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【告知】RealSound『ザ・ホエール』評

こんにちは伊藤です。リアルサウンド映画部にて、映画評を書きました。4/7から公開された映画『ザ・ホエール』のレビュー記事です。「メルヴィルの小説『白鯨』と関連づけて語れるのは伊藤ではないか」ということで依頼していただきました。ありがたい限りです。「海外文学といえば伊藤」ということで連絡いただいて、「ああ、私が海外文学を好きなことを覚えていてくれてありがとう」という気持ちです。感謝。お仕事としてレビューさせていただいたのですが、それを抜きにしても、この映画はすごくいいです。切実なメッセージが詰まっていて、胸を打たれました。『白鯨』がモチーフになっていますが、事前に読む必要はないです。『白鯨』はものすごく読みにくい(読み通すのが困難)小説なのですが、その理由がこの映画のなかで説明されていて、その説明がメッチャ的確なので笑ってしまいました。

主人公は272kgの巨漢男性。普段はオンラインで大学講師をしていて、必要なモノは宅配で届けてもらっており、外出はしていません。どうやら精神的な苦悩から過食が止められず、あまりに体重が増えすぎてしまい、歩行器を使わないと移動できない状態の主人公。彼は健康状態も最悪であり、血圧は上が238、下が134。どうして生きてるんだ、みたいな驚愕の数値を叩き出しており、彼のケアをする友人の看護師は、「あと数日のうちに彼は死んでしまう」と確認しています。しかし彼は病院での診察を頑なに拒否しており、このまま死んでしまおうと決めているようでした。

どうしてそんなにやけっぱちなのかはよくわかりませんが、そんな男性の住む家を訪れる、4人の人物との交流によって、主人公の過去や、抱えている想いが見えてくるというあらすじです。この「男性が病院行かない問題」については、私も自分の著書『電車の窓に映った自分が死んだ父に見えた日、スキンケアはじめました。』(平凡社)で論じていますが、何でかこう、男性って治療を嫌がるんですよね。ふしぎ。元が演劇用に作られた脚本で、古ぼけたアパートの一室からまったく出ないまま話が進んでいくのですが、展開がスリリングで、最後まで緊張感が保たれているのもみごと。詳しくはレビュー記事を読んでいただくとして、ぜひ映画を見てみてください。レビューしたからとか関係なく、普通にオススメです。

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