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緑道を歩く

お昼を過ぎて、近所の公園まで散歩することになった。近所に住む友人と待ち合わせ。
1人は3駅隣の街に住んでいるけれど、運動不足だからと言って、遠い道なりを電車に乗らずに歩いて来てくれた。

2人に会うまで、道中カメラを持って、写真を撮る。
フィルムカメラを最近買って、少しずつ撮りためている。人と会っていないので、植物ばかりになる。まだまだ慣れなくて、腕が悪いのか、カメラが良くないのか、ピントが来てなかったり、思っていたように撮れなくて、36枚撮りフィルムで2、3枚これは良いかな、と思うものがたまに撮れる程度。それでも面白く感じている。見ているものと写真とは、違ったものとしてあがってくるので、その差を今は楽しんでいる。実験段階。
そのうち思うように撮れるのだろうか。そう思うと絵の方が思ったように描けるかもなと思う。シャッターを切ればかんたんに写真は撮れるけど、撮りたいものを探すのと、天気や光の具合や、色味や構図や、思うような材料を揃えないといい写真にならないから難しい。

とても天気のいい日で、人と会うことが久しぶりだったので楽しみにしていた。紺色のワンピースに、作ったばかりの巾着のバッグを合わせる。

待ち合わせした場所の通りを挟んでミスドが見えた。タピオカの広告が目に入り、ふたりとも揃ったら、ミスドに寄りたいと言ってみよう。
マスクをして、すこし距離を取りながら2人が現れる。

ミスドはあっという間に行列ができていて、店内にも人が多くてどきどきしてしまう。一度のアルコール消毒で大丈夫かどうか、マスクもしているせいで、急に少し息が苦しくなる。

タピオカドリンクとドーナツ二つを買う。かわいいオサムさんの袋に入っていた。ドーナツ屋に来ることも、友人と会うこともかなり久しぶりだった。暑い日にキーンと冷たいコーヒーなんかを飲みたいなとずっと思っていた。コーヒーじゃなくてタピオカを選んでしまったけど。

マスクを一瞬外しては、タピオカを飲み、
また一瞬外して飲んで、また戻す。

微妙にソーシャルディスタンスをとりながら、散歩する。

阿佐ヶ谷団地のあった場所を通り過ぎ、緑道を通る。散歩している人、ランニングしている人、犬を連れている人、ベンチに座ってギターを弾いている人、皆んなそれぞれにこの道とこの天気を楽しんでいた。

柵の向こうに猫が一匹いた。その向こうに寝てるのが一匹、手前に一匹、全部で三匹いた。
小さな女の子が煮干しをあげようとして猫に呼びかけている。おーい、とかなんとか。その子が持っている煮干しはいつもわたしが西友で買う煮干しと同じものだ、と思いながら見ていた。
猫は煮干しに興味がないのか、動くのがだるいのか、目だけで煮干しを追って動かなかった。

広場に着いて、ちょうどベンチが空いていたので腰掛ける。
目の前に大きな大きな木が立っていて、風が吹いてとても気持ちが良かった。ときおり日が差して、緑色の葉が煌々と光り、また曇って影になったりを繰り返していた。

仕事のこと、コロナのこと、政治のこと、ラジオのことや植物のこと、自粛期間どうしていたか、などマスクをしたまま話す。

緊急事態宣言が出てから、家から殆ど出ない生活になり、最初は意気込んで、この時間をどう過ごそうか、有意義に過ごさなくては、などと思っていたけれど、
先の見えない状況に不安が募るのと、なかなか有意義には過ごすことが難しい、そもそも有意義とはなんだったのか、よくわからなくなり、また別の無気力に襲われ、食欲すらも湧かないときがあった。

最近はさらにそれも越えて、自粛生活が板について来たところで、緊急事態宣言が解除され、元の日常に戻れる嬉しさ、同時に不安も浮かび上がってきている。結局この期間になにも成し得なかったような。。このまま日常に戻ることが不安でもある。今まで働き過ぎていたこと、食事も家のこともおざなり、睡眠もとれずに、なにをどうしていたのか、よく思い出せない。すっかり色々なことが変わってしまった。

ceroの高城くんのツイッターの話になった。まわりのみんなはこの期間に作曲をしたり新しいことに挑戦してるけど、自分は子育てに手一杯で焦る、けど、心は動いていて、心の中でも進められることはある、色々なことは心の動きに集約される、と。そんなようなことを書いていた。

皆んなそのツイートを見ていたらしい。わたしもなんだかその言葉にハッとさせられたうちのひとり。かたちになってはいないけど、思えばこの2ヶ月のあいだに様々な心の動きがあったことを思った。なにもしてないようで、いつもせわしなく、不安や怒りや焦りが付きまとっていて、ずっと目まぐるしかった。そんな中で、なにかを生み出そう生み出そう、としていて、穏やかではなかったように思う。

小さな子が家族でバトミントンをしていたり、テントを張っていたり、家族づれが多い。犬がたくさん通り、皆んな可愛かった。

虫が何回かなぜかわたしの足や腕に登って来て、いつも気づかずに、ふたりが虫がいることを教えてくれて振り払った。わたしはあんまり血が美味しくないのか、虫にあまり刺されない。刺されても痒くもなんともないので、気にしていない。ふたりはちゃんと虫除けを持って来ていて、わたしにも貸してくれた。ミントの香りが夏っぽかった。

久しぶりにたくさん歩いて、日光を浴びた。
広場の中は平和なように思えて、コロナのことなんて程遠い世界にいるみたいに見える。もしニュースやネットに触れずに生きている人がいたら、コロナのことを知らずに過ごしている人ももしかしたらいるのかな、などと想像したりした。

(20200524)

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