自宅での作業をすることに決めた3月末。自宅からアトリエまで電車や徒歩で1時間ほどかかるので、その道中に感染するリスク、感染させてしまうかもしれないリスクを考えると、だんだん不安が募っていた。
不要不急の外出は控えるように、と言われている中、止むを得ず仕事が終わらなくて終電で帰宅したときに、大勢の人が週末の飲み会帰りに電車に乗り混んで来ていて、これは人によって危機感の差異があると感じた。自分がいくら気をつけていても防げない部分もある。会社に所属している身なら出勤するかどうかを自身で判断を下せないならまだしも、フリーランスなのにどうしてこんなリスクを抱えなくてはならないのだろう、と考えはじめた。
わたしにしては決断してからの行動が珍しく速くて、そう思ってから翌日に当日の赤帽さんを手配して、荷物をまとめた。
アトリエの皆んなに、突然だけどしばらく来ないので、と挨拶して、すごい速さで荷物を詰めた。

続々と4月以降のイベントや催事の予定がキャンセルになったり、出展するかしないかの判断を何件も迫られて、交渉をしたり、何を優先させて考えるべきかとやっているうちにすっかり疲弊してしまった。

通勤時間が減って自宅でも作業ができることに最初は意気込んで、こんなに時間の持てることは今までなかったので、新しい絵を描こう!、今まで途中だったものをかたちにしよう!、などとやる気に満ちていた。
この空いた時間をなにかにしなくては…という焦燥感に駆られていた部分もあったと思う。

そうしてひと月がたち、やりたかった事の山を少しずつ少しずつ削いでいくところで、この不安や先の見えない状況はいつまで続くのか、この先をどうしていくのか、とふと無気力期間が訪れた。

インターネットでSNSをひらくと、さまざまな怒りが飛び交っている。だれかを攻撃したり傷つけるような言葉は、想像力を欠いていて汚いと思ってしまう。特定の人が目の前にいたとき、同じような言葉を発することができるのかと問うてみたい。

自粛期間中、日曜日は朝からサンデージャポンをみて、少し休憩、昼過ぎから爆笑問題の日曜サンデーを聴いている。火曜の夜は爆笑問題カーボーイを聴く。この期間を経てますます爆笑問題に染まっている。。
昔は公衆便所だって落書きだらけで本当に汚かった。でも最近は綺麗になったよね。ネットの世界にも公衆の場、公共の場という意識をこれから持っていかなきゃならない、と太田さんは話していた。
家族であっても、友人であっても、コンビの仲であっても、何でも言っていいわけじゃない、と。

どうしてSNSでの発信が人を傷つけるようなことであってもなぜ広まりやすいのか、という事を他のテレビで特集していて、興味深かった。どこでコロナにかかったかを問題にして、個人を特定してインターネット上で誹謗中傷するのはなぜか、という話題で、何しろ怒りは伝わる速度が速いのだという。怒りや危険を知らせるのものの速度は速くて、周りにその事を知らせる本能が人間には備わっているのだという。それでよく考えないうちにものを言ったり、危険を周りに知らせたいと思うから広まりやすいそう。

よく自分は「怒ることあるの?」と聞かれるけれど、年に一度〜2度くらい怒りがこみ上げるときがある。すぐに怒る人とも疲れるので一緒にいることができない。怒りやすい人といると、怒られないように、怒らせないように、気を遣うから疲れる。

あまり怒らないほうなだけに、たまの怒りにうまく対応できない時がある。怒りたくないとどこかで思っているけれど、何かトラブルがあったり、予期せぬ不当な事が起こるとその怒りの道を通らないことには立ち行かなくなる。怒りの速さは、たしかに一瞬で、頭に血が上り、一度冷静になるまでに時間がかかる。冷静さを欠く。たまに怒るから、怒り方がわからなくなって、いったん沸騰するとそのまま涙に変わってしまうことが多い、、、
思い返すと子供の頃からそうで、よく「ふてくされるのやめなさい!」と母に怒られていた。今思うとどう怒ったらいいか分からなかったのもかもしれない。大人になってから、怒らなくてはいけないときもあると感じる。声をあげたり、抗議したり、ぶつかることも。時には重要ではあるとは思う。でもやはりなるべく怒りたくはないと思ってしまう。

コロナのことがあって、ネット上で怒り狂っている人も多いけれど、現実世界では皆んな静かにしていて、のんびりとしているように見えるからややこしい。でも思っていることをそれこそ公共の場でみんな言わないだけで、心の中ではみんなそれぞれ考えている。面と向かって怒るのはよっぽどだけど、そういうのが、面と向かわない、毎日のインターネットの荒波の上で起きているのかなと思う。


(20200610)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?