[#3] 結婚記念パーティの謎解き公演をほぼ1人で作り上げた話 【世界観ブレスト】
お世話になっております。カナンです。
この記事は前回の記事の続きです。下記のマガジンにこれまでの記事が載っているので、ぜひ最初の記事から読んでみてください。
前回、前々回に続いてミーティングの最中です。
どんな感じの公演にしたいか、成功率や二段オチをどうするかを決めたので、ここからいよいよ世界観の話し合いに入っていきます。
あ、今更ですが、ネタバレ満載です。
しかしこの内容は今回の新郎新婦のエピソードをふんだんに盛り込んだものなので、同じ設定やボツ案をどこかで使い回す可能性は限りなく低いです。
安心してお読みください。
ブレインストーミング
兎にも角にもまずはブレストです。
「こんなことやってみたい」「こういうことできそう」ということをひたすら言葉に出して、メモに取っていきます。
どんな会話がされたか覚えていないので、書き殴ったメモを見ながら会話内容を作り上げました。
誰かはこんなことを言っていたはず。
「会場を二人の新居に見立てる?」
「新居お披露目パーティという設定で参加者を呼んでみる?」
「どちらにせよ料理を出すから、その料理がなにかカギになっているとか」
「シェフに特定のオーダーをしたら次のステップに進める、とかあったら面白そうだよね」
僕「ふむふむ」
メモ
家
料理
団欒
食卓を囲む
祝いの空間 理想の新居
新居お披露目パーティ
案
・シェフに特定のオーダーをさせる
「そういえばIWAIの入り口にポストがあって、参加者の人に手紙を渡せるんだよね」
「謎解き中にここに戻ってもらうこともできるだろうし、謎に絡めることもできそう」
僕「入り口にポスト?どんな感じでしょうか」
僕「めっちゃ謎ポテンシャル高いですね!!」
ちなみに謎ポテンシャルというのは「謎解きの材料として使える可能性」という意味の言葉です。
僕の造語です。
僕「50音表やアルファベット…いろんな表と対応付けられそう」
僕「実は当日に参加していない人のポストがあって、そこを覗いたら何か重要な情報がある、というのもワクワクしますよね」
「面白いね〜〜」
このようなワクワク感というのは謎解きには欠かせません。
すぐにメモします。
メモ
案
・シェフに特定のオーダーをさせる
・参加していない人のポストがあってそれがキーパーソンになっている
「謎解きにしようとする前、みんなで大きな肉を囲みたいって話があったんだよね」
僕「大きな肉を囲みたい」
僕「それはそれでとても楽しそうですね」
「会場内にオーブンあるし、謎を解かないとオーブンにかかった鍵が開かない!というのも面白そう」
僕「謎を解くモチベーションが大きな肉とか最高すぎでは?」
メモ
案
・シェフに特定のオーダーをさせる
・参加していない人のポストがあってそれがキーパーソンになっている
・オーブンに鍵がかかっている→肉が食べれない!
