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MuseScore4を触ってみた (2)

【第2章】悩みどころ

<音源の問題>
MuseScoreの新しい再生機能では、MuseSoundという組み込み音源のほかに、PCにインストールされているVSTi音源(*1)があればそれを利用できます。なぜか家のPCには、使わなくなって本体はいなくなったSteinbergのHALionSonicSEのSoundFont(*2)だけが残っていて、MuseScoreで使えることが分かりました。早速試してみたところ、MuseSoundの音よりも立ち上がりが良く、はっきりしたサウンドで自分好みだったので、それを使って作って公開しました。ところが仲間の厳しい耳には「打ち込み感(*3)が強い」と聞こえたようです。
考えてみれば、立ち上がりの良い音であれば、発音の完璧さも際立つわけで、そう聞こえるのは当たり前だったのですね。音色にばかり気を取られて肝心の音楽らしさを見逃していました。

大した事ねえな、俺も・・・

<オーケストラに挑戦>

反省も含めて、いろいろ勉強させてもらった最初の一週間。かなり前のめりの「やる気感」に浸されて、時期尚早とは思いつつもオケに挑戦することにしました。比較的小編成で出来ているラベルの「死せる王女のためのパヴァーヌ」(パヴァーヌは「パドバ風舞曲」という意味で、けしてマドレーヌの仲間ではありません、念のため)に取り掛かりました。二管編成(*4)のオケは、印刷されたスコアで12段。ただ各声部を独立して管理したい気持ちで、管はばらして、ついでにViolin1とViolin2も各2段にして合計18段。 まあこれくらいのスコアは中学生の時には書いていたのでビビることはないのですよ。
Violinを分けたのは重音奏法の他にDiv.指定(*5)があったりするのでVelocityコントロールに好かろうと思ってのことです。また同じ楽器のユニゾンをうまく使えば乗算効果(*6)も期待できますし。
音符の数は膨大でしたが、そこはコツコツ大好き人間としては苦になりません。思ったよりもあっさりと出来上がりました。
ただ新しい問題として、楽器が増えると今度はミキサーの調整が大変になることも分かりました。一つの楽器のフェーダーをちょこっといじるだけで聞こえがまるで変ってくるのです。
クリアしなければならない課題が次から次へと出てきます。
ただ逆に、沢山の楽器を鳴らすことで得られるメリットもあることが分かりました。例のクオンタイズ(Quontize)問題。つまり音が揃いすぎるという欠点。これが楽器ごとのAttackTime(*7)(打鍵から発音までの時間のズレ)の違いが疑似的に擬人化(Humanize)に近い効果をもたらすということです。

「クラシック音楽ちょろいじゃん」とか思っちゃいけません。沼はすぐ先にありました。

ラベルで好感触を得たと思って、二匹目のどぜうでシューベルトの「未完成」に掛かったのですが、さすが大作曲家の交響曲。いたるところに落とし穴がありました。各楽器にはあらゆる演奏法が細かく指定されています。弦だけ見ても、上げ弓・下げ弓・スタッカートにスピッカーとにピチッカート。ダイナミックレンジもピアニッシモ(pp)からフォルテッシモ(ff)、スフォルツァンド(sfz)・・・
一つのソフト音源でそのすべてを再現することは事実上不可能と思われます。第一楽章の半分ほどで行き詰まりました。これ以上は、奏法に対応する音源の楽器を増やすか、一音源で対応できるだけの性能を備えた有料の音源を探すか、答えが見つかるまでペンディングとなりました。

<関連リンク>
ラベル「死せる王女のためのパヴァーヌ」

<用語注釈>
(*1)VSTi音源
VST(Virtual Studio Technology)とはDAWで使われるプラグインの一種。
プラグインとはコンテンツを増やすために追加する拡張機能のことで、いくつかの種類があるが、VSTiはその内のインストゥルメント機能のことを言う。ソフト的に作られた仮想音源。
(*2)SoundFont
Sound Blaster及び対応ソフトウェアの、サンプラー機能に与える音色のデータフォーマットである。
服の重ね着をするような感覚で音色を組み合わせることのできる、サンプラー音源のようなもの。
(*3)打ち込み感
いかにも「コンピュータで作りました」という感じ。
(*4)二管編成
オーケストラの編成で、木管楽器(フルート・オーボエ・クラリネット・バスーン)が各二本あるもの。三管編成や四管編成もあり、他の金管楽器や打楽器・弦楽器は木管楽器の本数によって増減される。二管編成は古典的なオーケストラではもっとも標準的な編成。
(*5)重音奏法、Div.指定
重音奏法とは、ヴァイオリン属などの擦弦楽器で、複数の弦を同時に押さて演奏する奏法。 (他の単音楽器でも存在する。)
Div.はdivisi(分けて)の略。 オーケストラの総譜などにおいて、同じパートの奏者の片方が上の声部、もう片方が下の声部に分かれて演奏する指示をする際に用いる。 楽譜上では主に「div.」と表記される。
(*6)ユニゾンで演奏するとき響きが増幅されて音圧が増す効果。正確になんというのか不明ですが、デシベルの足し算は対数(log)で行うそうです。
(*7)AttackTime
打鍵から発音までの時間のズレ。

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