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リハビリのシステム論(前・後編)の紹介

 システム論と言ってもいろいろあります。医療的リハビリの分野にも様々なものがあります。
 ここに出てくるCAMRは、Contextual Approach for Medical Rehabilitaitonの短縮形で、カムルと呼びます。和名は「医療的リハビリテーションのための状況的アプローチ」日本生まれのシステム論を基にしたリハビリテーション・アプローチです。
 本書ではシステム論を以下の3つに分類しています。
《CAMRのシステム論の3つの分類》
  ①素朴なシステム論(臨床経験を通して得られるシステム論の視点)
  ②システム外部の科学的視点から作動を見るシステム論
   (ベルンシュタイン、生態心理学、動的システム論)
  ③システム内部の視点から作動を見るシステム論
 学校で習う要素還元論の視点では、運動システムは目に見える構造と各部位、組織、器官の役割を理解します。
 そうすると機械との共通点が見えてくるため、人の運動システムは機械になぞらえて理解されます。たとえば脳はコンピュータにたとえて理解されることが普通です。
 そのためにリハビリのアプローチは、機械の修理のように、「悪いところを見つけて治す、あるいは交換して元に戻す」という方針を持ちます。
 システム論では、目に見える構造ではなく、その「作動の特徴」から運動システムを理解します。「作動の特徴」で見ると機械と人の運動システムはまったく異なった作動をしていることがよく理解できます。
 そうすると機械の修理とはまったく異なったアプローチになります。
 CAMRでは、人の運動システムの作動を活かして、より良い状況に安定するようなアプローチを目指します。元に戻すよりは「今できる最良の状態に導く」ようなアプローチです。
 実際に脳性運動障害は元に戻すことはできません。日本にはこのアプローチが入って半世紀以上になりますが、未だに「麻痺を治した」という科学的報告はありません。つまり半世紀以上、成果を出せないまま「健常者の正しい運動を身につける」という理想の目標を掲げて、さまよっているのです
 CAMRは現実的です。「障害を持ったまま今できる最良の状態にし、維持すること」を目標にしています。
 「より安全に、安定して動けるようになった」、「できなかったことができるようになった」が得られる結果です。
 本書は学校で習う要素還元論とシステム論の視点を紹介し、それぞれの弱みと強みを紹介します。そして2つの視点は必ずしも相反するものではなく、お互いの弱みを補い合っているということを主張します。


リハビリのシステム論-生活課題達成力の改善(前編)電子書籍版

リハビリのシステム論-生活課題達成力の改善(後編)電子書籍版

ペーパーバック版もあります。
「リハビリのシステム論(前編):生活課題達成力の改善について」
 1037円
「リハビリのシステム論(後編):生活課題達成力の改善について」
 1152円


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