僕「やっぱり、なぜ参加者が謎を解かなければいけないのかというのはしっかりと考えたいですね」
なぜ参加者が謎を解かなければいけないのか。
これは、世界観を考えるときに忘れてはいけない部分です。
特に今回の参加者は、謎を解きたくてここに来ているわけではありません。
なので、世界観の説明で「なんだって!?そりゃあ自分たちが謎を解かなきゃいけない!」という心情にさせるのが大切です。
余談ですが、僕が参加者なら大きな肉というのは最高のモチベーションになります。
ここで、通話で繋いでいたタカタ先生と式の担当スタッフの方とはここでおさらば。
新郎新婦のお二人と僕の三人で、食事をしながらもう少しブレストを進めていきます。
僕もだいぶ打ち解けて来ました。ピザ美味しかったです。
突然の好感触
実は、タカタ先生から結婚パーティの謎解きの話を聞いたときに、真っ先に思いついていた設定がありました。
結婚記念パーティに参加しているということは、参加者はその二人の結婚に対して心から「おめでとう」と思っているはず。
そんな参加者がほぼ間違いなく「これは謎を解いてなんとかしなければならない」というモチベーションになるもの。
そして参加者を物語に引き込みつつ、新郎新婦のお二人がしっかり引き立つもの。
それは「二人の結婚が無かったことになるかもしれない」という状況です。
縁起が良くないかもとかそういうのは一旦置いておいて、恐る恐る提案してみました。
僕「あのー…設定がややこしくなるんで悩みどころなんですが」
僕「タイムスリップものとかどうですか?」
お二人「「タイムスリップもの」」
僕「参加者はお二人の結婚記念日にタイムスリップしていて」
僕「二人は婚姻届を提出しようとするけど、何かのトラブルに巻き込まれてしまって」
僕「参加者のみんなに協力してもらって結婚を成立させる…って感じです」
お二人「「………」」
お二人「「面白そう!!!」」
僕「えっ(意外と好感触だぞ?)」
思ったよりウケが良くて戸惑ってしまいました。
結婚記念日のこだわり その1
タイムスリップの案が盛り上がる中。
お二人の結婚記念日に関するエピソードをいくつか知ることができました。
裕美さん「実は、元号が令和に変わる日(2019年5月1日)にしか婚姻届を提出しない!っていうこだわりがあったんです」
僕「そうなんですか」
僕「それはかなり設定に組み込みやすいです」
このエピソードで、ゲームの設定における制限時間の理由付けができます。
「今日は2019年5月1日。◯◯分以内に謎を解かないと今日中に婚姻届を提出できず、結婚できなくなってしまいます!」という前フリができました。
このこだわりを知らない人からしたら「明日以降でもええやん」と言われそうです。
しかし、実話なのだから仕方ないのです。
結婚記念日のこだわり その2
そしてもう一つ、非常に大切なエピソードを知ることができました。
「婚姻届、京都まで行って出したんです」
僕「えっそうなんですか!」(※お二人の住まいは東京)
「で、本籍地と違うところで婚姻届を提出する場合、戸籍謄本(こせきとうほん)も必要だったんですね」
僕「へぇ〜 そうなんですね」
僕「…ん? それってラス謎の二段オチに使えそうじゃないですか?」
僕「謎を解いて婚姻届を完成させて、これで一安心!…と思いきや」
僕「二人が提出しに行く場所が京都であることに気づく必要があって」
僕「ということは戸籍謄本も要ることに気づく必要があって」
僕「戸籍謄本も手に入れた状態で提出できればクリア!」
僕「……って感じです」
「「良いですね…!」」
・参加者のモチベーション付け
・制限時間の理由付け
・二段オチの構想
全てが噛み合い始め、3人の中に「これだ…!」という空気が漂い始めます。
案
・シェフに特定のオーダーをさせる
・参加していない人のポストがあってそれがキーパーソンになっている
・オーブンに鍵がかかっている→肉が食べれない!
・タイムスリップもの(1年前の入籍直前5/1にタイムスリップ)婚姻届を完成させる
・会場も1年前になってる
令和元年の5/1にしか婚姻届出さない!というこだわりがあった
婚姻届は京都で出した
2人の予定を辿ると何かわかる
住民票(戸籍)が足りないのがラス謎 ひっかけではなく一本道にしたい
議論が落ち着いてきて、これ以上の案が出なくなった頃合い。
「「「タイムスリップにしましょう!」」」
という結論になり、その店を後にしました。
そして帰路の僕。
「タイムスリップは非日常感満載でワクワクはするけど…」
「いろんなところで発生しやすい矛盾をどれだけ解消できるかがかなり難しいんだよなー…」
「でもこれを超えるような世界観はそうそう出てきそうにない」
「やれるところまでやりますか」
ここから、シナリオ執筆に頭を抱える僕の数日間が始まります。
まとめ
今回は謎解き公演で一番大切な部分、世界観の議論について書きました。
参加者にとって「なぜ謎を解かなければいけないのか」が明確であり、そのモチベーションが自然に高まるような設定を見出だせたような気がします。
次回からはその世界観に沿った、シナリオの執筆について書きたいなと思います。
Photo by 角田大樹